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 「四明‘金産’」

原作の第五回と第八十九回に、「四明‘金産’」というのが出てきます。

「明」と聞いて、仏教や武術をやってる方だったら、いろいろ思い浮かぶところはあると思います。
俺も同じこと考えてるんですが、まあ、順に御説明しますから。

第五回は、岩波版には「四明‘金産’」が出てくるが、平凡社版には出てきません。
天界の武神たちが悟空を逮捕しようと取り囲むシーンに、武器の名前が出てくるだけなので、物語の筋には関係ない。
『西遊記』は(俺もそうですが)列記して書くのが好きらしくて、たくさんの捕方がいろんな武器を手にしているという描写のうちのひとつとして出てくる。

岩波版のそのシーン。
『(略) 大捍刀は雲を飛ばし電を発し
楮白槍は霧をわたり雲を穿つ
方天激と虎眼鞭は麻林のごとくに列び
青銅剣と四明‘金産’は密樹のように陣どる
彎弓と硬弩と■
(周に隹)(令に羽)箭および
短棍と蛇矛は必殺の武器だ (略)』

訳者注では
『四明‘金産’---‘金産’という武器は、ここで初出なので図示する』
と、これだけしか書いてなくて、あとは図が載っており、

『(篠田耕一前掲書による)』

と書いてある。

その図っていうのは、前述の篠田耕一氏の『武器と防具 中国編』の、‘金産’のページの、図1が、そのまま転載されたもの。

つまり岩波版『西遊記』では、「四明‘金産’」というのがどんな種類の‘金産’なのかを、なにひとつ説明せずに、なぜか3メートルの禅杖の図を提示している。

ということは、3メートルの禅杖と、「四明‘金産’」は、同じものなんでしょうか?

岩波版『西遊記』の訳者は、‘金産’について一般的に述べるにとどめ、ここでは「四明‘金産’」がどういう‘金産’なのかを説明をする気はなかった、という印象を受けますが。

 

 「月牙‘金産’」の、長いやつが、「四明‘金産’」?

第八十九回でも、やはり敵が使う武器として、「四明‘金産’」が出てくる。
悟空たちが敵のアジトに出向いていって、戦闘が始まります。

平凡社版では、こうなっている。
『 驚いたかの魔王、ぱっと身を引くと奥に駆け込み、四明‘金産’---柄が長く、いしづきが鋭い---を手に取って中庭におどり出し、三人の鉾先をささえつつ、声あらくどなった。』

注は、ありません。

‘金産’で、柄が長くて、石突が鋭いもの?

その「四明‘金産’」っていうのは、スコップ刃か?、三日月刃か?
挿絵では、三日月刃だけなんです。

‘金産’で、柄が長くて、石突が鋭くて、三日月刃?

ってことは、このコンテンツで今までに取り上げた武器の中では、3メートルの「月牙‘金産’」が、最も「四明‘金産’」に近いということになりますね。

 

 やっぱり、月牙‘金産’の、長いやつのこと?

第八十九回の、この場面、岩波版のほうではこうなっている。
『 こうして三兄弟、いっせいに打ちかかったものですから、あわてふためいたのは親分です。ひらりと身をかわして奥へ駆けこむや、四明‘金産’を取ってきました。柄が長く、いしづきも鋭いやつです。そいつを手に中庭におどりでると、三人の武器を受けとめながら、大声をはりあげました。』

そして「四明‘金産’」に注がついてます。
『四明‘金産’---第六十三回に見える月牙‘金産’(第六十三回注3参照)とほぼ同じだと思われるが、次頁の挿絵を見ると「外月牙」の‘金産’をもっているようだ。』

 

その挿絵がどうなっているかを次回、見ていただきます。

 続く→ 

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