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話に関係ある発動機の設計所

 

 リンカーン・モーター・カンパニー
 (ブランド名はリバティ)

ヘンリー・マーティン・リーランドさん。アメリカ。
ヘンリー・フォードさんのヘンリー・フォード社から、創業者フォードさんが追放されたところへ、後釜に入り、キャデラックに社名変更、高級車を作っていたが、ゼネラル・モーターズに買収される。
ところがGM社はちっとも第一次世界大戦に協力しないので、リーランドさんは愛国心ゆえに独立、別会社で航空エンジンを作ることになったのがリンカーン社。もちろん大統領にちなむ社名。これまた高級車ブランドになった。
ところでフォードさんは新しいフォード社「フォード・モーター」を作り大衆車の分野を開拓、のちにリンカーン社を買収。リーランドさんは追い出された。
外国ではホリエモンみたいなのがゴロゴロいるので、珍しい話ではありません。
むしろ、親族で世襲してる日本人のほうが、会社ということの概念がズレてるのかも。

 ネイピア&サン
ネピアという表記になってることもある。デイヴィッド・ネイピアさん。英国。
最初は蒸気エンジンの印刷機や金属加工機械の会社。孫の代になってからスピードレースに手を出し、自動車用、船舶用、飛行機用の高性能エンジンを作る。最初は他社製エンジンの量産、のちに自社開発も始めた。自動車自体を作っていたこともあった。
イングリッシュ・エレクトリック社に買収されて、今ではロールス・ロイスplcの一部(ロールス・ロイスは現在、航空エンジンと自動車で別会社)。

 ブリストル・エアロ・エンジン
英国。サー・ジョージ・ホワイトさんのブリティッシュ&コロニアル・エアロプレーン社が、ブリストル・エアクラフトに社名変更した時に、エンジン部門の分社化と、コスモス・エンジニアリング(倒産したエンジン会社)の吸収合併をやって生まれた会社。
のちにアームストロング・シドレーと合併、デ・ハビランドおよびブラックバーンを吸収し、ロールス・ロイスplcに吸収された。
というか英国の航空エンジン産業はほとんど全部、ロールス・ロイスplcに合併統一した。

 ノーム・エ・ローヌ
フランスの老舗。グノーム・ローン、ノーム・ローンなどと表記されていることも多い。
ルイとローランのセガン兄弟のノーム社と、ルイ・ヴェルデさんのル・ローヌ社が合併したもの。
前者は回転星形の発明、後者もそれを生産していた会社で、第一次世界大戦の頃には世界をリードしていた。というか、この時はフランスがまだ没落していなかった。
戦間期からはバイクも手がけた。
のちに国営化されて、今はスネクマの一部。
スネクマはフランス機のエンジンなどを作ってる国営企業(というか、株をほとんど国が保有)で、サフラングループ。軍需を国営にしたがるのはドゴール以来のフランスの特徴。

 カーチス・ライト・コーポレイション
アメリカの老舗、というより航空界のパイオニア。
ざっと12社が合併したもの。何度も倒産や分社や身売りをやっているが、カーチス・エアロプレーン&モーター社、ライト・エアロノーティカル社など。
カーチスは、特許侵害で裁判になってライト兄弟に負けたグレン・カーチスさん。最初は自動車屋。起業家というか実業家だった。大西洋横断飛行の世界初や、艦上機の世界初もやった。
ライトはライト兄弟の流れをくむ会社。ライト兄弟が活躍したのはほんの2年半くらいで、すぐに他社に惨敗し、晩年は恵まれなかった。かたくなに特許にこだわりまくったあげく、株を手放してしまった。
カーチスライトは一時期はアメリカ最大手の航空関連企業集団で、ノースアメリカン航空など傘下の子会社は数知れず、性能はともかくとして恐ろしい数の戦闘機を米陸軍むけに作っていた。
複葉、尾輪式など、新時代が始まっても古いことをダラダラ続けてしまうのが特徴で、特にジェット化に対応しそびれたことは致命的で、今は部品メイカー。
カーティスと表記されていることもあるが、外人さんの発音を聞いてもカーチスに聞こえることがあるので、このコンテンツではカーチスで統一しときます。

 プラット&ウィットニー
アメリカの大手。
フレデリック・ブラント・レンチュラーさんが、航空エンジンを作るにあたって、プラット&ウィットニーという機械会社から資金と場所を提供してもらったので、以来、その名前を使っているもの。
あまりにも高性能なエンジンを作るので、旧日本軍はケチョンケチョンにされた。
今ではUTC(ユナイテド・テクノロジーズ・コーポレイション)を構成する企業のひとつ。UTCは世界3大メイカーのひとつ。
日本ではホイットニーと表記されるが、アメリカ人は誰一人として「ホ」とは発音していないという。
しかしホイットニー・ヒューストンの紹介アナウンスがホと言ったのを俺は確かに聞き取ったことがある。

 イスパノ・スイザ
スペイン・スイスの意。ヒスパノ・スイザという表記になっていることも多い。
スペインの元軍人エミリオ・デ・ラ・クアドラさんが、スイスの技術者マルク・ビルキヒトさんにやらせた会社。
もともとスペインの企業だが、フランス市場への売り込みに熱心だったり、何度か倒産してフランス資本になったりフランスに工場を置いたりで、仏軍に採用されることが多かった。
第一次世界大戦では、アルミを多用した軽量なV8(ぱっと見は空冷星形に見えるが水冷V)が、フランスのスパッド機の活躍の原動力になったが、それもフランスで生産した。
クラシックカーの分野では高級ブランド。今はスネクマの一部。

