新兵教育

初めて軍隊に入ったら、まず、新人教育の隊にひとまず入るわけです。
これは配属じゃなくて、配属の前の準備訓練。

自衛隊では、下っぱは3〜5か月、士官になる人は5〜12か月くらいかけて、「基礎教育」というのをやります。

 

 基礎訓練

前期と呼ばれる最初の約3か月間。
分隊教練と、戦闘訓練です。

これは基礎の基礎なので、炊事兵だろうが事務員だろうが軍医だろうが、軍隊にいる人なら、みんなやります。
匍匐もできないのに戦場にいると、ただで死んでしまうからです。

これ習ってる間は、外出が一切許可されない。
基地にカンヅメになって集中する。警察学校でもそう。

どんなにむいていない人でも使い物になるように、カリキュラムを組んである。
それでも、まったくどうしようもない人は、この段階でやめます。
この段階を耐えた人は、せっかくおぼえたんだし、いろいろ不満はあっても、なんだかんだ任期1期は続けることになる。

 

 分隊教練

まず礼式、声の出し方、体の動し方です。

発言や返事は、とにかく大声でなければ、何回でもやりなおし。
気合とか勇気とかの問題もですが、戦場では大声で言わないと聞こえないので。

動作は、気をつけ、休め、直れ、右向け右、なかば右向け右、回れ右、かしら右、前へ進め、駆足進め、速足進め、止まれ、歩調を取れ、歩調やめ、など。

軍隊ってのはマニュアル主義だから、1歩75センチで1分間に114歩とか、一応は決まっている。
統一されてるってことが大切なので。

よくニュース映像や映画でやってますが、共産圏では派手に手足を振って行進したり、ナチスドイツは独特でかっこよかったり、国によって、また、陸軍か海軍か、近衛兵かなどによって、多少違いがあります。
気をつけのとき、旧日本軍やナチスや米海兵隊は指を伸ばしますが、自衛隊や米陸軍やロシア軍ではグーにするとか、どちらが良いかではなくて、そう決まっているからには、その組織の中ではそれで統一する。

トロい奴、ものおぼえの悪い奴は、間違えるたびに殴られて、やりなおしさせられて、体でおぼえていく。

決まり事をおぼえるのは、歳くってからでは難しい。
どん臭いジジイは、ただの足手まといになる。そのかわり、若いうちにおぼえたことは、なかなか忘れない。
体力だけではなくて、この点でも、やはり軍隊は若い人のほうがいいということです。

 

 ロボット化
考えるんじゃなくて、ただ決められたとおりに動く、個性のないロボットに洗脳して(軍隊では、洗脳のことを涵養と言う。「娑婆ッ気を抜く」とも言う)、人格を作り直すわけです。

考えるのは上層部の年寄りどもの仕事。
下っぱは、脳ではなくて手足です。
考えなくていい、余計な親切や工夫もしなくていいから、命令に絶対服従し、言われたこと「だけ」、完璧にこなす。
4か月目くらいに、その検査があります。

 

 2〜3日?

うちの父が言うには、敬礼とか回れ右なんてのは最初の2〜3日でたくさんだ、今の軍隊はほかにやることないからそんなことばっかりやってるのかもしれないが、およそ日本男児がひとたび威儀を正したら、小学生でも応援団みたいな立居振舞ができないわけがない、おぼえようという熱意と敬おうという真心の切実さの問題であるから、惰性で動作だけおぼえたって腰抜けしか育たない、そんなことより走り込みと匍匐だ、とのことです。

戦前の男たちは、普通に立ってるだけでもビシッと背筋が延びてたものらしくて、今のほうが教育は難しいんじゃないでしょうか。
渋谷で座り込んで、ってかブッチャケかったりィとか言ってるようなのを自衛官に育てていくわけだから。
もう精神主義は流行らないですからねえ。

 

 

