組織

 個数

軍隊は何個と数えます。

1個なになにが何個なになにで組織されているかは、いろいろです。
ナポレオンも時期によってそのつど使いやすく編制しなおしており、2個セットとか27個セットなんてのもありました。

多勢で展開するほど広い平地なのか、国境の接し方など、地形の問題、あるいは戦略戦術の方針、組織の伝統、経済力や人口、兵器のハイテク化、指揮官のカリスマ性、人種や宗教、徴兵か志願か国民軍か傭兵かという愛国心や士気や団結、将兵の練度つまり経験、命令の伝達速度などなど、国と時代ごとに異なります。

小分けして各隊長にまかせたほうがいい場合と、大所帯でまとめておいて中央集権にしたほうがいい場合があります。

しかし、だいたい3個セットです。
戦時には、もう1個、付け足して、4個にしていることが多い。

総数はどうでも、その地域では敵の3倍の力をぶつけるというのが、勝つための一応の基準になっている。
連携して戦うので、攻撃だけで最低2個いる。もう1個は予備で、ここぞという急所に投入したり、やられた連中と交代したり。つねに1個くらいは故障して使えない状況を想定しておく。
後述しますが、2個だけでは、戦闘機能が皆無とみなされる。

交代が難しい遠征だったら4個あればなおいい(1個は失う想定)。
撤退するにしても、温存しておいた無傷のやつ1個くらいが牽制しながら下がらないと、好き勝手にやられ放題で全滅します。

航空機も3〜4機で一組にします。

船や飛行機は、つねに1個を稼動させておくためだけに3個いる。
燃料弾薬を補給しなきゃならないし、やられたら修理もしなきゃならないし、出番がなくても定期的に大規模な補修点検整備もしなきゃならないし、乗員に休暇も必要だし、新型や改修改造に慣れたり、新人を育てたりする期間も必要だし、訓練中にも1つくらい失うことはある。

巨大ロボット1つばかり作って地球の平和を守ってるなんてのは、まずそれだけで「実用性がない」ということを意味します。

 

 隊、部隊、戦隊、艦隊、群、機関

大隊以上は部隊、中隊以下はと言います。
下級兵士の感覚では、中隊といえば自宅くらいに気が置けないが、大隊以上は団地とかマンション全体とか、ちょっと大組織に感じるものらしい。

海軍や空軍は、乗り物でやってるので、ちょっと忙しいからといって隣りから大砲をひとつ取り外してきてこっちで使うという具合にもいかないうえに、速度や航続距離が同じものとしか連係できないし、海軍は基地ごと移動してるようなもので、空軍はごく少人数で最前線と基地を往復するわけだから、陸軍とは感覚が違います。

だから、海軍や空軍では戦隊などと呼んでます。

海軍では、戦艦戦隊、巡洋艦戦隊、水雷戦隊、潜水戦隊など。艦が2つ以上あれば戦隊です。
戦隊がいくつかまとまって、艦隊です。海上自衛隊だと、というくくり方もしてます。

空軍では、戦隊は飛行隊とも言います。
戦闘機の一個戦隊は24機(指揮官自身も入れて25機)くらいです。昔も今も、自分の乗機を操りながら編隊指揮もできる限界が24機と言われてます。
飛行隊がいくつか集まって、飛行連隊とか飛行群です。父に言わせると、歩兵と同じ呼び方をするのは泥臭くってサマにならないそうです。

機関はエンジンではなく組織のことを言うなら、どちらかというと室内、非実戦、支援や事務を担当し、居場所を固定しておく組織。部隊の反対語です。

 

 編制、編成、編合、混成、編組

正式(軍隊では制式と言います)に組織を組み立ててあるのが編制、何か目的があって一時的に編制を分けたりくっつけたりして使うのが編成です。
聞いて判別できないので、ヘンダテ、ヘンナリと呼びます。

隷属させて作る編成は、編合ともいいます。

たとえば、小さな島を攻めるのに、戦車ばっかり1個師団もつぎ込んでもしょうがないわけです。
師団規模ならいろんな兵科がありますが、もっと小規模でいいから、でもいろんな兵科を少しずつほしい。
そういう時に、状況に合わせて、バイキング形式の食事みたいに組み立てるのが混成
混成旅団は独立大隊を集めて作ります。普通の旅団よりは火力など増強してあって、師団を投入するほどでもない所に使う。

じゃあ普段から全部混成にして、全部の部隊に戦車や戦闘機が1つずつ行き渡るのがいいかというと、使えない土地だってあるし、整備や補給の効率も悪く、敵戦車の大軍が来た時に各部隊からかき集める格好になるので、混成ばっかりでもまずいわけです。

ソ連はクルスク戦みたいな大所帯の力押しが好きみたいで、あんまりチマチマ編成しませんでしたが、アメリカは大隊単位で臨機応変に組み換える柔軟性があります。

編成は上層部が(普通は長官クラスが)組むのですが、やや小規模またはごく一時的であれば、現場の指揮官の判断でやっちゃう場合もあります。これは編組と言います。

 

