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コレクターと武人の分かれ道 1

  

誤解があるといけないので補足。
かなり重要なことなので、西之丸から少し移転併合、さらに加筆。

 

 入門本

これから新しい習い事を始める人は、まず、初心者むけの教本を買ってください。当たり前ですが。

なるべく薄いやつ、文字より画像が多いやつ、新しいやつを選ぶ。

明治時代に文語体で書かれた古本ではなくて、現代の人が書いた、本屋で売ってるやつをです。

なぜなら、挫折せずに読み切らなければならないし、試合ルールなんかはどんどん新しく変わってるし、さしあたりすぐに使う内容や、最も重要なことだけにしぼってあるほうがいいから。

よけいな話は、ないほうがいい。
よけいな話といっても、決して、価値がない情報ではないんですけど、屋台骨が固まるまでは、こまかいことはダメなんです。
目移りして、散漫になる。

本当に重要なことは、冗長でないほうがダイレクトに伝わる。
どうやら、記憶のされ方が違うらしいんです。深い所に収納される感じがする。
たくさん言われると、どれも聞いたそばから忘れる。

俺だってホームぺージだからこういう長ったらしい文章を書いているのであって、実際に現場で実技ならば、大きく!とか、肘を開かない!とか、本当にポイントになる所しか言えない
(たったそれだけのことでも、できないものです。その時はできても、ちょっと目を離すと元に戻ってる。2週間サボった子は、半年前の状態になっていたりして、本人はケロッとしてるが、こっちはもう泣きそう)。

 

 秘伝書から始めない

間違っても、『陸軍省機密資料復刻会、増補改訂大日本空手道・全流派〜門外不出究極必殺奥義大全〜、帝国陸軍中野学校・格闘術研究所編、15巻セット限定版、定価30万円分冊不可』なんてのを、最初から買っちゃダメです。
っていうか、そんなの実在するなら俺が買うので、よい子のみなさんは店に残しておいてくださいねっ(笑)
最近の子どもさんは御年玉が万札だったり、株をやっていたりするんで、油断がならねえ。

そういうのは本棚の飾りにしかなりません。

初心者が、そんなのを本気でしっかり読むとすれば、なおさら悪い。
いきなりそういうの読むと、たぶんあなたは歴史家か文学者になってしまう。

最初から学者になりたいんだったらいいが、あなたは100年に1人という名選手になるかもしれなかったものが、なりそこねたので、しかたなく学者にしかなれなかったというのでは困ります。
ましてや、うちのコンテンツが原因でそうなるのは、もっと困る。

実技やっていくにしても、敵にさからわないとか、勝とう勝とうと思わないとか、誰も斬らない禅の剣とか、漠然とした小難しい理屈を最初から吹き込まれると、意味を取り違えて邪道に行っちゃったり、勝てなくてつまらないから半年でやめちゃうことになる。

 

 初心者むけは、あなどれない

初心者が伸びるようにと工夫して書いてくださってる本を、利用しない手はない。
自分は初心者なんだから。

最初は、『よくわかる分解写真!オッス!元気ッ子わんぱく空手850円税別』とかなんとか、そういう本を読んでください。
俺も最初の15年はそんなのしか読まなかった。

初心者用の入門本が、内容的に劣っているということはありません。逆です! ぜーんぜん逆。

「これ以上は省略できないくらい簡潔に省略して、それでも最後に残った部分」って、これほど重要な部分はない。

っていうか、それを知りたくて右往左往してるベテランがどんだけ多いことか。
なーんのこたあない、初心者むけの本に、ぜーんぶ箇条書きになっていたというオチなんです。
本当の奥義とか極意っていうのは、まさに、それです。その部分をコツコツやりゃあ、絶対に達人になれる。例外はない。

それができてないうちに、先へ進んでしまうから、あとでスランプになるわけで。
俺は小学6年の時、吹奏楽で、このことに気付いて、大ショックでした。

どんなに上達してからも、初心者向けの本は読んでみたほうがいいし、つねに初心者指導にたずさわっていたほうが得、自分にとって得。
これってこういう意味だったのかね〜、今までやってて知らなかったわい、こんなことも知らずによく今までまぬがれてたもんだ、知ろうとも思わなかったわい、この比喩はわかりやすいなあ、後輩たちに今度こう言ってやろう、というような発見がポロポロ見つかります。

 

 1冊だけ

まずは、1冊だけ買うことです。
これ重要です。

新しいこと始める時は、はりきってるから、つい、あれもこれも、本屋で見かけたのをたくさん買い込んでしまうけれど、まあよしたほうがいい。

1冊だけでいいから、そのかわり、まるごと暗記するくらいに読み込む

読みもしねえくせに、参考書をたくさん買ってきて満足してる奴は、そりゃあ受験に失敗するだろうよ。
それよりは、学校の教科書だけでいいから、あの話はあのページの右上にあったとか、そのくらいまで把握するくらい読んだほうがいい。
使いもしない参考書を並べて満足してるっていうのは、ものごとが解決しないまま、気持ちだけは済んでしまうという、一番まずい状態です。
こういうことを武術書でやられちゃうと、あなたが達人になって育てるはずだった「将来あなたの御弟子さんになるはずだった人」の人生まで損をする。