 号令

ミスタービーンが基地祭に行く回でネタにされていましたが、どこの国でも、軍隊の号令っていうのは、やたら大声で叫ぶが何を言ってるのか全然わからないものなんです。
爆弾と銃声でやかましい戦場では、どうせ聞こえないんですが。

アテェ〜〜〜〜〜〜〜〜ショッ!とか、ハン〜〜〜〜〜〜〜〜サルッ!と号令がかかったら、じつはアテンション(気をつけ)、ハンドサルート(敬礼)と言ってるんで、「〜〜〜〜〜〜」のあいだに準備しておいて、だあっ!と来たら間髪入れずにザッ!と靴音を立てて一斉に動作をやる。

父の時は、きょォ〜〜〜〜〜つケッ!、中隊長殿にィ〜〜〜〜〜クェレッ!という、裏返ったカン高い声でやってたそうです。
警察でも似たようなものだったという。

しかし、整列させられて待機してて、偉い人が入室してきたら、ドワァ〜〜〜〜クヘッ!でも、ウヒャァ〜〜〜〜ッテイ!でも、この状況では起立と気をつけを要求されてるだろうな、そのあと偉い人が教壇についたら敬礼、それに答礼があれば直れ、スピーチが始まる前には休めがかかるだろうなということは、なんとなくわかる。何度もやってるんだから。

 

 戦闘訓練

小銃、銃剣術、匍匐前進などです。

小銃といっても、射撃はしない。
この段階では、実弾なんか使わせてもらえなくて、ただ取り回しをおぼえるだけ。

自衛隊に行った人がみんな言う話ですが、口で「バーン!」と言って、撃ったことにする。
自衛隊の場合、新人じゃなくなってからも、「バーン!」らしいのですが。

米軍ではオモチャの銃でオモチャの弾を撃ったり、本物の銃で空砲を撃ったり、本物の拳銃を撃てないように改造して真っ赤に塗ったのをずっと手元に置いて(ベッドにも持ち込む)、手になじませたりする。

 

 専門職種

基礎訓練が終わった人は、今後どこへ配属されるかが決まります。
もっと後になってからも、転向したりさせられたりはあるんですが。

適性を見たり、本人の希望も一応は聞きますが、どこの部隊が人手不足かということが一番優先される。

普通は歩兵。
頭数が必要だし、すぐ死ぬからです。

戦車は、かっこいいし、歩かなくてよさそうなので人気があるけれども、旧ソ連など一部の国以外は、たいてい戦車は不足してるから、乗れる人は少ない。
よくて装甲車、普通は輸送トラック程度。

特殊部隊や軍楽や近衛や儀仗は、かっこいいけどエリートすぎて難しい。

整備や航空は技術屋だから、勉強が大変。
そもそも頭がいい人は、軍隊なんか選ばない(笑) いい学校を出て一流企業に入ってるはず。

工兵や輸送は、地味だったり、軟弱に見られたりするから、昔は嫌われましたが、自衛隊の場合、タダで簡単に免許や資格が取れるから、希望者が多いという。
自衛隊を一生やる気はなくて、土木建設、大型や牽引の運輸など、民間に転向する前提。

経理や需品や通信は、冷暖房の効いた後方にいられるとか、戦争で物資が不足しても自分たちを優先できるとか、女性と一緒に働けるとかで、一部に熱烈な人気がある。
通信は、大昔は中隊に4人しかいなくて、ものすごく優秀な人だけがやりました。

人気がないのは、地味な迫撃砲、どうせ役に立たない対空砲など。
重砲は、事故がある、重労働、時代遅れ、戦死しやすいなどの理由で、落ちこぼれのたまり場になってることもある。

憲兵や法務は、特にひどいイジメにあったり出世しそびれたりした人が、いばりたくてやることがあるけれど、このへんは上等兵くらいになってからじゃないとなれない。

 

 専門職種訓練

自分の分野が決まったら、その専門分野の訓練。
新兵教育の、後期と呼ばれるもの。これもだいたい3か月。
これが終わったら、配属されて、二等兵です。

 

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