 直属、直轄、管制

直属は、固有の隷属です。
原隊といって、軍隊に入った時に自分が本来配属された組織(たいてい連隊)があり、直接には誰の命令で動くのかが決まっている。

子どもさんは、直属と聞けば、特別でカッコイイと思うらしいですが、現実の軍隊は、誰だってなにかに直属してます。

直轄は、臨時の指揮関係をいいます。
編成したとか、一部が援軍に来て合流とか、はぐれて友軍に拾われたとか、学校に戻ってるとか、一時的に原隊ではない司令官の指揮下にある場合。

戦車は、組織としては戦車師団とか戦車連隊とかを構成していても、実戦では、戦車小隊が歩兵大隊に貸し出されて、歩兵大隊長の指揮下に入ったりするわけです。
負傷して入院したら、病院長(少佐くらいの軍医)の下に配属されてる格好になったりします。
看護師さんも婦長や病棟長なら尉官くらい、ヒラでも伍長待遇だったりします。

管制は管轄制有の略。必ずしも所属とは関係なく「郷に入りては郷に従え」というほどの意味。
クーデターの身柄拘束とか。
民間でも港や空港では現地の指示に従いますよね。

 

 独立、独立混成

大隊は連隊に属していて、連隊は師団に属してるわけですが、大隊がどこの連隊にも属さずに師団司令部の所属なんてことがある。
連隊長を通さずに師団長が自分で使える。
というようなことが独立です。編制段階で独立してる。

子どもさんは、独立と聞けば、特別でカッコイイと思うらしいですが、現実の軍隊では、独立は珍しいことでもないばかりか、どちらかといえばニセモノ、みっともないことです。弱っちい独立がいくらでもある。

増員したいが国力がないから正規の大隊が作れなかったとか、大隊1個しか作れなかったから連隊を作れなかったとか、あまり優秀ではない連中を寄せ集めて、ろくな火力もなく装備も旧式だが、頭数だけは普通の大隊より多めだから、規格に満たないんで別扱いで運用するとか、それで、伝統と栄光のある正規の精鋭連隊を投入するまでもない簡単な任務をやらせるとか、足りない旅団の埋め合わせに使われるお手伝い部隊だったりとか。

独立してて混成なら独立混成、いわゆるドッコンです。
これはもっとひどい。占領地で民間人をしめつける治安部隊にすぎないから、人数も火力も極端に少なめ、もう任期が切れて帰国できるはずの兵を引き止めて現地で編成したりしていて、年寄りなうえに士気も低い。

 

 段列

人事や兵站の一種ですが、担当組織の総称というか、補給物資の輸送系統で組織や戦区を分ける考え方があるわけです。

長期間戦えるだけの補給がほしいが、それを持ち歩くと動きが遅くなるから、後方に置いて、小分けして前線へ届けます。

かつて砲兵連隊で、牽引する馬、弾薬運搬車など、運用に関連するものを中隊単位で揃えてユニット化したものを段列と言い、放列(砲の配置展開)に応じて補給したことからきた言葉。
中隊段列、大隊段列、連隊段列などという。今は師団段列もあります。

補給はものすごく重要です。
徹底的に現地調達して身軽な移動で勝ったのがナポレオン軍。
現地調達させないように自分の土地まで焼き払い、敵の補給線を伸ばしまくって勝ったのがロシア軍。
補給がなくても気合でどうにかなると思ったら、どうにもならなかったのが旧日本軍。

 

 全滅、壊滅、殲滅

軍隊では、3分の1が失われた状態を、全滅といいます。残り3分の2が無事でも、もはや、勝つという能力がゼロと見る。
中隊としては滅びても、まだ小隊2個としては機能するんだけど、中隊として勘定に入らない。
戦力は実効力ですから、機能がないものは存在していないのと同じ。
でも存在してるわけです、システムは残ってる。「機能が失われた組織がそこにある」という状態。
損失部分を補充すれば、ふたたび使いものになる。

半数が失われた状態を、壊滅といいます。ここまでくると、戦力だけでなく、神経伝達系も新陳代謝機能も失われているから、補充しても回復できない。
人数や装備が元通りになっても、機能が戻らない、傷が治らない。もはや、新しいのを別に作るより仕方がありません。

全部が失われた状態は、殲滅です。なにもかも、そこに存在しない。
こうなる前に退却して、立て直すことを考えなきゃいけません。

 

 戦力回復

戦車が破壊され、飛行機が不時着し、軍艦が沈められると、兵士は生き延びても兵器がないから、しばらく、やることがなくなります。生産を待つしかない。

九州の基地から岐阜の工場へ、新品の飛行機を受け取りに行ったりとか、ちょっとした休暇みたいになるようです。

海軍の場合、人手を余らせておいてもしょうがないから、歩兵として陸上で使っちゃうことがあります。
ロシアの海兵隊は歴史的にコレです。

 

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