軍事力

 戦略、戦術、戦技、戦域

戦略というのは、戦争全体の、というより、個々の戦争自体よりも大きな概念です。
いつどこと何のために戦争するのか、費用と資源の確保、食糧や装備の開発と量産、兵の育成、戦場までの輸送、同盟や経済措置などの外交、戦時における特別な行政や司法、情報や世論の操作や弾圧など。
戦術を含むとも言えるし、戦術をおこなうための準備や整備や方針とも言える。
国家、軍事、戦時(作戦)など、それぞれの規模で戦略があります。
孫子やクラウゼヴィッツも言ってるように、戦闘はたくさんある手段のうちのひとつにすぎないから、戦わずに勝てれば、それにこしたことはありません。

戦術は、その戦場で軍事力をどう運用展開するかということ。指揮とか作戦。

戦技は、戦術の技術。戦闘の具体的なノウハウです。

たとえば核兵器なら、敵国の都市までミサイルが飛んでいって民間人まで皆殺しにするとか、それで脅しをかけるのが戦略核。
その戦場の敵兵力だけ、艦隊や要塞などを消すのが戦術核。
飛行機から原爆を落とすにはどう飛行すればいいかというようなことが戦技。

戦域は、いろいろな意味で使われる言葉ですが、たとえば、よその国同士の戦争に干渉するような作戦のことです。
戦域核と言った場合は、飛距離が戦略と戦術の中間という程度の意味。

これらをまとめて、兵法とか軍学とかいいます。
大軍隊の戦争だけでなく、一対一の個人的な武術も兵法といい、大の兵法、小の兵法と区別しますが、武蔵先生などは、小に熟練すれば、そのノウハウが大にそのまま応用できると言ってます。
要するに、まず人間。優秀な戦争指導者がいないと、勝てる勝負も勝てなくなる。

 

 軍事力

軍事力は、戦力や兵力の意味で使われる言葉。

 

 武力

武力は戦闘能力。戦術規模でも言う。
軍事で言う場合は、警察など国内で行使する戦闘力は含まない。
今の日本は、自衛官を減らして警官を増やす方向なので、警察官のほうが多くなってます。

 

 戦力、体力

戦力は、戦略規模の戦闘力。
特に、戦争を継続できる国力を前提にした言い方であり、経済、産業、開発、人的物的資源などが含まれる。

ドイツからフランスを攻める場合、要塞は手強いかもしれないが、ベルギー経由で突破してしまえば、すぐにパリを押さえられる、しかしロシアを攻めに行くのは、モスクワまでがダラダラ遠いし、とにかく寒いので、長びいてしまうとこっちが先にバテそうだなあとか、「体力のある国/ない国」というような言い方をすることもある。

 

 兵力

兵力は、戦力のうち軍事面だけ。
特に攻撃力を中心にして言う。あるいはもっと直接的に、兵士の人数や、軍艦とか戦車とか戦闘機の保有数をさす言い方。法的には正規軍のみ。

わが国は、いっぺんアメリカの物量に負けてるから、何を言っても負け犬の遠吠えなんですけど、軍事っていうのは、兵器の保有数だけで決まるような単純なものではないです。
たとえば最新型の戦闘機が何千機もあるからといって、そんな作ったばかりで使い勝手もよくわからないようなもの、実際に使ってみりゃ欠陥だらけかもしれないし、どのくらい故障しにくいか、つまり、実際に稼動させておける数は何割くらいか、あるいは、戦車が故障した時に前線で応急処理しやすいか、いちいち後方に牽引していって修理しなきゃダメか、優秀な整備士は揃っているか、燃費が悪くてちょこちょこ補給する手間がかかったりしないか、搭乗員は実戦を経験してる世代か、弾薬や燃料に互換性があるか、…というような、見えにくい兵力もあります。

 

 

 実力

実力は実力行使とかいう時の実力ですが…。
自民党さんが日本は戦力を持たないと言い、じゃあ自衛隊は何だっ?と聞かれると、実力…???などと言う。いろんな意味で「消極的な軍事力」という意味らしい。

F15という戦闘機は、戦力ではない、だから合憲である、という理屈で日本に導入されました。
F15は模擬戦でF14よりも劣ると判明しているばかりか、空中で機首がもげるという欠陥を知らずに使っていたという戦闘機ではあるのですが、高価なばっかりで戦力にならない物に税金を使いましたって、そのほうがまずいんじゃないの?

