パワープラント

推進装置の、システム全部のことです。動力に関する部分。
エンジン本体のほかに、吸気、過給、燃料、点火、冷却、潤滑、始動、発電、電池、排気、水メタ噴射などの、各系統があります。
今どきは、燃料の量や点火のタイミングを制御するコンピュータなんてのも、普通に積んでいたりします。

これらは、一部分だけをすぐに交換できるように各部がユニット化されていたり、逆に、エンジンを丸ごと付け替えやすいように、エンジンに直接関連する部分が全体でセットになってることもあります。
ユニット化されていて交換できるということは、問題ある所だけ差し替えればすぐ使い物になるし、全部を運ばなくても問題ある所だけ後方へ持っていって充分な設備のもとで専門家がじっくり修理できる。

 補機

アクセサリー。補器と書く人もいる。エンジンの付属品です。
どこまで含めるかはエンジンの種類にもよりますが、
エンジン本体以外の部分
見た目にはエンジン自体は軽くてコンパクトなようでも、実際は、遠く離れた所まで冷却水を往復させていたり、エンジン自体が非力なもんだからパワーアップ装置でゴチャゴチャしていたりするわけです。
BMWあたりがすごいのは、エンジン自体が高性能で、ドノーマルでも高性能ということです。

鉄道の世界では、釜飯を買ってる間に特急列車に電気機関車を連結して、峠を越える登坂力を付け足そうというような、「補助の動力車」を補機と言ってるようです。

 気化器

空気と燃料を混ぜて燃やしているのは自動車と同じです。
この混ぜ具合は、不完全燃焼にならず振動もススも火炎も出にくいような、燃費のいい、最適の比率で配合します。

ところが上空では空気が薄いうえに、高度によって空気の濃さが違うので、混合気調整バルブという装置をつけて、ある程度は濃さを加減します。
これはだいたい手動操作です。自動のもあるけど、手動もできる。
本書の時代は、ちょうど自動になるくらいです。

また、エコノマイザーという、自動車で言えばチョークのような装置をつけます。これは自動です。
ボイラーで廃熱を回収利用する装置もエコノマイザーと呼ばれたりしますが、飛行機の場合、燃料を余分に追加してやって、その気化熱でエンジンを冷やすということです。
出力を上げた時に、焼き付きを防ぐためです。
これのどこがエコノミーかというと、普段は燃料をギリギリ少なめに使っているということです。

撃たれた場合の予備とか、振動を防ぎたいなどの理由で、気化器は複数系統にしていることもよくあります。
ロールスロイスは4つくらいつけたりします。

 

 点火プラグ

今の自動車は、ほとんど電気の火花による着火ですよね。大昔は、熱したプラチナ棒でやるのとかもありましたが。
レシプロ飛行機も、たいていは、磁石で発電した火花(
マグネット方式)というやつで点火してます。

飛行機の点火プラグは、電極間隔が、自動車のものの半分くらい。接地電極は、オクタン価にもよるけれども3極くらい。
これがどういうことかというと、確実な、わりと地味な爆発ということです。

プラグはたいてい各シリンダーに2個ずつあるのが、航空レシプロの特徴です。寒くて薄い空気でも火がよく回るように、また、少しくらい撃たれても大丈夫なように、複数系統にしてある。

今ではレーダーや電子計器を積んでるので、電磁波をまき散らさないよう、航空用プラグは1個1個全体を金属でおおってシールドしてあります。

 始動器

マグネット方式は、キック始動のオヤジバイクみたいなことです。
だからといって電池のたぐいを全く積んでないとも限らないのですが、バッテリーはともかく、セルはあんまり積みたくない。飛んでる時は余計な重量だから。

プロペラの始動は、セル(飛行機の場合は普通、スターターという)のほかに、コンプレッサーの圧縮空気または火薬の爆発でピストンにはずみをつけてやるか、モーターまたは手動ハンドルによる慣性始動機か、始動車という専用車輌をプロペラにつないで回してもらうか、プロペラにゴムロープをひっかけて引いてもらうか、命がけでプロペラを手回しかです。
父の時は、ものすごくまちまちだったそうです。慣性始動機の掛け声も、点火!とか着火!とか接続!とか、人によって言うことが違ったという。
手動といっても、もちろんクラッチやフライホイールやカギ爪によって、少ない力で危険なく回せるようになってます。
日本の陸軍では基本的に始動車を前提にしてたので、スピンナー中央先端に、酔拳の月牙杯手みたいに曲線的な形の、接続装置がついていました。

大型機だと、スターターのスイッチは副操縦士の役目です。

始動は、必ずしもパイロットがやりません。
軍用機には、各機に専属の担当整備兵がいます。「機付」という。双発でも3人くらいです。この人たちが、エンジンをかけて暖機して、操縦免許ないけど代わりに乗って、滑走路まで出してしまうことも多い。
このへんは、軍隊の飛行場は融通がききます。
民間だと、機上で病人が出た場合、無線で連絡してあっても、なかなか最優先では着陸させてくれず、着陸してから救急車に乗るまで30分くらいかかる。遠くても航空会社ごとに定められた専用の位置に駐めなければならず、空港内を走ることを許された特別な自動車が先導しないと救急車が近寄れない。
米軍基地だったら、その飛行機がまだ停止してないうちに救急車が走り出してます。

ソ連のような氷点下の所では、飛行機も戦車も、凍っちゃったら二度と始動できなくなるので、2時間おきに15分とか、ずーーーーっと暖機し続けますから、機付は本当に付きっきりです。

 

 →つづき 

 

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