国家記念章 北朝鮮は、国旗や肖像のバッジをつけていたりしますが、もっと勲章っぽい形のやつです。 軍事とは直接関係ないけれども、高級将校なら、たいてい何かつけている。 時代がくだると、自分の手柄ではないものをチャラチャラ並べて数を多く見せるのは退役軍人の風習とされ、あんまりつけなくなっていったそうです。 文化って言うと民主的に聞こえますけど、文化の日は明治天皇誕生日ですからね。のちの昭和天皇も、わざとこの日を選んで皇太子に立たれている。 勲章のたぐいは、国家が出すものである以上、国家ということをぬきに語れないわけで、これが、嫌う人はトコトン嫌う部分です。 自衛隊では現在、茶色っぽい線章が出ます。 この手のものは、かなり種類が多いです。 伊勢神宮に参拝する時にそれほど正装でない場合の（軍国主義時代の御伊勢様は、スーツでさえ、普段の仕事の格好のままだとか言われた。天皇が頭を下げるほどの尊い存在だから、我々が天皇に会ってもらう時の服装よりももう一段盛装するのが筋道）、胸に付ける宗教的な、一種の喪章のようなリボンなんてのもあった。 とりあえず国家行事のたぐいだけ書きます。 　大日本帝国憲法発布記念章 明治憲法発布式典に参列したVIPに配ったもの。 章は円形メダル、表は菊紋と玉座と菊花頸飾、裏は「明治二十二年二月十一日大日本帝国憲法発布記念章」。 身分によって金章と銀章があった。こういうところがまさに旧憲法なわけで。綬は桐花章と同じ。 まだメダル類の数が少なくて軍服がさみしいから、これだけは、軍人さんもよくつけていたといいます。 この時代は、憲法に限らず、だいたい何でもドイツ（プロイセン）が手本です。英仏の影響や指導も多かったんですけど、なんとなくドイツ人のやることは、器用で勤勉で努力家で我慢強い日本人の気質に合ってたみたいで。 　大婚二十五年祝典之章 明治天皇の御成婚２５周年式典に参列したVIPに配ったもの。 章は円形メダル、菊紋と鶴松藤、裏に「大婚二十五年祝典之章大日本帝国明治二十七年三月」。 綬は紅地中央に黄色線。 この手のお祝いは、記念硬貨や記念切手を出したりするのは珍しくないけれども、メダルを配るっていうのは、やっぱり帝国主義的な時代だったから。 明治天皇の御正室は、何度も改名なさってますが一応、美子様。昭憲皇后ではなく、かならず昭憲皇太后とお呼びするならわしになっている。和歌の名人。アゴがとんがって鼻が高いアイドル顔、近代的な美人であらせられ、服なども洋式を好まれたという。		大日本帝国皇太子渡韓記念章 大正天皇がまだ即位なさる前に、韓国へお出かけになったことがあって、その関係者に配ったもの。 章は円形メダル、菊紋になにやら植物が斜交、「大日本帝国皇太子渡韓記念章明治四十年十月」。 綬は黄色地中央に太い紺、薄い青フチ。 大正天皇は人生いろいろ苦労なさってる方だから、他人の気持ちに敏感で情が深い方で、愛妻家でもあらせられた。韓国に対しても好意的で、むこうの陛下とも仲良しだったみたいですけど、時代の流れはもう韓国侵略という方向で確定しちゃっていた。 　韓国併合記念章 韓国と日本が合併したというより、韓国がまるごと日本の所有物になったんですが、そのお祝いに、VIPに配ったもの。 章は円形の黄銅メダル、菊紋に桐と李、裏に「明治四十三年八月二十九日韓国併合記念章」。 綬は紅に黄色の太線と細い白の縁。 恐ろしいことに、この記念章を廃止する法律は特にないらしい。もう韓国は日本から独立してるんだから、記念章も失効しているだろう、というだけでしかない。こういうことをキチンとしねえってことが、金鵄勲章をますます復活できなくさせたと思いますね。 　大礼記念章大正四年十一月 大正天皇の御即位の式典にかかわった人に配ったもの。 章は円形の銀メダル、菊紋に桜と橘と万歳旗斜交、裏に「大礼記念章大正四年十一月」。 綬は紅地に太い白の双線、縁も白。 明治天皇は御側室の御子であらせられたんだけれども、明治天皇も御正室との間に御子がなく、御側室の御子が継いだ。大正天皇です。 明治天皇の奥様は６人。御子様１５人は、みんな早死にだったり女性だったりで、大正天皇はお体が弱かったんだけれども、ほかに代われる人もいないから即位なさって、御不自由な体にムチうって御仕事なさった、というか即位したせいでますます具合を悪くされたという。明治天皇は強い男の見本みたいな方だったし、なにかと御苦労がおありだったみたいです。 しかし、男性的だった明治時代の反動というのか、今度は女性的な、華麗で温和で寂しそうな情緒や余韻、「大正ロマン」という文化が生まれた。うちの父も頑固なようでいて、あきらかに大正生まれの雰囲気があり、俺もこの時代くらいの加減を理想にすえてます。ハメットではなくマーロウ、赤レンジャーではなく青レンジャーくらいの方向。 　 →つづき