トルク、回転

せっかく燃料を焚いても、そのエネルギーを全部使えるわけじゃありません。
ガソリンエンジンの場合、エネルギーの2割くらいしか動力に変換できない。
あとの8割は、熱だの音だの摩擦だの振動だの、しょーもないことでムダに失っているわけです。

これは何でもそうです。たとえば電球は光ってもらいたいのであって、熱や電気抵抗を持ってもらいたいわけじゃない。
使っている電力のうち、裸電球は1割くらいしか、光にしていない。蛍光灯でも2割、発光ダイオードでやっと3割しか使っていないわけです。

この、ただでさえ少ない使用範囲のエネルギーで、やっとこさ主軸を回しても、さらに伝達その他の摩擦があったり、過給器や発電機を回す動力も差し引かれる。
その残りの残りでもってプロペラを回すわけですが、そこからまたまた2〜3割を失う。プロペラをやたらめったら回しても、周囲の空気をかき乱すことにエネルギーが使われてしまい、なかなか、前に進むことには使われません。

理屈の上では、大量の空気を、ゆっくり押し出すほうが効率がいい。
これは水泳と同じで、犬かきみたいなことをどんなに速くやったって、それはもう動かし終わってる水を押してるんで、あんまり意味がないわけで、もっと腕を伸ばして、ゆっくりでいいから大量につかんで、ガバッと押したいわけです。

あんまりゆっくりだと、プロペラの角度が難しくなり、ある程度以上になると失速をおこすので、ゆっくり強く回すには限界もあります。
それでも
飛行機の場合、低回転でトルク重視なのが特徴です。バイクみたいに、レッドゾーンバリバリィ〜とか空ブカシして喜ぶことはありません。
空ブカシするとすれば、燃料パイプに発生した気泡を抜くとか、なにか理由がある時です。

1回あたりどのくらい気合をこめてやっているかがトルク、それを一定期間内に何回やっているかが回転数、これを掛け算(係数もですが)した数字が、仕事率(たとえば、馬力)です。
「どのくらいのペースで仕事が片付くのか」という効率の話を、積の合計であらわすわけですから、仕事の進み具合は同じでも、小さなバケツに汲んで何往復も走る人もいるし、動作はトロくても大きなバケツでいっぺんにやって回数を少なくすませる人もいるわけです。
飛行機は後者でなければなりません。回数が限られているからです。

プロペラは回転しているだけでなく、自身も飛行しているので、むやみに速く回すと、飛行機は音速でなくてもプロペラの先端は音速で風を切ってしまい、音速に達すると抵抗が増えたり衝撃波が出たりでプロペラの役割が効率わるくなる。

エンジンとプロペラはほとんど直結してあるか、遊星ギアで減速していることさえあるくらいだから、プロペラの回転数を上げられないということは、エンジンの回転数も上げないわけです。
飛行機のレシプロエンジンはだいたい、毎分3千回転程度。スポーツタイプのバイクやクルマにお乗りの方ならわかると思いますが、これはものすご〜く低い回転数です。

 

 バルブ、カム

ガソリンエンジンには、新しい空気を取り込んだり、排気ガスを出したりする、穴が必要です。
エンジンの種類にもよりますが、爆発をやってるので、少なくとも吸気のほうだけでも、この穴を開閉しなければならない。

大昔は、スリーブバルブというのがありました。
唐辛子の缶みたいに、筒が二重になっていて、穴の開いてる所が一致した時にだけ穴になり、穴が重なっていない時はふさがっているやつ。

その後、キノコ型のフタで開け閉めするようになりました。バルブというのは普通コレです。たいていシリンダーの上端にあります。
開けるのはカム、つまり
定期的に回ってくる出っ張りでおこないます。閉めるのはスプリング。

飛行機の場合、この部分はあまり複雑にしません。
自動車だと、吸気と排気それぞれにバルブ2個ずつとか、吸気と排気でカムを別々にしてツインカムとか、バイク用の小さいエンジンなのに16バルブなんてこともあるんですが、飛行機では普通
1個ずつの1本です。

星形エンジンだと、OHCではなくOHVというやつなので、星の中央に円盤があって、これをカムの役目にして、そこからプッシュロッドという長い棒でシリンダー先端へと仲介してます。シリンダーごとに棒が並んで、マルタ十字風の先割れの、独特の格好になる。
このやり方は古臭いんですが、飛行機の場合はあんまり回転数を求めないので、これが一番確実ではありました。

 油圧タペット

バルブはしっかり閉めないといけませんが、熱で部品が膨張したり、それも、部品ごとに素材が違うので、膨張率も違っていて、なかなかピッタリとは閉まらない。
そこで、隙間があるようなら自動的にふさいでくれる装置をつけます。メーカーによって名前は違いますが。
飛行機の場合、これは重視します。
取り入れるのが早かった
自動車では、つい最近まで、この機能はありませんでした。自動車の場合は、エンジン音を小さくしたいという理由でやってることが多いです。

 

 →つづき 

 

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