礼式

軍隊に入って、まず最初に習うのが礼式。敬礼と儀式です。

 

 敬礼の種類

ひとりひとりやるもの、部隊みんなでやるもの、施設を出入りする人の身分によって警備兵や門番がどのくらいやるかなどが決まってます。

ひとりでやるものは、天皇などに対する最敬礼と、室内・屋外での規定がある。
座って機械操作をやってるところへ急に将軍が来たような場合に起立して迎えるのか、道を歩いていて軍隊の行列に出くわした場合にどんな態度を取るのか、など。

部隊でやるものは、部隊と部隊が道で行き会ったら、引率者とメンバーはそれぞれどういう挨拶をするのか、移動中だったら立ち止まるのか、どのくらい近付いたらやるのか、あるいは、実戦を想定して演習やってる忙しい時にいちいち礼儀作法をやるのかやらないのか、などです。

 

 敬礼

てなわけで、敬礼っていうのは、手をかざすアレだけじゃありません。
上官より先に椅子に座らないなんてことも敬礼です。

挨拶の動作だけに限っても、帽子をぬぐかどうか、ぬいだ帽子は手に持って下げるのか脇に挟むのか、頭を下げるか、どのくらい下げるか、手が荷物でふさがってる時は、しかも手に持ってるのが軍旗だったりしたら、刀やサーベルを持っててしかも抜身の時は、急用で馬を飛ばしてる時は、偉い人が複数いる時は、偉い人の代理やお供をしてる時は、休日に私服で会った時は、食事中や風呂場では、同じ階級に対しては、階級がわからない相手に対しては、外国の軍人に対しては、なんてことが、いちいち全部決まっている。

 

 いわゆる敬礼

敬礼は騎士の伝統だから、今でも騎士道ではこまかい決まりがあり、しかも、キリスト教の秘儀に由来する理由がいちいちあったりもします。

昔は顔が全部隠れる兜をかぶっていたから、挨拶する時は面頬を上げて、顔を見せたわけです。

バイクのヘルメットのバイザーみたいに、かぶったままで顔の部分が開閉するんで、バイザーの右上にポッチがついていた。
もっと古い時代の鼻当タイプの兜でも、ヘイスティングズの戦いでノルマンディ公ウィリアムが、自分は死んでいない!ということをあらわすため、兜を上にずらして顔を見せたという話がある。

だから、騎士団にもよりますが、基本的には、右手で、すべての指をくっつけて伸ばし、てのひらは真っ平ではなくほんの少し物をすくうような丸みを持たせ、まったく側面ではなく手の甲のほうを相手に向けて、手首はごくわずかに内側に曲げ、指先を右眉の上あたりにつけて、手で人相が隠れないようにして、相手が答礼するまでやり続けるものなんです、本来は。

しかし軍隊では、ヘルメットで頭でっかちになっているので、二の腕を水平にして、指先をほとんど耳の上あたりにつけることも多い。
外国では答礼を待たずに手を下ろしてしまったり、敬礼したあと投げキッスみたいに手をサッと相手に向けることも多い。
海軍は場所が狭いからヒジを張らない。ヒジを前に向けるくらいに狭くやります。

米軍の教育映画を観ると、人差指が右目の上に来るようにしろとか、親指が離れているのは失礼だ、というようなことを言ってますが、下級兵士の記録映像を観るとかなりいいかげんです。

現代では、帽子やヘルメットをかぶったままですみませんが御挨拶申し上げます、という意思表示としておこなう場合がほとんどです。
旧日本軍でも、なにもかぶっていない時は、普通に頭を下げて一礼してました。

 

 ほかの分野の敬礼

警察や消防は、騎士道なんぞに関係ねえから、親指を曲げたり、変わったやり方をしてることが多い。

初代タイガーマスクの佐山先生は、格闘技にも敬礼を取り入れました。
「押忍」の精神をあらわす動作が、敬礼なんだとか。
その写真を見ると、右目をほとんど隠している。顔を見せるという敬礼本来の意味からはズレている。

警備員なんかは、さらにヘンテコなのが多い。
それでも、その団体でそう決まっているなら、その分野ではそれが正しいのだけれど、乗り物の運転手なんかは、人によってバラバラなことが多い。

さらに子ども番組に出てくる着ぐるみ戦隊だかロボット操縦士だか、あるいはアイドル歌手の振付とかは、軍隊に慣れてる人から見ればバカ丸出しみたいなのがいくらでもある。
頭を傾けて手首を大きく曲げていたり、指先を反らしていたり、人差指と中指だけ伸ばしたり。

 

 敬礼嫌い

軍隊では、とにかく上官に出会ったら敬礼です。
されたら答礼しなきゃならない。
これが面倒で、休憩時間もあんまり出歩かないなんて話もよく聞きます。

敬礼が好きなのは米軍です。
王家の作法みたいなのがなく、自由な雰囲気が長所の国だから、規律がいいかげんだと思われたくないらしくて、敬礼しまくる。
自衛隊も、わりとよくやるほうです。

父は、愛機を整備してくれる人や飛行場の職員さん以外に対しては、あんまり本気で敬礼しなかった、ただのポーズだ、ああいうものが好きなかっこつけ野郎にろくなのがいたためしがない、と言ってます。

 

 かっこいい敬礼

礼式がキチンとしてるということは、野放しの人殺し集団ではなく、統制がとれているということです。

第一次世界大戦で捕虜になった英軍のインド人が、軍用品を運んでいて、トルコ軍の塹壕でたまたまドイツ将校たちに出会い、深々とおじぎをしたら、ドイツ将校たちは瞬間的に直立不動になってカカトを揃え、たかが捕虜に対して丁寧に答礼したという話があります。

敬礼は、ノーガキを言わず、万感の思いをあらわし、余韻があるので、映画やドラマの御涙頂戴シーンによく使われます。
俺が今までに一番うまいと思ったのは、銭形警部の立場が悪くなったのをルパン一味が助けようと奔走する回のラストで、涙ぐんだ銭形がルパンたちに敬礼する場面でした。
泥棒に、ありがとうとは言えないですからね。

 

 執銃

貸与式をすませて小銃を扱うようになったら、銃の作法もやります。

立て銃(銃と書いてつつと読む。筒の意)、下げ銃、控え銃、捧げ銃、連れ銃、担え銃、著け剣、脱れ剣、弾薬を込め、弾薬を抽け、撃て、連続撃て、右より撃て、各個に撃て、撃ち方待て、撃ち方やめ、など。

へんなほうに向けていて暴発したり、てんでばらばらに撃ったりでは、軍隊にならないので、銃の持ち方から決まってるわけです。
体から10センチ、40度なんてことが、いちいち。

小銃を持っている時は、志村さんのアイーンみたいな敬礼もあります。

 

 儀式

偉い人をお守りして威儀を飾るやり方、偉い人の見送り方や迎え方、偉い人が地元にいらした時に参上して挨拶、偉い人に部隊を視察していただく場合、相手の身分によって礼砲祝砲を撃つ数、軍旗の扱い方なんかが決まってます。
これが軍隊で言う「儀式」です。

 

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