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護身としてのグルメ

 まがいもの
現代の日本人は、
ふだん食べてる物の事すら、よく把握していないわけです。
特に魚介類はわからない。有名な魚だってよく知らないのに、その亜種というか近縁種がたくさんある。下手すると、見た目や味が似ているだけで、じつは全く別の種族なんてのが、外国から輸入されている。
イクラに至っては、サラダ油カプセル、つまり人工の模造品もあるわけです。カニ玉は、誰もカニだとは思ってませんけど。
背ビレがどうなっていたらどのマグロとか、姿を見ればまだわかるとしても、サクになって寿司屋のケースに並んでいるともうダメ。白子が何の白子なのかとか、エンガワがヒラメなのかカレイなのか、俺にはわかりません。
サルボウ貝とかランプフィッシュの卵とかはともかく、タラバガニじゃありませんアブラガニですとか、ちゃんと表示されてるのを見たためしがない。カラフトシシャモですとは書いてあるけれど、シシャモではない全然違う魚ですよとはいちいち書いてない。

 知らないことが幸せか
ホンシメジを一生食べずに死んでいく人も多い。ブナシメジかなにかが、ホンシメジと表示されて売られているからです。
カタクリ粉はもう、カタクリではなくて、ジャガイモの澱粉をさす言葉になっちゃってる。
葛餅も小麦餅。
豆腐なんて、スーパーで売ってるようなのは大部分が凝固剤であり、豆乳風味のゼリーにすぎない。
ワサビも、たいていワサビ大根であり、ワサビの名産地で土産として売られているワサビ味の菓子が100%西洋ワサビなのは、ほとんど詐欺に近い。本ワサビ!と言っていても、それは西洋ワサビ(と合成着色料)に、少〜し本ワサビを混ぜてある、という意味であることも多い。本ワサビが入っていたとしても、根以外の部分であることが多い。うちの伯父もかなり本格的に蕎麦を打ちますが、ワサビはいつでもチューブ入りです。
ゼンマイやワラビも、たいてい水煮にして中国あたりから輸入したもので、それが日本の山奥で土産として売られてるのは、その運送料で何かほかの事ができるんじゃないかとか。
グルメになるってことは、金をかけろとか、美食が偉いとか、昔は良かったじゃなくて、ニセモノを知るということです。
ニセモノでもいいんです。安くてうまいものも多い。広く安定供給させようと、学者さんや企業さんが努力してくださってることも評価されなければならない。
輸入でもいい、養殖でもいい、ビニールハウスでもいい、そのかわり、そういうものなんですと表示してもらわないと困るし、それをわかってて食べるのでなければ困る。
企業が儲かればいいのだ、知らないほうが客も幸せだァとかいう無責任な売り方は、非加熱製剤とか耐震偽装とか、
いろんな危険の温床です。

 アニメ感覚
ノリ弁の白身魚のフライは、たぶんオヒョウだろうなあ、マクドのフィレオフィッシュは、たぶんタラだろうなあ、という程度の認識です、俺も。
生身の女性より育成ゲームの登場人物のほうがいいっていう人も多い世の中だから、生々しい魚まる出しより、パン粉まぶしてオシャレに外見をとりつくろって、小骨もなくて、ソースいっぱいかけて食えば、何の魚でも関係ないらしい。
衣がついちゃうともう何だかわからないし、
わからなくても、さしあたり、なんにも不都合ないんですよね。
最近の子どもさんは、シャケという切り身の形をした魚が泳いでいると思っていて、中骨が目だと勘違いしてる、という話がありますが、だけど、それを笑ってる大人も、定食や弁当のシャケがほとんどはサケじゃなくてマスだってことを知らなかったりする。

 

 

 

 

 素材が一流で調理師は三流か
当店は産地直送のすごい食材を使っております、すごいでしょう、だから御値段もムニャムニャ、という店が多いけれども、それは素材と仕入れ担当者が偉いのであり、料理人が偉いわけじゃない。
平凡な素材でも、工夫と技術によって、誰にも真似できないような、すばらしい料理に変えてしまい、しかも、できるだけ安く売って、たくさんの人を幸せにし、それでいて利益もしっかり上げる、それが料理人の腕です。
本当に旬の素材で新鮮なら、軽くあぶって塩をつけただけでもうまい。それは、シロートが同じ材料を買ってきて、自宅でやってもうまいし、そのほうが安い。

金と時間をかけてうまいのは、ただの当たり前だ!

グッチ裕三さんのように、冷蔵庫の余り物みたいな物でも、たいして手間をかけなくても、プロ並の味を出すというのが、本当にすごいことです。
いい素材を使っているかどうか、値段が高いかどうかではなく、料理人がすぐれているかどうかで店を評価しなければならない。
そういう立派な料理人がやむをえず高い料金を設定する時は、いい素材を使っているのは当たり前なのだから、いい素材ですとわざわざ表示する必要もない。表示されないとわからない、雰囲気に流される、という客の低能ぶりにも原因はあります。
中身のない奴に限って、スペックで自分を飾り立てる。こんなこと言いたくないけど、俺が今までに食べた中で最もまずかったラーメンは、天然水使用ということをやたら強調した店でした。
素材を妄信しすぎるのも、危険です。どんなに高級な食材でも、どんなに有名なブランドでも、おかしいと私は感じた、だから使わなかった、私の五感がダメと判断した、という料理人さんこそが、事故を未然に防いでくださる。

 料理人が一流で客は三流か
西洋料理は、物流や冷蔵が未発達だった時代に、古くなっちゃった材料をどうやってごまかすかということを工夫してきたから、ああいうオシャレなことになったわけです。胡椒やソースでごまかしたり、キャベツでくるんで見えなくしたり。
ロシアの軍艦で、ウジ虫がわいた肉を、ボルシチにすれば大丈夫と言ってコックが使おうとするので、そんなの誰が食うもんですかと激怒した水兵たちが反乱を起こしたなんて事件もありました。
これは護身の問題としては、
危険が増したということです。料理が発達して、料理人がすぐれていると、それに比例して、客は自分で確認するということを怠ったり、やろうと思ってもできなかったりする。

 鳥肉
豚のビタミン、羊のカルニチンもいいけれども、武術で好まれるのはたいてい鶏肉、特にササミです。
ここで、
焼鳥は塩かタレかということも言っておきたい。みっともなくて気の毒すぎるので。
ちょっと通を気取ったバカは必ず、なにがなんでも塩がかっこいいと思い込んでいる。でなきゃ、こんなに世間に塩派が多いわけないもの。
焼鳥を塩で食べるというのは、シメたばかりの鳥、しかも肉自体に味がある地鶏の食べ方であり、こだわる人は塩の陸海や産地までこだわる。塩で食べるのがかっこいいのは、いい鳥肉といい塩を食べていることが前提になる。
鳥肉というのは日本料理では魚として扱うほど、鮮度が命であり、淡白な味をしている。
我々のような庶民が普段食べる焼鳥は、どうせブロイラーを狭い小屋で飼って、串を打つ所まで外国でやってから半冷凍で輸入したようなやつなんだから、精製塩で食ったってパッサパサで大味なだけだ。
それに、焼鳥屋さんは工夫と伝統のある独自のタレをわざわざ作ってくれているんだから、それを頂かないなら、ヨソの店へ行けよ。

 

 続く→ 

 

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