徴兵検査

旧日本軍の場合、だいたい小学校の校庭と体育館でおこなわれました。
徴兵は軍隊ではなく自治体の管轄、戸籍の分野だからです。

市区町村の役所から案内が送られてくるから、出頭する。
普通は本籍地の連隊区ですが、そうでもない場合もある。
ヒトラーも徴兵をのがれようと逃げ回って、つかまって、なんか違う場所で徴兵検査を受けて、栄養失調で不合格でした。あの人はその後、志願で入ったんで。

身体検査をするのは軍医。軍隊の人事の人のほか、会場には憲兵が来ている。
その地域の在郷軍人や、民間の準軍事組織などが、事務やお茶汲みを担当。「徴兵慰労会」「徴兵義会」「尚武会」「帝国在郷軍人会」というような組織があって、軍隊経験者たちが、地域の青少年に、基礎的な軍事訓練をすでにすませている場合がある。
社会的に偉い親や、すでに兵役を済ませた兄なんかがつきそいでくっついてきて、徴兵検査の係員にそれとなく圧力をかけたりもするという。

これらは地域差がものすごくあって、大都市と辺境、内地と植民地では、まちまちだという。

身体検査自体は、志願兵でもやります。軍隊の学校の入試にもある。
50メートルを何秒とか、反復横飛びとか、そういうことじゃないってところに注意。それは、入隊してから鍛えるものなんです。
特殊部隊だったら体力検査もやりますが、なんにしても、まず普通の兵士になることから。

 

 学科

最初に、軽い筆記試験。
米軍の場合、100点満点中10点取れば合格。どうりで米軍は頭が悪いわけだ。

ひとつには、読み書きができるかどうか確認するため。
自動車教習所で初日に漢字のフリガナをやるように、意味が通じる人かどうかを見るわけです。
国によっては、文盲の人や、母国語が異なる人というのが相当いるので。

もうひとつは、思想的にまずい奴をハネるため。
国防に対する意識調査です。
旧日本軍では、天皇制や軍国主義に関する問題が出て、もちろん右寄りな模範回答的なことを書いたのだという。

これの試験官は軍人ではなく、その会場になってる小学校の先生。
校長みずからやることもよくあったという。

日本の場合、文部省が国民の学力を知りたいという理由もあったので、この機会についでにデータを集計したので、わりと本気でテストをやってたようです。

 

 精神的な病気等

点呼と学科だけで午前中は終ってしまい、昼食になる。
体を診るのは午後から。

丸一日拘束して、試験官がどなりつけるのは、これで様子を見ているということです。
慢性の下痢や貧血、発作やひきつけを起こすもの(不安発作、ストレス性睡眠、てんかん)などは不合格。

 

 身体測定

発育状況です。身長体重など計る。

胸囲が重視され、身長に対して一定以上の胸囲がない者は、うらなりカボチャとか、青瓢箪などと言われて、不合格になる。

身長は、なければないで、いいんです。
戦車や潜水艦や特殊部隊では、小柄な人が好まれることがある。

体重も重視されますが、あんまり極端に肥満でも失格になる。自衛隊もそうです。
米軍の場合、体脂肪が、17〜20歳で男性24%女性30%、21〜27歳で男性26%女性32%、これを超えたら不合格。

徴兵をのがれたくて、指を切断した人もいたという(特に、右手人差指。引金が引けない)。

頭髪は、この日までに丸坊主にしておく。
していない者は、ものすごく怒られて、頭の中央だけバリカンで刈られる(モヒカンの逆)。

裸にさせるのは、見た目にわかる病気もチェックしている。感染症、ヘルペスなどは不合格。

 

 視聴覚検査

まず視力。
徴兵をのがれたい人は、見えても見えないフリをしたり、徹夜したり刺激物を入れたりして充血させたり、太陽を見たり度の強いメガネをかけて本当に目を悪くしたりしたという。
夜盲症、色覚異常などは、視力以前に不合格。

次に聴力。
試験官が小声で言ったことを聞き取って復唱する。復唱させるのは、しゃべり方も診ている。吃音は不合格。
耳の内部も検診する。
耳に豆を入れたり、鼓膜に鳥の羽を付けたり、刺激物を摂取して耳鳴りを起こしたりして、障害に見せかけて徴兵をのがれようとする手口があったという。

旧日本軍では、咽喉も診たそうです。
わざと歯を抜いて徴兵をのがれようとする人がいたという。
米軍では、「リテイナー以外のブレースなどの歯科矯正器具の使用」は不合格。ブレースというのは、歯並びの悪い人が歯の表面につけているワイヤーのやつです。これがあると、要するに、口の中が切れてしまうので殴れない。

近眼、乱視、色弱、難聴などは、命令が満足に伝わらないから、熱意があっても採用されにくい。偵察機や通信などは部隊の目や耳だから、感覚が悪い人ではどうしようもありません。
しかし、なまじ視力がいいと目にたよってしまい、目に見えないものを感じ取る能力が甘くなる。俺も視力はかなりいいほうですが、手触り、香り、記憶、人の心などは、近眼の人の微妙な感覚にはとうていかなわない。健常者が、点字にさわって、どこが出っ張っているかなんて、わかんないですからね。
軍隊でも、ソナー係はどん臭い人がやっていたり、狙撃手はナイーヴな人がやっていたり、何かで飛び抜けているということは、かえって、なにかが遮断されてることがある。俺の師も、耳がほとんど聞こえませんが、気配を感じることに関しては異様にすぐれてます。
ただ、統一するというくらいの意味で、軍隊では一応の基準を設けてるわけです。戸隠流の先代も、戦時中は中国で秘密工作員のようなことをしてたらしいんですが、他流試合で片側の鼓膜が破れていたので、徴兵検査には落第だったという。

