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秘伝書が秘伝書である理由

 

 なぜ秘密文書なのか

伝書は、ある程度やったことがある人が見れば、他流でも察しはついてしまいます。同じ目的のために、同じ身体構造した生物が考えることだから、まして同根から分派したり、複数極めた人が統合したものだから、上級になるほど内容は似ていて、時代がくだるほど流派の違いが減り、現代武道に近くなる。
中国武術のほうに、技は万人の物という言葉があります。日本の武術でも、負かした相手から贈られた他流の技が参考として伝わっていることもある。旧日本軍の『海戦要務令』という軍学書は、秘密にしすぎて味方にも普及しませんでした。

だから、技がバレると返し技を工夫されるというような、ケチな理由はあまり問題にならない。極めた人は、技や道具の奇抜さに頼って勝つのではなく、強いから勝つだけのことです。「秘するは伝えんが為なり」といって、伝えるべき人に正しく伝え、まがいものが生まれないように隠すわけです。

たとえば、段階にふさわしいかどうか。ことはスポーツではなく殺傷技術であり、キチガ○に刃物は持たせられないから、技と徳が同時に身についていくシステムになってるわけです。

同じことだけど、方向を統一するという理由もあります。
登る山は同じでも、むこう側から登る人たちもいる。すでに登った人が地図を作ってくれているんだけど、手に入れた地図が、はたして自分が歩いている道の地図かどうかは、初心者のうちはわからないから、ごっちゃにすると遭難する。

伝えるべき人というのは、金を払った人だったりもする。泰平の時代だと奥義は御飯のタネ(浪人の資本)だから、簡単に教えると指導者が食えなくなる。

それから、伝統の純粋さを守ることです。

 

 伝統の純粋さを守る

たかだか人が一生で考えるようなことは、とっくに考えつくされていて、それでも変更されずに、そのやり方が選ばれてきたからには、一見非合理的に思えることにも必ず理由があるはずです。
たいていの人は天才ではないから、まずは言われたとおりにやらないと上達しない。そこそこ上達してから、流祖が小柄な人だから自分にはほかのやり方のほうがやりやすいとか、そういう個人的なカスタマイズの微調整はある。守破離の破です。

 

それにしても伝統というのは厳格なものです。ここは区別しなければいけない。継承者は単なる入れ物であり、なんの追加も削除も、ましてや変更もなく、次の世代に伝えていくことが伝統です。伝統を無視したら古流の存在意義が失われる。

しかし、今これだけいろんな流派があるのは、中興の祖みたいな人、あえていじった人がいたおかげだったりする。時代に合わせることができなければ、形骸化して絶滅します。
流祖のやり方の真意が本当にわかってから、それでも自分のやり方のほうがベターだと確信できた人だけが、変更したものを普及させていいわけで、しかも、できれば他の団体を作って、今までの伝統はそれはそれで誰かが伝えていったほうがいい。
この団体ではこういうことになっているというひとつひとつに、流祖のものの考え方や時代背景さえも含まれているからです。たとえダメなやり方だとしても、当時はそうだったという、それも無形文化です。

 

 それぞれの背景が違う

一般に古い技法ほど姿勢は低いです。現代から見れば動きが鈍く見える。しかし、それは重い甲冑を装着して、日常と違う体の運用で、野外で使う技だったりします。
フルコン空手はあまり半身に構えません。攻撃をさばくのに不利だからです。しかし、伝統空手は金的ナシのルールがないから、正面を向いたら失神させられてしまう。
軍学も、防衛か侵略か、傭兵か子飼か、兵士の教育水準、政体の違いなどで、まったく逆の原則になります。

どっちが偉いかではなく、土俵の違いです。これを区別できない人が、流派に優劣をつけたり、いろんなジャンルのやり方を寄せ集めて、それも技法の枝葉ばかりをごちゃまぜにするのだったら、せっかくの先人の智恵も弊害にしかならない。

このリストをネットに乗せて一番心配なのもそこです。
いい歳してゲームやアニメの世界にひたり、アイテムをゲットすれば練習なしで自分が高級になれると勘違いして、本や武器ばかり集めてコンプレックスをごまかしてる人が、ネット上では非常に多いので。

御自分では武道をやらずに、民俗学、文献学、郷土史、思想史などの立場で伝書を研究されている先生方もいらっしゃるけれど、それとこれとは話が違う。
武道の掲示板っていうと、情報量だけで強くなった気になって、その道の先輩方に対して横柄な態度になっているような人が必ずいますね。
コレクションのためのコレクションではいけない。情報は、材料です。それを使って、なにをやっていくのか。自分の人生の、なにを完成させていくか。

 

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