主翼

プロペラも翼の一種ではあるのですが、プロペラが発生しているのは、前に進む力です。
空に浮かび上がる力は、主翼が生み出してます。

ジェットエンジンくらい強力なものは、特に音速以上で飛んでる時は、安定板さえつけてやれば、推進力だけで飛べないこともないのですが(だからこそ、下に向ければ垂直離着陸もできる)、普通は、主翼の角度や形が空気の流れをひっかけることによって、空気の上にのっかって浮いていられるわけです、「吸い上げられている」と言ったほうが正確なんですが。

ヘリコプターは、プロペラではなく主翼が回転しております。

 主翼の数

主翼は、左右両翼あったり、パラソル翼の一枚物だったりするので、主翼の数え方は「何段あるか」です。
これは、「
同じくらいの大きさの主翼が何段重ね」ということです。単位は葉。

なんで主翼をたくさんにしたかというと、エンジンが非力だったからです。
主翼を大きくしないと飛ぶことができず、かといって大きいと付け根の強度がとれず、無理に頑丈にすればそれこそ重くて飛べないので、数に頼ったわけです。

単葉機をモノプレイン、複葉機をバイプレイン、三葉機をトライプレインといいます。
これはギリシャ・ローマ系の数え方で、一輪車とか双眼鏡とか三脚とかは、この数え方になってます。

主翼4枚以上は多葉機(マルチプレイン)と総称するのが一般的です。
四葉機をクアドラプレインと言うことはありますが、五葉機をクイントプレインと言わないのは、このへん以上はもう実例もあんまりないし実用性もまったくないからです。

遅く飛ぶものほど主翼の面積が必要になる、
逆に言うと、速く飛べるんだったら単葉でいいし、また、そのほうが空気抵抗がないのでますます速くなる。
また、翼の形状も研究されたので、遅く飛ぶにしても、単葉で複葉以上の効果が得られるようになりました。

 タンデム翼、潜望鏡翼、前翼、三翼、車軸翼

主翼を上下に重ねると干渉があって効率悪いので、スタッガー(食い違い。前後にずらして)配置することはよくあります。
普通は下翼ほど後ろにつけるけれども、上方視界の確保などの理由で、下翼が上翼より前にある「逆の食い違い複葉」というのもある。
しかし、あんまり前後に離れていて「重なっていない」のは、タンデム翼という形式です。クシャナ殿下の国で使ってたようなやつ。効率はよくない。

タンデム翼の前後の間をシャッターにして、広げてふさいだり、たたんで開けたりできるのが、潜望鏡翼。これもスターリンの頃にソ連がやって失敗だったんですけど。

「揚力を発生する小翼を、主翼の前につける(見た目は、水平尾翼が主翼の前にある格好だが、水平尾翼も主翼の機能として使っている)」というのは、前翼(カナード、エンテ式、先尾翼)という形式です。
翼端で空気がめくれ上がって余計な渦が発生するのを、干渉させて打ち消し合い、失速を遅らせ揚力を増やし舵の効きを良くするというもの。

「水平尾翼とは別に、水平尾翼のようなものを主翼の前につけている(前翼なのに、普通の水平尾翼もある)」というのは、三翼(三面翼)という形式です。
大昔はデルタ翼でも尾翼が必要だったりして、安定に苦労した飛行機が多かった。

これらは、主翼の役目をやってるものが2枚あっても、複葉機とは言いません。

また、大昔の固定脚の、車輪と車輪の間を、合板製の短い翼にしたものがよくありましたが、これは複葉半とか三翼半とは言いません。

 支柱

主翼を何枚も重ねる場合は、補強のために、主翼間に支柱が立つのが一般的です。
N字、星形、V字、I字などがあります。

まったくないものもあります。
なくても強度は問題なくても、軍の上層部やパイロットが不安がるので、形ばかりのものをつけることもあります。

現在の民間小型機だと、単葉でも斜めの支柱で下から主翼を支えていることがあります。

 張線

張線は各部を引っ張り合っているワイヤーです。主に、翼端にかかる負担を分散するためにつけます。
がっちり組むとポキッと折れるので、ある程度はたわむように作ってあるからです。

