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動植物を食らう

 田舎で学ぶ
野草や昆虫や魚の知識は、図鑑の写真なんか見たって身につくものじゃありません。暗記物は何でもそうですが、デジタル的にスペックを入れようとしても効率が悪すぎる。体験の中で、つまり、この場合は山海に親しむしかない。
田舎の年寄りは、専門家じゃなくても恐ろしく知識を持ってます。俺は父の鉱物集めや石器土器探しにくっついていって、ひとつずつ丁寧に教わりましたが、当時は、おら東京さ行くだ、東京へ出たなら銭っこァ溜めて、上野に城たてるだァのクチだったので、まるっきり興味がないから、かなり聞き流してしまいました。
あなたが今、
ド田舎にいるならラッキー。都会には都会でしか学べないことがあるように、田舎には田舎の財産があり、せっかくの環境や情報や体験を生かさないのは、もったいないことです。

 罰せられる
野性生物を捕るのは、資格がいります。資格がある人でも、霞網みたいに、何が捕まるかわからないものや、住宅地で武器を使ったりすることは禁じられている。俺は昔の田舎の不良学生だっただけなんで、よい子はマネしないでください。

 獣
山羊は親戚が飼っていて、ときどき乳を飲んだ。解体したはずですが、肉は食べたおぼえがありません。
家畜だって、かわいがっていることに変わりはないのですが。
牛や馬を飼ってる家も近所にありました。牛はひたすら臭くて、かなり遠くからでも存在感がある。馬は、遊んでいて偶然入った小屋で、ふと見上げたら、暗闇の中で何も言わずに見下ろしていたので、なんて巨大な生物だろうとびっくりしました。
イノシシやクマも食べているはずなんですが、父が早く猟銃を手放してしまったので、おぼえているのは畑にしかけたトラバサミにかかった小さい動物ばかり。
タヌキは毛深くて硬直しまくった姿が不潔な印象で、血抜きも不十分、でも、うまかったです。
イタチのたぐいは、食べませんでした。剥製にすると言う人が引き取っていった。
中国製のイノシシの干肉っていうのを食べましたが、掃除機に入ってるホコリの固まりみたいでした。一緒に食べた友達は吐き出していた。
寅吉に、鹿を御馳走になりました。猟師の知り合いがいて送られてくるから、しょっちゅう食卓にのぼるんで珍しいものではない、生でも大丈夫、とのことでした。歯ごたえのある赤身で、そんなにうまいってほどでもありませんでした。

 屠殺と解体
アウトドアの本に手順だけはよく書いてありますが、そんなの読んでわかった気になっていても、あんまり意味がない。
あちこちに被差別部落があって、いつも牛の解体をやっていて、それを何十回も見に行ったおかげで、俺はだいぶ度胸をつけたつもりですが、あれを自分でやる自信は全くありません。てめえばっかり綺麗事の世界にいて、ドナドナかわいそうとかヒステリックになって、でも肉をパクパク食って、しかも
肉屋さんをケガレているとかさげすむ奴は、それこそ、さげすまれるべき人。
脂だらけの手でアバラをはがしていく外科手術みたいな光景や、骨を叩き割ったりメキメキ折る音は、スーパーでパックされて売ってる肉を見ている時には全く発想にないんですよね。

 野鳥
キジのたぐいは気配を消してうずくまっているので、草むらを歩いていると、うっかり蹴ってしまったこともあります。食べたのは親戚がつかまえた時で、ジューシーで、うまかった。
スズメはうまいと聞いて、いろんなワナで狙ったけれども、警戒心が強くて、つかまえることができなかったです。かなり長期間やらないとダメらしい。
オナガは食べなかったけれども、あまりにも畑を荒らすので、ここには書けませんが父が恐るべき武術で打ち落とし、見せしめにすれば近寄らないだろうと木に吊しておいたら、仲間が大群で集まってきてギャーギャーと旋回して逆効果でした。
ハトは父が食べてみた限りでは、臭くなくてうまかったそうですが、食べたことない。父が伝書鳩を飼っていたので、食べ物とは思いませんでした。じつは、俺が今すんでる所もハトが多くて、窓を開けておけば、中に入ってきたりします。城の紋章にハトが入っているのはコレ。
ペンギンの肉も市販されてますが、食べたことはありません。
ダチョウは、これも寅吉に御馳走してもらいました。クセがある、と奴は言うのですが、まったく気にならなかったです。いくらか油気があるけれども。

 鶏
8歳くらいの時、ヒヨコ(最初のうちだけは)を飼ってました。多い時で4羽。世話しきれなくて、2世代目からは父に押し付けた。フンは畑の肥料にしてました。
食べたのは毎日産んでくれる卵だけで、肉は食べませんでしたが、解体は経験あります。一羽、自然に死んだので、開いてみると脂身だらけで、どうやらポップコーンばかり食べさせたせいで脂が乗りすぎて死んだのではないかとエサを変えることになり、干した大根葉を刻んで米ヌカをまぜたり、登校前に毎日面倒でした。
昼間は庭に放し、夜は小屋に追い込むんですが、
完全に暗くしないと安眠しないので、父が持ち出してきた古いテントのようなボロ布で小屋をおおいました。その布は、捨ててしまってから、じつは父が終戦時に持ち帰った陸軍のマントだったことが判明した(笑)

 

 

 

 

