等級 国民を表彰するにしても、騎士や英雄の称号から褒章や各省庁の賞まであり、米軍のように戦功章だけでも何種類もあったりします。 つまり、種類自体に格式があるから、すでに種類だけでも等級みたいなものなんですが、ひとつの種類の中にもそれぞれ等級があることが多いです。 だから、大変な階層になる。オランダは８等級、かつての日本は８等級ですが実質的には１８等級くらい、ロシアは帝政時代には２０等級くらいありました。 等級がないのは単一勲章といいますが、それはたいてい分野が限られている勲章だけです。 戦功章は普通、１級２級とか金章銀章の２種類くらいだけれども、戦争ばかりやっていると士気も落ちるし叙勲者も増えて、等級が足りなくなってくる。 ドイツの鉄十字章といっても、柏葉つき、剣つき、ダイヤモンドつき、その２つ以上つき、全部盛りと、ラーメンのトッピングみたいになっていく。 功績の程度ではなく、身分によって、もらえる等級が決まることが多いです。 立川談志さんのマクラに、「酒は人間をダメにするもんではないのです、人間はダメなもんだというのを確認させるために酒が存在しとるんです」というのがある。 勲章は人間に等級をつけるだけではなく、すでに人間には等級がついているということを思い知らされるのも勲章なんです。 これもやっぱり、騎士団の階級制度から来ているか、レジオンドヌール勲章あたりを真似して制定している。 騎士団の制度は、キリスト教や西洋魔術のいろんな理屈に由来しているので、表むきなものとは別に、いろいろ内部だけの面倒くさい話もある。 騎士といっても、上は帝国やってる奴から、ヒラの王様、公国の元首、伯爵領とか都市程度の小国やってる太守、先祖代々貴族やってる奴、貴族は貴族だが下っぱすぎて庶民より貧乏してる奴、貴族と結婚したので貴族を名乗ってる平民（これはつらい、妻子は本物の貴族で、自分だけ平民の血だから）、貴族のうちに入らない準男爵、一代限りの騎士、騎士団にも入れてもらえない最下級騎士、まだ騎士になってない見習い小姓や従士、ただの大地主が郷士や紳士ということで騎士のくくりにまぎれて総称されてるもの、俺みたいに大使館経由のコネを駆使して肩書をでっちあげた仏教徒まで、めちゃくちゃピンキリです。 王は本来、騎士ではないのですが（指揮官ですらない。もっとずーっと上。将軍を雇う人）、しかし十字軍以降は、戦う男はかっこいいぜと思って、王も騎士を名乗るというヘンテコなことになりました。 時代劇の御奉行様はみずから潜入操作して、宇宙戦艦の艦長代理さんが編隊長や砲手をやりたがり、師団長クラスがモビルスーツに乗っちゃう、そういうのと同じです。 貴族も、本来は騎士や武士より上なんですが、中世以降、軍事政権になると、騎士や武士が貴族化していきました。 騎士と貴族をごっちゃにしたがるのはフランス人。 ドイツ系（現在のオランダやベルギーも含む）の場合、「貴族ではない騎士」というのがかなりある。 和歌山では、県を有名にしたという功績で、「県勲功爵」（わかやまでナイト）というのが県から猫に贈られたりしてます。		騎士章　ナイト シュヴァリエ、カヴァレイロ、メンバー、ナイトバチェラーなどともいう。最下級。雑兵や庶民がもらう。小綬。 　士官章　オフィシャル オフィシエ、オフィサー、ルテナン、将校章ともいう。尉官下士官や、大学教授くらい。小綬。 これか、このひとつふたつ上くらいを傭兵隊長コンパニオンなどと言う場合もよくある。 　隊長章　コマンダー コマンドール、コマンダリーなどともいう。高級な勲章だと、最下級でもこのへんだったりする。分団長、佐官、政治家、公共団体会長くらい。中綬。 　将官章　グランオフィシャル グラントフィシェ、グランドオフィサー、グランドマスター、ナイトコマンダーなどともいう。騎士団長、将官、大臣くらい。中綬の上級くらい。正章のメダルを右胸、副章の小綬を左胸につけたりする。 騎士というのが戦闘員ではなくなって、ただの身分に堕落してしまった現代では、このへんから上の人が、サーの称号です。英国のバス勲章だと３等級あるうちの１〜２等をもらう人がナイト扱い。 諸侯というくくり方に入れてもらえるのは、このへん以上。 　大十字章　グランクロス グランクロワ、グランドクロスなどともいう。 上級勲爵士ナイトグランドクロスの徽章。 正統な騎士団だと、成金がナイト気取りなんてのはあんまり相手にしないので、このへん以上をまともな家柄、城館かまえて旗本領を持ってるような騎士として扱います。 首相か国民的英雄くらい。大綬。 　頸飾　カラー グランメートル。これは最高勲章のそのまた最上級だけにしかないことが多い。騎士というより、騎士を雇用してる君主がつける勲章。勲章を出すくらいの人がつける勲章。王族か、ごく優秀な元帥や提督、死んだ首相くらいにしか発行しない。 ブルーガーター騎士団なんかは、全員がめちゃくちゃ偉い人だけなので、これしかないから、この地位をナイトコンパニオンといってます。 レジオンドヌール勲章の場合、このクラスはフランス大統領のみ。 　 →もどる