どうしてもたくさん買いたければ、雑誌を毎月買うっていうほうが、まだいいです。
定期的に刺激が入るので、その習い事をやめずに長く続けるのに役立つ。

 

 読んだだけでは実感がわかない

「知っている」と「わかっている」は、全然ちがいます。
重要なことこそ、簡単に一言ですんでしまうから、意味を理解するのに時間がかかる。

初心忘るべからず、勝利を信じる、自分に勝つ、服装の乱れは心の乱れ、教えることは教えられること…てなこと言われても、単なる道徳上の綺麗事にしか思えない。誰でもみんなそう。

その言い回しだけは知っているが、それがどれだけ重要なことか、認識していない。

こんなに深い意味の言葉だったのか〜、今までは全然わかってなかった〜!って、去年も言ったし、今年も言ったし、たぶん来年も言うんです。

そういう教えをしょっちゅう意識していないと、その実例が目の前にあっても、取り逃がすことがある。

高い段階へ行くと、また、感動するんです。
ただの作法かと思っていたものが、危険防止でもあったとか、単なる縁起かつぎかと思っていたものが、科学的にも理屈にかなっていたとか。

さらに、「わかっている」と「できる」は、もっと違うことです。
受身や切り返しを完璧にできる人なんて、道場に1人もいなかったりしませんか?
基本は、中級になっても上級になっても、イヤというほどついて回る。その段階では、できたということにしてもらえるかもしれないが、ひとつ上の段階へいくと、全然、まるっきり、これっぽっちもできていなかったということを知る。

 

 毎日読む

入門本は、ボロボロにするつもりで読み倒さなければならない。
「読破」という言葉があるけれども、表紙なんか取れるくらいでいい。

よく、英和辞典をケース(紙箱)に入れたままのバカがいるけど、ケースなんか最初に破り捨てなさい。
というか、布装訂でケースに入ってるような本は、初心者のうちはよしたほうがいい。

すぐ手の届くところに置いて、毎日開く。

高尚なものとして祭り上げると、遠くなる。
自分でわざわざ、宝物を遠く引き離してどうすんだか。

これは神聖な本だから、革のブックカバーつけて、鍵のかかる引き出しに安置しておいて、先人に敬意を払って風呂で身を清めてパンツ替えてから、和室で正座して読む…なーんてカッコツケをやっていると、挫折します。
少なくとも俺が見かけたそういう奴は、一人の例外もなく、消えていった。

寝転がって読もうが、カップラーメン食いながら読もうが、何でもいいから、とにかく読むことです。
読むためのものなんだから。

 

 何度も読む

一字一句を本格的に読んだり、ざっと全体を読んだり、基本編だけを読んだり、とにかく繰り返し読むことです。

見出しだけ読むなんてのも、とてもいいです。

3つの鉄則とか、5つの基本技とか、列記されてるところは、ソラで全部言えるようになるまで読む。

初めての試合の前夜、初めて優勝した時、原因もわからずスランプの時、おぼえがないのに反則を宣告された時、稽古をサボりたい時など、あなたはその時その時で別人っていうくらいに視野が違ってますから、そのつど読まないとダメです。
その時にしか読み取れない部分っていうのがある。

これは小説とか映画とか音楽とかもそうです。初恋してる時、初めて彼女ができた時、初めて人を振った時、悲しい別れ方をした時、別の彼女ができた時、一人暮らしを始めた時、社会人になった時、同じ作品でも受け取り方が全然違う。自分も変わっているんで。

読む気分じゃない時もある。試合に惨敗して、考えるのもイヤな時とか(笑)
それ、それです、そういう時にしか得られないものがあるんだから、そこで読まなくてどうすんのよ。

 

 カスタマイズする

アンダーラインを引きまくり、加筆しまくる。

書くという行為は、暗記という意味でも、脳科学とか心理学の理由からも、オカルト的にも、ものすごく重要です。

先生や先輩に言われたことは、すべて書き留める。
ノートというか稽古日記ももちろんだけれども、教本にもやっちゃったほうがいい。

いわば、自分で秘伝書を作るわけです。ただ買って来た本とは、その価値が雲泥の差。
この手間を、たくさんの本を買ってくることによってすませようというのは、ラクチンなようでいて、じつは全く逆効果。

たとえば試合に必要なページのカドは全部折って、試合前にはそこだけ読み返すとか。

稽古してて注意された部分は線を引いて、同じ注意を受けたら二重線にして、それでもしかられたらピンクのマーカーで文章をなぞって、それでも改善しなかったら黄色のマーカーで囲んじまって、もう稽古の前に必ずその部分を声に出して読み上げてから道場に入るとか、稽古着の裏にでもマジックで「猫背!?」とか「間合まで我慢!」とか書いちゃったらどう?

そこがつまり、自分の弱点ということだから。

昔、学研にニューコースっていう参考書があって(今もあるのかもしれないけど)、最初っから色分けがされていたんですが、そういうことを、「自分専用」でやる。

あと、アンダーラインは、フリーハンドです。もっとほかに神経を使うことはあるはず。
定規が必要になるほど、何行も続く長い所をアンダーラインしなければならないとすれば、アンダーラインする箇所を間違えてる。もっと短くスパッと言ってる所があるはずです。
全部に線を引いちゃったら、引かなくても同じだ。
全部が重要な文なら、小見出しか、章の名前を囲めばすむ。

 

 →つづき 

 

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