試合、演武、審査

「上げ上げ」
打とうという気持ちばかり前に出過ぎて、手元が上がって肝臓ばかり打たれたり、右手ばかり引いて竹刀を振りかぶったり、うわついた状態の者に、「上げ上げ〜(になっていますよの意)」と言ったり、お手上げという感じに万歳のしぐさで示して注意をうながす。
元気良くいこうという意味の若者言葉に「テンションを上げる」「上げ上げ(で行く)」などという言い方があるのが語源。
武術では、気迫を強くすることはあっても感情を激しくするのは逆効果。リー老師が映画の中で、気合を入れるのと怒りをこめるのは違うというようなことを言って、弟子の頭をパカスカ叩いている。ある種の冷静さがなくては、全体が見えず、自分をコントロールできず、技も遅くなる。

「足切り」
一定以下の成績の者を、試験途中で失格にすること。
試合では、予選や一回戦の敗退の意で使われる。一説には、経費(おアシ)削減の意も込めてあるという。

「遊んであげた」
手ひどい敗北を、軽いかのように、うそぶいた言い方。
株の世界では「かろうじて致命傷で済んだ」、競馬だと「バス代を残して全滅」(普通、最寄駅から競馬場への送迎バスは無料。笑)というような言い方がある。

「アチャコでごじゃりまする」「あじゃパー」
惨敗。関西のお笑いに由来。
似たようなものに、八方達磨返し(敵が手も足も出ないの意)という殺陣の技がある。

「姉のほうからせにゃならぬ」
出番でも自己紹介でも、年長者が先にやって手本を示すこと。
この言い方はもともと卑猥な数え歌の一節であり、姉妹は妹のほうが美人という説、そうでなくても単純に若いほうがかわいく見えるもので、うまいものを先に食べてしまうとまずいものが食べられなくなるというようなことを意味している。
まず下位の者が小手調べ(負けても恥にならない。荒ごなしでもある)、相手があまり強いようだったら上位者は試合をしないで名誉を守る、というようなことが古来あった。
道場破りに対し、本人は外出中といつわって、弟だと名乗って立ち会い、弟でこんなに強いのなら兄はさぞかし…と相手が恐れ入ったという例がある。

「あの・・・ウッフッフ・・・まあ、これぐらいにしときますけども」
今日はこのくらいにしといてやろか、の現在の言い回し(共産党関係者が武術の席で使ったのを見たことがある)。
公務員は国に就職して税金から給料をもらっているため、民間企業の社歌にあたるものは国歌であるから、大阪市の教員は式典で国歌の起立斉唱が義務付けられたのだが、インタビューした女性レポーター(ネット上では、毎日放送MBSテレビの斉加尚代ディレクターとされている)が、子どもたちに国歌を強要していると勘違いして橋本市長に食ってかかり、どれほど不勉強で頓珍漢であるか丁寧に叱ってもらっても30分間も納得せず、最後に言い放った勝利宣言の捨て台詞が、これ。
確かに、この時はこれぐらいにしておいてやったのであり、このあと毎日系のテレビや新聞では、まるで橋本市長のほうが悪かったかのように報道した。
このことはネット上で祭になったが、その際にも、これぐらいにしときますけどもと言い添えることがおこなわれた。

「いい仕事してますねー」
残念な結果に終わって落ち込んでいる選手に、なるべく長所を見つけて、なぐさめてあげている指導者に対して、他の指導者が、御苦労さんです(笑)という意味で言う。
こういうことは、具体的に言うと野暮だからである。テレビ番組の骨董鑑定に由来。

「イケます」「ダメです」
準決勝に勝って、息が乱れたまま決勝戦をすぐ始めなければならない場合、審判が「イケるか?ダメか?(少し休憩するか?)」と聞いてくる。
この時、「イケます」と言ってすぐ続けると、負けた場合「ちっともイケてなかったじゃないか」「イっちゃったか」と言われる。
「ダメです」と言って休憩をとると、たいてい試合予定時間は押していることが多いため、勝っても負けても「そんなことじゃダメです」と言われる。

「一中」「二中」
弓道で当たりを1中2中と数える。公立中学校が複数あって、第一中学、第二中学などという名前だと、「1中だけに(4射したうち、たったの)1中だった」、というような言い方をする。

「芋掘り」「芋を掘る」
酔って暴れ、物に当たりちらすこと。
もともと旧日本軍で、死の恐怖に耐えられず深酒に逃避することをさしたもので、特攻出撃前におこなった例を聞く。
武術ではたいてい試合後に騒動になる。中途半端に抑制していたがゆえに、一気に出る。かなり上級者でもバカをやっている例を見かける。

