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 ヤーカヴリェフYak-2(Як-2)か、Yak-4(Як-4)、
 あるいはその派生型、
 おそらくI-29(И-29)のことか

 

複座戦鬪機遠距離偵察機

諸元及性能
識別上ノ特徴

最大速度
  約五三〇時粁

航續距離
  不明

武  裝
 機關銃 一-二
 二〇粍砲 
     一-二 

翼 長 約一五米

一、低翼單葉双發型ニシテ發動機ハ胴體ヨリ下方ニ在リ

二、發動機ノ後方ニ車輪ヲ引上ゲ「ナセル」ハ翼後■(縁の旧字)ヨリ突出ス

三、主翼ハ三角形ニシテ方向舵ハ左右ニ分割ス

 

 

これは何だかよくわかりません。名前が書いてないんです。
機種分類が製品名のように書いてある。

Pe-2かなにか、山ほどあるサブタイプのひとつに、そんなのがあるんでしょうか。
尾翼はよくあるMiG-5風の分割ですが、主翼は前縁が水平で後縁が斜め、つまりMiG-5とは逆です。
エンジンは液冷、キャノピー付の後席がある。
Yer-2なら見間違えるわけがない。
機銃のほかに20ミリを積んでて、幅15メートルくらいで530キロを出すというと、パリカールパフTISくらいではないかとも思うのですが、2機しか作らなかったようなマイナーな試作機が、この年の夏に初飛行したばかりだというのに、初秋に出た本書の印刷に間に合うかどうか。

双発で、プロペラが機首より前にあって、主翼前縁がまっすぐ気味で後縁が斜めで、20ミリを積むというと、ヤーカヴリェフYak-2かYak-4のサブタイプではないかというのが、今のところ俺の結論です。

 

このころソ連は、偵察機と軽爆撃機を兼ねるBB(短距離爆撃機)という機種を考えていて、ヤーカヴリェフさんのところでは、双発の試作機Ya-22というのを作った。39年に初飛行。
エンジンは「M-103」、一説には速度は570キロだという。
BB-22という名前で制式・量産になるつもりで計画されていたらしい。

ところが、高性能を求めてギリギリの設計にしたために安定せずピーキー、暴れ馬ゆえに速度と上昇の性能が高く、爆撃機にも偵察機にも戦闘機にもなるオールマイティじゃないかと勘違いして計画を進め、結局なにに使っても役に立たない中途半端なものが出来上がってしまった。

それでもYak-2という名前で、量産はしたわけです。40年に初飛行と生産開始、111機、一説には数十機だともいう。
速度は515キロ、武装はShKAS×2、爆弾最大600キロ。
そもそも爆撃機としては小さすぎたが、翼内に燃料タンクを増設してしまったので重たいやら危ないやら、もう爆撃機としては使えなくなってしまった。

これを改良して、BB-22bisまたはYak-4と呼ばれるものを作った。
小さすぎて安定しなかった胴体を、84センチ延長。
キャノピーがバブル型になったというか、背中をひっこめて、後方視界が開けた。
エンジンは「M-103R」か「M-105」。速度は533〜574キロ。
失敗作をいじくり回しても、やっぱり失敗作だった。
いじったせいで、ますます重くなってしまい、主脚の車輪を二重にしてみたが、それもまた重くなるわけで。
40年ごろ初飛行、生産は41年から90機ほど。

 

Yak-2には、写真偵察機仕様のR-12と、20ミリ2門の護衛戦闘機仕様のI-29というのが計画されて、いずれも途中で中止になって、量産しなかったという。
そのへんの情報が、なんとなく旧日本軍に伝わっていたのではないかと思うわけです。

 

なんにせよ、この飛行機は、あんまり成功しなかったと思います。
ソ連でなくても、どこの国でもそうなんです。

30年代後半に、双発複座の戦闘機というのが各国で作られてまして。護衛戦闘機です。
なにを護衛するかというと爆撃機を護衛する。

双発にしとけばパワーがあるから、燃料もたくさん積めて、爆撃機と一緒に遠くまで行ける。
なんなら、爆撃機よりも先に行って、爆撃目標の上空を片付けておける。
いやそれどころか、パワーがあるから、爆弾を積んで自分が爆撃機になれる。
もう1人乗ってるから長時間でも疲れにくく、背後にスキもない。
エンジン2つあって高速だから、戦闘機にもなる。
小回りはきかないが、一撃離脱で使えばいい、いざとなったら逃げればいい。
上昇が速くて重武装、ってことは迎撃にも使える。
逃げ足が速いから、武装を外してカメラを積んで、偵察機にもなる。

こりゃもう万能じゃないかと。
頭のいい人々は、えー、ホントかなあと思いつつ、まあ他国がやってるから一応やってみるか、という程度に作ったのだけれども、本気でカッコイイと思って、熱心に押し進めた人もいた。ゲ−リング元帥とか。

ところが、作ってみたら、ぜーんぜんダメだとわかった。どん臭くて。

図体も大きいが、航続距離を伸ばそうとしたから、翼が長距離用で、燃料タンクも無理に大きくしてあって、空戦にむいていない。
重いから、思ったほど高速でもなかったり、最高速度は優秀でも出足が遅くて瞬発力がないから、戦闘機としては致命的だったり。
敵の単発機に勝てないから、護衛の役に立たない。
そのうちプロペラピッチや燃費の向上、増槽などで、単発でも爆撃機の護衛についていけるようになり、なんのために開発したんだかわからなくなる。
敵の爆撃機を迎撃しに行くと、敵側の護衛役の単発機にやられる。
そもそも双発機が運動性で単発機に勝てるわけがないというのは、ただの当たり前だった。
かといって爆撃機として使うには積載量が少ない。
結局は夜中にコソコソ迎撃するくらいしか使い道がないっていう。

ヤーカヴリェフさんにしては珍しく失敗作になったのも、設計が悪かったのではなく、双発複戦というジャンルそのものが間違っていたということです。

 

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