 

 

 血圧、血液、尿検査、レントゲン

旧日本軍では、血圧だけだったようです。

今の軍隊だと、採血もして、血液型(この時点まで自分の血液型がわからない人もいる)や、感染する病気も診るらしい。尿検査も。
肝炎、糖尿病などは不合格。

設備があればレントゲンもやるんですが、レントゲン車がない時代の小学校ではしょうがないので、入隊してから軍隊の病院でやる。
昔は結核で亡くなる人が多かったので。

喘息も不合格。ヴェトナム戦争の時は、ホコリを吸い込んで喘息に見せかける手口があったという。

 

 痔検

立ったまま手をつかせて、尻を高く差し出させ、ガラスの棒を肛門につっこむ。

父が見かけた例では、痔を隠そうとする者がいて、試験官が話しかけて、何か大きな声で返事をさせていた、こうすると肛門を締めていられなくなるものらしい、ということでした。

徴兵をのがれようとする人は、肛門に漆をぬって、痔に見せかけたという。

ガラスの棒は、自衛隊でもそうしてるそうです。

警察でも、採用時に肛門は見るそうです。
警察の場合、全裸にさせるのは、どんな小さな刺青も見のがさないためでもあるという。
米軍でさえ、あまりにも不適切な刺青は失格になります(顔にある場合など)。

 

 M検

性病検査です。なぜか父の時はなかったそうですが、召集で入った人は、みんなやったと言ってる。

具体的には、持ち上げて裏を見て、根元からしごいてみて、膿みが出たり痛みがあるかを見る。

皮の手術も、軍隊で面倒みてやることもある。

軍人さんは現地人の売春婦から梅毒や淋病をもらったりするから、キリがないんですけど、とにかく入隊前にチェックする。

女性兵士はどういう検査をしているのか謎ですが、うつるものだから、女性も必ずやるはずです。

 

 内科検査

ようやく軍医様にお会いして、聴診器と打診と問診。

検査の直前にしょっぱいものを大量に摂取して、心拍数を異常に見せかけて、徴兵をのがれる手がありました。
醤油を飲むなんてことがおこなわれていた。

また、事前に絶食して、ひよわに見せる手口もあったという。米軍では摂食障害は不合格。

問診というのは、面接みたいなことも含む。
米軍の場合、精神病、自殺願望、露出症、窃視症(のぞき趣味)、麻薬依存症、「法執行機関との頻繁な衝突」などは不合格。

日本では、6年以上の懲役か禁固をくらったことがある人は、徴兵されませんでした。バカすぎて使いものにならないうえに、そんなの仲間に入れると迷惑するからです。

一説には、米軍ではホモも失格らしいですが、それにしちゃあ、みんな男色やってるよなあ。

戦国武将の名前によく似ているが末裔か、というようなことを聞かれ、はいそうですということになると、ちょっと特別扱いされたりするという。

 

 等級

というようなことで、甲種、乙1種、乙2種、丙種などと分けられます。

失格したら兵役をまぬがれてラッキーかというと、日本の場合、お国の役に立てない奴、だらしない奴、男とは言えない奴として、社会的に非難されたり恥になりました。乙2や丙では、世間に笑われた。

昔の軍隊では、何の成績でも甲乙丙丁…という分け方です。
これらは文字の見た目から、電信柱、アヒル、鞄、トンカチという言い方があった。
トンカチは不合格だから、試験に落第して殴られるという意味もかけてたらしい。

実際は、もっとこまかく分けているもので、国によって、それをあからさまにやってる場合と、制度上にはないが暗黙の了解で(将軍の息子さんだとかなんとか)秘密裏にやってる場合がある。

徴兵制があった頃の米軍では、I-Aというのが合格で、1-2とかIV-Dとか、なんかこまかく分けてたらしいです。

 

 希望

等級を言い渡されるので、復唱する。

ここで試験官が、「なにか言うことはないか」と言うのが、しきたりになってるようです。
それで、登山が趣味とか、乗馬に自信ありとか、自分の特性を言うと、なるべくそれにふさわしい部署に配属してくれるように、この時点で決まるという。
今の軍隊はそんなの相手にしてたら成り立ちませんが、徴兵制は頭数がいるので、そんな希望も通りやすいらしくて。

最後に、この会場の最高責任者のお話を全員で聞いて、解散です。
名簿ができたわけです。あとは自宅待機。
次に呼び出される時は、指定された部隊へ出頭、入営です。

 

 女郎買い

日本の場合、徴兵検査までは童貞を守り、徴兵検査が終わってから売春婦を買いに行くというのが、ほとんど慣例になってました。

徴兵検査で性病が見つかって不合格になると、「性欲のために国家を捨てた奴」として、とても怒られるので、不合格にしてもなにかほかの原因でなければ社会的にまずかったのだという。

 

 兵役のがれの発覚と処罰

アメリカでは、ヴェトナム戦争の時、209517人が兵役のがれを告発され、うち4千人が刑務所に入れられたそうです。
こんなことで牢屋に入ったなんて、人として、かっこいいですけどね、死ななくてすむし。

 

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