調達

 材料の調達

主計科という部署で食事を担当してます。
軍医の意見を聞きながら、1週間単位くらいでメニューを作成して(調味料など、経理上は週単位で考えていることがよくある)、上層部の認可を経て、材料を買い入れ、調理します。

食品衛生っていうと、ああ、飲食店を開く時に、ちょっとばかし話を聞きに行けば誰でもすぐにもらえるあの資格か、と思うかもしれませんが、軍隊の場合、食品の衛生と検査は、原則として医師免許が要る。

メニューは、同じものばっかり。
父の部隊では、炊事兵が、「また○○ですみませんねえ、みなさん飽きてるでしょうが、一人分の費用がいくらと決まっているので…」、というようなことを言うのが恒例になってたようです。

軍隊独自の缶詰などが、軍隊の管理下施設(または指定を受けた民間企業)で作られ、生鮮品などは入札したりしてできるだけ安い業者から(または、高くても先輩が天くだっている業者から)受け込みます。

品質は、基本的に中ぐらいを買うことになっている。
贅沢はいけないが、あんまり安物すぎても軍隊でのヘビーな状況に耐えないからです。

万一のために複数業者と契約しておいて、危険を分散し、1社がダメでもなんとか手配できるようになっていたりする。

調達は、盗まれる分があります。倉庫へ運び込む途中で、兵士たちが盗むんですが。砂糖は、だいたい盗まれる。豆腐やたまねぎも、生でおやつにするという。
倉庫におさまった後も、小出しする時に、係の人が少しくすねて、先輩への賄賂に使い、もらった人もまた賄賂に使う。

 

 生糧品

呼び方はいろいろですが、軍隊ではだいたい、食材を2種類に分けている。
それは、新鮮だがすぐにいたむ生糧品(生鮮品)と、長期保存がきく貯糧品(貯蔵品)ですが、少し例外がある。

豆腐、油揚、蒟蒻などは、「生野菜」に分類されることがある。
ベーコンならば貯糧品だが、塩鮭は生糧品。味噌や漬物も基本的には生糧品です。

 

 貯糧品

穀物ならば麻袋、塩漬肉や漬物や調味料などは樽、酢はカメ、野菜は木枠、乾物などは木箱などで運びます。

あとは瓶詰や缶詰で、これは軍隊が生み出したと言ってもいいくらい。さすがというか、仏軍がさかんに研究したものです。
暖かいうちにビンに入れて、ロウで封印したりして密封すれば、かなり日持ちすることが早くから知られていて、実用化もされたけれども、ビンは割れるので。
缶詰は、最初はどこの国でも底が抜けて大変でしたが、すぐに改善された。

日本では金属が足りなくて、フタと底以外は紙で作ったCA缶というのがありました。
戦時中は硬貨まで陶器で作ろうとしたくらいだから、セトモノの容器を使った壺詰とか防衛食とかいうのもありました。

今の軍隊は、レトルトやフリーズドライが多くなってきてます。軽くて(ゴミまで軽い)都合いいからです。イタリア軍あたりが早く始めた。自衛隊では缶詰をI 型、パック入りをII型と呼んでいる。
旧日本軍でも、圧搾乾燥食品、脱水缶詰、脱水漬物なんてのがありました。

 

配食

 通常配食

普通の食器で普通のメニューを食べること。

 

 特別配食

特配。通常配食でないもの。饗応と、戦闘応急配食がある。

 

 饗応

もてなすようなこと。部外者に御馳走する場合もある。
目的で言うと、歓迎会、送別会、懇親会、慰労会などがあり、形式で言うと、晩餐、午餐、朝餐、立食、アットホーム、レセプション、ティ・パーティなどがある。
連隊本部くらい以上は、漆器とか、フルコース用の洋食器とかを備品で持っていて、足りなければ上部組織から借りてくる。

 

 戦闘応急配食

戦闘で忙しくて、おちおち食事していられない状況で、なんとかすること。
余裕があるほうから、第1、第2…と、第5くらいまで想定してある。

まず、みんな一斉に食事ってわけにいかなくなるから、班ごとに受け取りにいく。
もっと忙しくなると、戦闘配置を離れることができないから、おにぎりみたいなものを誰かが、各部署に配って回る。
もっと劣悪なのは、厨房か炊事兵に被害甚大な場合で、もう料理はできないから、ありあわせの缶詰など保存食が配られる。
この段階までは、どの班はすませた、どの班は食べてない、なんてことを記録はつけてる。
もっとヤバくなってくると、そのへんに山積みで出しっぱなしにしておき、ヒマをみて手があいた人から、つまみ食いする。

 

 集中か各個か

缶詰でも、1人分ずつ小分けされてるっていうのは、ゴミばかり出るし、そのゴミにも輸送の手間と金がかかっているわけで。
業務用の、2キロくらい入った缶詰を、みんなで分けるほうが効率いいんです。

米だって、大きな焚火と大きな鍋で、全員分を炊いたほうがいい。
いっぺんに炊いたごはんっていうのは、いい具合に蒸れるから、古い米でもそれなりにうまかったりするんですよね。

小さい飯盒でやるにしても、とりまとめて1つの焚き火でやれば、4つの利点があるとされている。
警戒が手薄になりにくい、監督しやすい、静かにできて見つかりにくい、燃料や水が節約できる、の4つです。

旧日本軍では、林田式という電動2馬力の、米をとぐ機械があって、4千人分を1時間15分でとぐことができたという。
その間に、手のあいた人はほかの作業ができるってことが重要です。
食事のたびに攻撃を休んで、米をといでいたら、まどろっこしくてやってられない。
だから分業にして、料理人は一日中料理だけやっているほうがいい。

しかし、炊きあがった御飯を4千人にどうやって届けるんだ?という話になるから、バラバラに行動してるんだったら、各自でやらざるをえない。

そりゃ、食事は仲間と一緒に食べるほうがうまいに決まっているし、「同じ釜の飯を食った仲」という連帯感にもなって都合いいんですが、人殺しをやってるんだから、状況が許さないわけです。

だから、海軍のほうが、専門の炊事兵ということが発達しました。
陸軍は、何でもいいから量をガッツリ食べればいいという考えが支配的です。
炊事兵は、古参のコワモテの人たちがやっていて、常に自分たちが一番いいものを食っているなんて言いますが、父の部隊では全員おちこぼれで、戦闘で役に立たないから炊事に回されていたという。

飯盒炊爨で50人分を炊くのに8人必要です。
全体の監督をする下士官1、薪を集める兵2、川に行って米をといでくる兵2(ひとりで運べる飯盒が約12個とされている。飯盒1個で2人分炊ける)、カマド係の兵3(穴を掘らねばならない)。
それで現代では、米軍のTレーションみたいなやり方が、一番いいのではないかと言われてます。

 

つづき 

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