 ソシエテ・アノニム・デ・ユジーヌ・ルノー
ルイ・ルノーさん。フランス。
画期的で斬新な自動車を作り、お兄さんたちと会社を立ち上げて、帝制ロシアにも現地工場を操業していた。
戦車の分野でも歴史に残る大活躍。
一時期は航空に手を出し、戦間期にコードロン社の輸送機のエンジンなどを作っていた。
じつは日本も、ここの空冷V8には大変御世話になった(大正時代に陸海軍航空隊を創設した時、モーリス・ファルマン機を使っていたので)。
三菱の航空部門も、元はと言えばルノーのエンジンのコピーから始めたし、初期の日本陸軍はフランスの航空技術を手本にしたので(海軍では英国)、影響は少なくなかった。
フランス降伏後はナチスに協力せざるをえなかったため、工場に連合軍の爆撃をもらったあげく、ルノーさんは戦犯扱いで拷問死。ドゴールに国営化されたのち民営化、今では欧州最大の自動車会社ルノーS.A.S.。日産もここの傘下。

 

 BMW(バイエルン発動機製造)
カール・ラップさん。ドイツ。
もともとRMWという航空エンジンメイカー。船舶用も作っていた。
航空エンジン会社は戦間期には仕事がなくてバイクなどを作るが、特にドイツでは第一次世界大戦に負けて飛行機製造が禁じられたことで、かえって、クルマやバイクのトップブランドになった。
BFW(バイエルン航空機製造)と合併したが、航空機製造部門は、のちに分離独立(BFWに吸収合併されていたメッサーシュミット社が、BFW部分を乗っ取って離脱)。
戦時中は大いに優秀なエンジンを作った。空冷も作った。ジェットも実用化、この技術は大戦末期に日本にも分けていただいた。
敗戦したので航空から離れたが、ロールス・ロイスの航空部門と提携したこともあった。
ロールス・ロイスの自動車部門や、ミニ(ローバーの)も、今ではここが所有。

 ユンカース・モトーレン
フーゴー・ユンカース教授。ドイツ。
機体も作る会社で、飛行機に関するさまざまな新技術を開拓。
もともと船舶用ディーゼルを作っていた。航空用ディーゼルをきちんと完成させた唯一のメイカー(ディーゼルで飛んだ世界初はパッカードだが、技術的な問題を解決できなかった)。
ジェットの実用化ではBMWより半歩先を行っていた。
航空機の平和利用をめざし、ヒトラーに大反対したため、獄死に近いことになり、会社と特許は国に没収。
ユンカース教授は熱力学が専門で、最初はストーブやヒーターの会社をやっていたこともある。
ほかに、ユンカース空輸という航空会社も持っていて、ルフトハンザのもとになった会社のひとつ。ルフトハンザは完璧な整備に定評があり、安全な航空会社として3本の指に確実に入る(日航は安全性ランキングで世界50位あたり)。

 

 シュヴェツォーフ試作設計局
アルカージイ・ドミトリエヴィチ・シュヴェツォーフさん。
一説には39年設立だというが、それ以前から、この人のエンジンは出回っており、どうやら34年の設立らしい。
最初はミクーリンやクリーモフの下請けというか生産部門担当だったらしい。
パーヴェル・アレクサーンドロヴィチ・ソロヴィヨーフさんのソロヴィヨーフ設計局と合併して、今ではアヴィアドヴィガーテリ社。

 ミクーリン試作設計局
第24設計局。
アレクサーンドル・アレクサーンドロヴィチ・ミクーリンさん。
BMWのライセンス生産から始めて、冷却水の凍結を克服。ソ連の液冷の元祖本家。
のちにターボジェットも手がけ、ソ連初のジェット旅客機の実現に貢献した。

 トゥマーンスキイ試作設計局
第300設計局。
スィルギェーイ・カンスタンチーナヴィチ・トゥマーンスキイさん。
ひところミクーリン設計局にいた人。
ドイツからかっぱらってきた「ユモ004B」を元に、戦後はジェットでも活躍。ろくにチタンも使えない状況で、世界最速の戦闘機(マッハ3以上)MiG-25のエンジンを作り上げた。

 ナザロフ
「M-65」や「M-87B」が、この名前になっている。

 クリーモフ試作設計局
第26設計局。

ウラヂーミル・ヤーコヴレヴィチ・クリーモフさん。

イスパノスイザのライセンス生産から始めて、液冷を開発。
戦後は、冷戦直前に英国の労働党政権が親ソだったため、ロールス・ロイスのジェット技術がソ連に伝わり、これの模倣品を担当。
補助動力装置の国際シェアでも世界3大メイカーのひとつ。

 シャロムスキイ
ディーゼルを作ってた部門。
アレクセイ・シャロムスキイさん。
ミドルネームわからん。ロシア名は、「ファーストネーム、父親名、家族名」という順になってるものなんですが。
航空用ディーゼルは、先進国でもおおむね失敗しているので、ソ連にはとうてい無理。
ソ連はトラックなどでもあんまりディーゼルを使わないようで、ゴルバチョフさんは著書『ペレストロイカ』の中で、その経済性の悪さに激怒しているという。

 イワン・メルクロフ
ラムジェットエンジン「DM-4」を作った人。

 L.S.ドスキン
ロケットエンジン「ZhRD」を作った人。

 

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