じつは、この張線こそが、複葉機をやめて片持ち単葉に移行していく大きな理由のひとつです。
こんな細いハリガネみたいなものは、それほど空気抵抗にならないだろう、と思うでしょうが、じつは、そのワイヤーの太さの10倍の厚みの主翼と同じ
空気抵抗があるんです。
しかも、主翼と違って、機体を空に浮かび上げる仕事をしていない、まったくの抵抗にしかなってない。炭素鋼なので重量もバカになりません。

 

 複葉

主翼が2段でも3段でも、単葉以前のクラシックな飛行機を複葉機と総称することもありますが(2に限らず複数の意)、狭義には、「主翼が2段重ねになっている飛行機」が複葉機です。
最初に飛んだ飛行機もコレでしたが、複葉機の技術はおおむねフランスのヴォアザンの技術がベースになってます。

翼面積がかせげるので横幅と格納庫が狭くてすむ、非力なエンジンでも旋回と上昇の性能が高い、短距離で離着陸できる、低く遅く飛ぶのが得意、年寄りが使い慣れているなどの利点もあり、今でも農薬撒布や曲芸飛行の人たちはよく使ってます。

 折りたたみ複葉

複葉機の下翼をたたんで、単葉機としても使える、というのが試作されたこともありました。ソ連がやったんですが。
下翼を山折りにして、根元は胴体に、先端は上翼に密着させて、なんちゃって単葉になって速度を出し、格闘や離着陸では複葉にもなれる、というもの。

こんな機構をつけるだけ余分な重量というか、たいして効果もないので量産はされませんでした。

 三葉

主翼が3段重ねということです。
当然、複葉機よりも空気抵抗があって遅くなるけれども、上昇力では一枚うわ手。
飛行機が発明されたばかりの頃、複葉半なんてのもあったし、三葉もフランスのグーピが早くからやってますが、大流行したのは第一次世界大戦の時。
英国が使ってたのがあまりにも天下無敵で、どうかすると
複葉機よりも優秀なんじゃないかと思って、ドイツがマネして作りまくりました。当時は、速度よりも小回りで戦っていたからです。
もう少し飛行機が速くなると、すぐにすたれました。

主翼がたくさんあるほど旧式というわけではない、ということです。
軍隊っていうのは保守的でもあり、すでに単葉を作れるようになっても、複葉を採用したりしました。特にイタリア。
日本でも、太平洋戦争中に複葉機の新作しかも傑作がありました。
ポーランドには、ジェット機の複葉機というのもありました。

 多葉

四葉機は、作ったことは作ったんですが、使い物にならなかった。
飛行艇で主翼9枚(三葉を前後に3つ並べた)というのを作って、初飛行で一瞬で墜落したことがありました。
こまかい翼200枚というのもありました。

 一葉半

一葉半機は、セスクウィプレインの訳語です。
複葉機の下翼が上翼に比べていちじるしく小さいことです。
ちょっと小さめ、ひとまわり小ぶりという程度であれば、普通の複葉機もたいていそうです。
一葉半は、複葉機と単葉機の過渡期によくありました。
戦闘機としてはすぐ旧式になってしまい、地上攻撃機として使われることが多かったですが、下方視界を確保しつつ、地上から直接は撃たれない(下翼が弾よけになる)という意外な利点がありました。

 単葉

単葉機っていうのは、じつは大昔からあって、1909年にブレリオ機が英仏海峡を越えたりしてるんですが、しばらくは複葉機の時代でした。
主翼が何枚もあると、主翼も支柱も張線も空気抵抗になるし、視界も悪いので、
エンジンの性能が上がると単葉機になっていきます。

単葉でも、最初のうちは、ワイヤーで翼を吊ったりしました。
これが、つけ根だけで保持する本当の一枚になります。橋の構造と同じく、片持ちとかカンチレバーと呼ばれます。
片持ち単葉でも胴体の上にワイヤーみたいなのを張ってありますが、あれは短波などの無線アンテナです。

単葉だと、振動やねじれの問題があるので、強度をとるために複葉よりも翼が厚くなってしまいますが、中に燃料や車輪や機銃を搭載でき、エンジンもどんどん強力になり、翼断面の形も研究されて、厚みの空気抵抗はあまり問題にならなくなっていきます。

じつは、ある程度は主翼が厚いほうが、空気の流れが効率いい。
子ども番組の巨大ロボットが背中につけてる折りたたみの板では、薄くて平らで、とうてい飛べません。

 

 →つづき 

 

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