 

 工業力

兵器の開発や生産の能力です。
装甲板とそれを破る大砲、故障せず力が強くて燃費のいいエンジン、潜水艦の深度や航空機の速度、スクリューの静粛性、電探や核兵器の開発競争、近頃ではコンピュータ関係まで、どんなに金があっても作れない国は作れない。
また、工業地帯や鉱山や発電所が、占領や破壊の対象になったりもします。

兵器の生産には国民性が出ます。
戦艦大和とかマウス(という名前の巨大戦車)とか、そんなもん作ってるヒマがあったらほかのことをやれい、と思うけれども、作らずにいられない。
また、それ自体は役に立たなくても、その技術がのちのち何かに転用できたり、かっこよくて強そうに見えるという軍隊のイメージ作りだったりする場合がある。

日本は発想が日本刀だから、工芸品のように凝ったものを作りたがり、質で数に勝とうとする。
英国なんかはもっと大人の対応で、機能は平凡でも作りやすく運用しやすく作って、総合力で勝とうとするようなところがある。
アメリカは、やっぱり優秀なものを大量に作る。
ドイツは、とんでもなく画期的なものを生み出す。
ロシアは、荒削りでどんくさいが徹底的に総力を結集して作るから、とび抜けて優秀なものを作ることがある。
チェコやベルギーのように、昔から技術が高くて優秀なものを作っている(けど、すぐ負ける)国もある。
スイスやスウェーデンやイスラエルのように、国情に合わせて独特のものを作ったり。
フランスやイタリアのように、ちょっと変わったものばかり作ったり。
韓国のように、各国のいい所を寄せ集めてパクった優秀なまがい物を作る国もある。

 

 組織力

組織の結束と規模のことです。厳密には軍事力ではないのですが。

軍事の世界では、「全国的な組織は、すでに、その国を制圧している」という原則がある。
農協でも佐川急便でも創価学会でも、全国各地すみずみにまでメンバーが行き渡っていて、県支部、市町村支部、大幹部から部課長クラス末端のヒラまで、統制された指揮系統を形成していて、情報網も施設も資金も持ってるわけですよね。
これが、もし周到に準備しておいて、一気に武装蜂起すれば(しないけど)、国を乗っ取ることも不可能ではない。

たけし軍団が出版社に殴り込むとか、麻原一味がガスをまくとかは、小さい組織だから動くのであって、大所帯ではみんながみんなやらないだろう、赤穂浪士だってだいぶ脱落してるし、由比正雪の時だって密告者が出た、と思うかもしれませんが、それでも実際のところ、これで歴史が動いたこともあって、清教徒とか貿易商とか酒造組合とか、やるぞ!ついてこい!ということになったら、国民の何割かが、おう!と立ち上がるものなんですよね。

ってことは、敵国のそれをけしかけて動かせば、空挺部隊なんか投入しなくても、獅子身中の虫、敵の内部から勝手に崩壊を始めてくれる。
日露戦争の時の共産主義者は、これでした。

軍隊というのは、軍事をやってるから隊であるという以前に、隊だから軍事ができるわけで、組織ありきなんです。

改造拳銃マニアが、全国各地でいっせいに銃の乱射を始めたとしても、それは複数のバカがそれぞれ勝手にやってる個々の事件にすぎなくて、軍隊にならない。
なんなら軍事という手段でなくても、共通の目的のために人々が一致団結して強行手段に出るということのほうが恐ろしいもので、昔、国鉄がよくやってたストライキみたいなもののほうが、はるかに軍隊に近い。

 

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