「角界用語」
相撲の隠語には、古いヤクザ用語がよく原形をとどめて残っているものがある。
相撲は興行であり、土地土地の支援者の出資や協力によって成り立つことであるから、暴力団との結びつきはどうしてもある。これは歌手でも祭でもみんなそうなのである。
現役時代の千代の富士さんが暴力団組長と並んで座敷で飲んでいる写真が、いまだに写真週刊誌に取り上げられたりするが、制度を改善せずに力士を責めるのは気の毒であり、贔屓筋の飲み会に呼ばれれば力士には選択の余地もあるまい。

「カナ表記」
いろいろな歴史やこだわりがあって、わざと漢字で書かない場合がある。
竹刀は、もともとが当字だから、ひらがなで書く人も多い。しなへだから、読みは「しなえ」のはず。
鍔は、骨董界では鐔と書くほうが一般的で、現代剣道ではひらがなが多い。
小がたな、ちいさ刀は、小刀と書いてしまうと脇差とまぎわらしいため。
篭手は、俺は道具を篭手、手への攻撃を小手と書き分けているが、前者をひらがな、後者をカタカナで書く人もいる。現代剣道ではどちらも小手と書く人が多い。
薙刀は、古くは長刀と書いたが、元冦や南北朝で長い太刀が流行したため、薙刀と書いて区別するようになった。現代武道としてはひらがな。古い流派は今でも長刀と書く。長刀は、文献で槍と併記されていれば薙刀っぽいが、太刀と併記されていると長巻なのか野太刀なのか判断に苦しむことがある。
空手は、すでに国際的な単語であるとの理由から、極真会館系などではカタカナで書く。昨今のフルコンではローマ字表記も多い。
同じことを何度も同じように書くのは、芸がなくてみっともないという意識があり、たとえば写経の時、般若心経に頻発する「空」の字を全部、別のくずし方で書いて、ひとつとして同じものがないといって自慢するようなことがある。
江戸時代の文献でも、すぐ前の文ではカナで書いたものを、続けて、漢字で書いたりしていることがよくあり、これは、たまたま行の最後に来て紙が足りず、漢字で書いて改行したとか、あまり深い意味でない場合もよくある。

「カ〜マ〜キ〜リ〜」
昭和40年代くらいに生まれた人が蟷螂拳と聞くと必ずやる(やらないか…)クネクネした動作。格闘技に造詣が深い関根勤さんのラビット時代のギャグ。
『マカロニほうれん荘』という漫画のネタだったという説もある。
蟷螂拳は北派の技法を集大成した、ごく合理的で実戦的な門派で、決してウサん臭い技法ではないが、昆虫の動きを取り入れたということが珍しがられることがある。

「かます・くらわす」
角界では、頼みごとを断ることを「顎をかます」、殴ることを「くらわす」と言う。
ヤクザ用語では、こっぱみじんに壊滅させることを「木っ端を喰らわす」と言っている。
総じて、「かます」は策略的ないし暫定的、「くらわす」は攻撃的ないし決定的という印象を受ける。

「ガ・ミ・ラ・ス」
手裏剣の4つの極意。それぞれの頭文字から。

「カラテ!」「ニンジャ!」「アチョー!」
冗談の一種。日本の武術をやる外人の初心者さんに、ファイティングポーズをとって、こう言う。
世界中どこでも(ただし日本をのぞく)、ホールドアップをくらった場合、神秘的な構えをしてカラテと叫べば、カラテがどんなものかは知らなくても強盗は逃げ出すという、70年代からある笑い話が下敷き。
最近は外人さんもよく勉強しておられるので、アチョーは空手じゃなくて截拳道ですヨなどとツッコミが入る。

「空手チョップ」
空手以外のジャンルの御高齢の先生が、空手のことをこう呼んでいることがある。チョップは必要ありませんと申し上げても聞く耳を持たない。うちの親もよく言う。
空手をあまり御存知なくて、力道山さんか小松政夫さんのイメージが刷り込まれたか、空手を御存知だからこそ、興行化キック化した空手を呼び分けているのか。

 

 

「逆説的に当たり前」
武道家は禅を知っているから、当たり前と言うことが多く、なんでもかんでも当たり前で片付け、それで?だから?それがどうした?などと言う。
おじぎは宗教行為であるから柔道でおじぎをしなければならないのは信教の自由を侵害している、と裁判をおこして敗訴になった外人さんがいた。礼とは何なのかがわかっていれば、このような行動に出なかったわけだし、裁判官の判断もなにもかも、まるっきり当たり前だと言える。
「ベンチがアホやから」と言って引退した野球選手がいた。勝敗や怪我なら、運や偶然もあるかもしれないが、礼儀のしつけは指導者がどうにでもできたことであり、こんな基本的なことすらできなかったのは指導者として無能であるから、教え子にアホと言われた指導者がアホなのは当たり前である、などと言う。

「日下山」
赤字。日下山矢三郎という力士が、背が高くて布団から足が出てしまったことから。

「警視庁に1本(とられる)」
(武術の用事で)駐車違反などしていてキップを切られること。警官には強い選手が多いということが背景になっている。
違法駐車はあくまでも違法だから言い訳は通用しないが、警察は武道には好意的なことが多く、世間で皆やっている違反をわざわざ武道場付近だけ厳しく取り締まるということは、いろいろな意味を持つ。たとえば、むかいが高額納税者の豪邸とか、署長がライバル道場と昵懇とか。
※後日談。民間委託が始まって以降は、「犬にたかられる」という言い方をよく聞く。

「KY語」
KYは空気が読めないの略だが、こうしたアルファベットによる略し方がKY語と総称されている。
PK(パンツ食い込んでる)、HD(人としてどうよ)など、バカみたいなのが山ほどあって、とてもオジサンにはついていけん。
しかし必ずしも新しいものではなく、旧海軍には、S(芸者)、BU(ブス)、BA(ババア)、SA(コンドーム)、R(淋病)、KG(毛ジラミ)などなど、アルファベットによる隠語は大量にあった。

「御一緒させていただく」
送っていくこと。
ジジイが歩くと危なっかしいというニュアンスになるのを避けるため、私のクルマに乗っていただければ光栄などと言う。
「送る」という言葉は、攻撃や審査の機会を逃がすことや、ある種の技術のまずさを言うため、忌み嫌うことがある。

「ゴッドハンド」
ハンドボール。
優秀な武術選手が武術をやめた後に始めることが多いとされ、これを格闘技に含める見方がある。
特にキーパーの人は、下手な空手選手より優れていると言われ、全身アザだらけ。

「ゴッドハンド」
手刀でビール瓶を割るのはぶつけどころと打ち降ろし方にコツがあるが、大山総裁の場合、固定せず置いただけのビール瓶の首を水平に打って割ったという。こうした逸話から、ゴッドハンドと言えば、牛殺しと並んで大山総裁の代名詞のひとつだった。
80年代までは、部室の窓のサッシの桟でコーラ瓶の頭をこじるのが一般的だったが、90年代ごろから、ビール瓶2本をたばねるように持ち、王冠の頭に王冠の端をひっかけて、膝で蹴って開ける方法が普及した。
ほかに、王冠を手で包み、つるんとなでるように外す技があり、教わってもなかなか習得できないので、これがゴッドハンドと呼ばれている。戦前からあった開け方だという。

 

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