「いわす」
参りましたと言わせるの意。相手をやりこめること。

「兎返し」「鍋蓋」「6拍子」
奇襲をかわして勝つこと。
礼法の途中、蹲踞から立つ途中、審判が手を引く途中、構えをとる前などに、攻撃を開始したとしても反則にあたらない場合もあるが、卑怯ではある。
しかし練習量さえあれば、気をぬいていても体が勝手に対応してカウンターがとれるもので、卑怯に負けるのは卑怯より恥とされている。

 

 

「薄い・濃い」
前足に体重をかけず、上半身を後ろにそらすことは、一時的にはあるが、ずっとそうしている戦いぶりを、あいつは薄い(根性や闘志が)などという。
総合格闘技で外人選手がひとりだけ混じっていたりすると、しばしば、こうなっている。
この逆を、濃いという。
一説には、アメリカ空手が打撃を避けることに重点をおくことを、アメリカンコーヒーにたとえたのだという。

「討ち死に」
結果がまずいことを自虐的に報告する言い方。
「あえなく討ち死に」という言い方が多い。審査でよく言う。

「打ち止め」
蹴りが股間に入って試合が中断すること。よくある。打ち止めたのは、玉である。

「え、只今の協議について、御説明いたします」
かすれ声で言う。試合が中断している時に、指導者が初心者に、状況を説明する時に言う。貴乃花親方の物真似をするイジリー岡田さんの物真似である。

「営業」「巡業」「開拓」「あいさつ運動」
空手大会の前座で中国拳法を演武したり、剣道大会の前座で居合を演武したりすること。
あいさつ運動は本来、選挙の無党派層の取り込みをさす言葉。

「悦に入る」「ほほえみ返し」
弱い選手が、たまたま1ポイントを先取し、うれしさを隠しきれなくて、ニヤニヤしながら戦うこと。
しかも結局、勝つことが多い。
相手選手から見れば、自分のほうが圧倒的に強い、うっかりしていただけだ、偶然入った技なのにヌカ喜びやがって、しかし1本取られたのは事実、ふがいない自分自身にも腹が立ち、それを笑われているかのようで、ペースを乱されてしまう。

※まろん♪さんから、「正しい日本語では、『悦に浸る』という。言葉のプロである声優たちもみんなそう言っている」との御指摘を頂きましたが、悦に浸るという言い方は聞いたことがありません。手元の辞書にも載っていないようです。

「エム・シー」
確実に勝てる試合、またはその相手選手。
エムケーと呼ぶ人もいるが、正しくはエムシー。諜報用語だという。
カモネギ。勝ちを読める、数を取れるなどという言い方もある。ヤクザ用語ではヒンガモ、相撲用語では手が合う、賭博用語では鉄板(堅いの意)などと言う。

「遠慮負け」
お行儀よすぎて勝ちを失うこと。
試合をするからには本気で攻めないことこそ失礼なのだが、へんな遠慮があって手加減したり、卑屈で消極的で、「教育的指導」でポイント負けする者がある。要するに小心者で自信がないのである。
敵が戦闘準備を終えるまで攻撃しなかった宋の襄王、攻撃されるまで攻撃しなかったクレシー戦のフランス軍など、みな惨敗している。

「大前」
弓道団体戦で最初の人。大前だ(大前田というヤクザの大物)、大前ダーリン(洋楽の歌詞)などがネタにされる。

「お願いの構え」
グローブ・防具なしのフルコンで、顔面なしのルールに慣れてしまうと、顔を守らない癖がついてしまう。構えてみればわかる。これが、「顔は打たないでネ」と言っているように見えることから。

「オールブラックス」
黒星の意。試合に勝てない人。いわゆる、出ちゃ負け。
同名の強剛チームにかけている言い方なので、自虐的に使っている例しか見かけない。
ただし弓道では、当たりを●、ハズレを○と書く。

「お米券」「仕置料」
選手に出る副賞の図書券やクオカード、審判や呼出に出る手当、来賓に出る御車代など。

「落」
オチ。弓道団体戦5人の最後の人。ほかの4人が失敗したり大マグレをやるのが全部見えてしまい、それでも動揺せずに安定した成績を出し続け、乱れた仲間の気持ちを回復させ、ペースを保つという重要な役目があるため、落語のオチと意味がだいぶ似ている。

「女連れ」
試合場に彼女を連れてくること。
フリーの選手はスタッフが足りず、奥さんがかいがいしく世話をすることがある。
負けると、試合に負けたんじゃない、前夜の疲れに負けたのだなどと笑われ、勝てば、今夜は2回戦だなどと言われる。

 

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