 川魚
父が漁業組合の株主で、むやみに釣ってくるので、見るのもイヤなくらい食べました。父はリリースということを一度もしたことがない。釣ったものは食う、食えば魚は恨まない、という考えです。それは俺もそう思う。仏教では、漁師が殺生を職業にしてカルマがどうのこうのという話がありますが、消費者が食って、漁師さんが地獄に落ちるなんて、まったく筋が通らない。
ただ、釣りの後はいつも、何時間もかけて一匹ずつワタを抜くので、その生臭いニオイが家に充満するのが気に入らなかったのと、父は地元ではかなり有名な釣り名人で、すでに弟子も多いので、俺はなんとなく釣りには興味ありませんでした。父の釣りについていっても退屈で、ヘビと戦ったり風景をスケッチしたりしていた。
そんなわけで、今のところヤスしか継承していません。投網は習ってる最中です。叉と網の組み合わせは武術に使えると思ったからで、いずれ西之丸で御伝授します。
父の釣りの仕掛けは独自の工夫があるらしいですが、これも機会があればコーナーを作ります。

うまかったのはマスやアユ。それ以下の小さい魚は、たぶん調理法が単純だったせいでしょうが、臭いやら小骨が多いやら。甘露煮だけはまあまあでした。
鯉は洗いがものすごくうまくて、鯉こくはスープはうまいけれど小骨が面倒。鯉のウロコをバリバリとはがすのは、ピチピチはねて抵抗するし、痛そうで(魚は痛覚がないらしいですが)、こっちが鳥肌立ってしまい、俺は苦手です。

 虫
イナゴはちっともうまくなかったけれども、これも遊びのうちだったので、あたりが暗くなるまでビニール袋いっぱいに捕りました。液で汚れるけれども、素手でつかまえてました。バッタ類は寄生虫がいるので、火を通したほうがいいと言われてます。
ハチノコは炒り方がよかったのか、ものすごくうまくて、学校へ行く時も煙幕を持ち歩きました。
トンボはなめると甘いそうですが、食べたことはないです。居合の練習台として毎日100匹くらい虐殺し、落ちたのをニワトリが食べて回った。

 爬虫類
ヘビは肉よりも内臓がうまい、上手にむけば皮にくっついて内臓がはがれる、と母が言ってますが、俺は肉しか食べたことありません。
金属くさい味。俺が見た一番大きなヘビは、本家の建物に住み着いていた青大将で、3メートルありました。これはヌシとか守り神と見なされていたので、食べなかった。
ウシガエルは地元ではみんな普通に食べていましたが、気味悪くて、俺は食べなかったです。
カメは、父が川でつかまえてきたのが実家にたくさんいましたが、近所の子どもさんがほしがるので全部譲ってしまった。とてもうまいそうですが、水アカ臭いし、ペットだったから、食べる気にならなかった。
ワニはメキシコ料理の店で食べましたが、味は脂の抜けた鶏肉、かたさは火を通しきった豚肉という感じでした。一番うまいのはシッポだそうです。

 植物
先輩たちが通学途中に教えてくれたので、片っ端から花の蜜を吸い、実を食べて回りました。桑の実やスグリがうまかったです。
クルミやクリも集めて回りましたが、ギンナンは臭すぎて、父にまかせっきりでした。
フキノトウは黒く枯れた葉をたどって探すのですが、雪があるとわからず、遅いと誰かに先を越される。酒を飲むまではうまいと思いませんでした。茎もよく食べさせられましたが、かなり味付けを工夫しないと、そんなにうまいってものでもない。シラスと煮るとうまいです。
タラノメはうまいですが、初めて食べたのは都内に来てから。
ヨモギは傷薬として使ってました。効いたのかどうか実感ないけれども、おまじない程度。どこにでも生えていた。最近は帰省するたびに天ぷらで食べてます。
そのほか、ツクシ、オオバコ、ミツバ、オオバ、セリ、ミョウガなど、母があちこちから採ってきますが、このへんはちょっと俺も勉強不足です。

 水
夏山では、残雪にコンデンスミルクをかけて食べました。雪は、いわば空気清浄器であり、ものすごく不潔、チェルノブイリの灰は日本にも来たそうです。冷たいものは体力を奪って疲労を増してしまう。しかし山岳部では誰も気にしませんでした。シャリシャリしてて、
こんなうまいものはこの世にないんじゃないかというくらい、うまかったです。
唯一失敗したのは、小川の水を飲んだら、じつは用水路で農薬が入ってて、寝込んだことがありました。

 情報量の限界
このページは、昔はよかったなあ、じゃないんです。田舎でこれだけやってきた俺の世代でも、全然、学びきれていない。
どんなにアウトドア派の人でも、知らないことはあります。体験も、その地域だけに限られる。動植物の名前にまで方言があります。理科すべてに精通するのは、学者さん以外は絶対に無理。
ドクゼリがステーキに添えてあったらクレソンと思っちゃうだろうし、ストリキニーネを出されても、みかんのたくさんある品種のうちのひとつかと思ってしまうかもしれない。
犯人はあなたを殺そうとしてくるが、まさかこんな場所で毒を出されることはないだろうとか、これは知っているから安全だという、
あなたの先入観や、中途半端な知識もまた、あなたを殺そうとするということを認識してください。
だからといって、学ぶことを一切やめちゃうのもいけない。

 

 続く→ 

 

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