←もどる 

 

 日本の三才図会

前述のとおり、『三才図会』は中国の百科事典です。
それからだいたい100年くらいたって、日本でも『和漢三才図会』というのが作られました。
編者は寺島良安。

こういう題名になってるくらいだから、内容もおおむね、「三才図会に、〜とある」という書き方ですが、『三才図会』の日本語訳ってわけでもなくて、そもそも、これって漢文で書かれていて(日本人が書いた漢文)、いろんな本からの引用や、編者の考え、日本にしかないモノの説明もたくさん書いてあります。
日本は中国文化のマネばかりではない、日本独自のものだってある、日本人だって百科事典くらい作れるわ、という、『三才図会』に対するライバル意識で書かれてるフシがあって、この時期の日本ではちょうど全国的にそういう雰囲気だったらしいんですよね。

俺が子どもの頃は荒俣博物学がなかったから、洋モノは澁龍、東洋テイストならば真っ先にこの本でした。
この手のものって、一言で言えば、
情報がゆがんでいるところが面白いんです。
実在するものとしないものが、いっしょくたに並べられていたり、実在するものが、似ても似つかないくらいヘンテコだったり。
たとえばヤップ島あたりの石貨の話が、人体に穴があいてる話になっていたり。
そのへんが、人間の智慧とか想像力の可能性を見るようで。
間違いでもなんでも、「当時の人はそういう認識だった」ということは真実なので、何千年たっても古くならない情報であり、ますます価値が高まっていくわけです。

しかし、伝聞推定で描かれた異民族の姿や、空想上の動物の、珍しさを面白がってる分にはいいんだけど、このコンテンツみたいな話をやる時には、よくよく注意しないと使いにくい。

 

 まさか『和漢三才図会』を引用することになるとは

『巻 第三十五 農具類』
この章に、農具のことが書いてあります。

まず、耒耜《からすき》が載っている。
これはソリみたいなやつで、今やってる話には直接関係ないから割愛、あとで別の本を御紹介します。

そして、スキ、クワなど、‘金産’に関係ありそうなものが続くので、そこらへんを引用します。

主旨だけを、ざっと引用したいんですが…。
ここでもまた、「○○とは××である」の××が、どんなものか、その漢字が意味するところは、って話なので、かえって面倒だから全文を見ていただきます。

その前に凡例。

俺が使ってるのは東洋文庫から出てる口語訳(1986)で、島田勇雄、竹島淳夫、樋口元巳各氏によるもの。
この訳者がまたいい人たちで、原文の雰囲気をそこねないよう、意味が伝わりやすいよう、原文の漢字をできるだけ残しつつ、当字のように訳をフリガナとして貼り付けるというやり方をしてくださってます。
それは、ものすごくありがたいんですけど、引用するにはまどろっこしい。
フリガナは、このカッコ《 》に入れて表示させてもらいます。

変換できない文字は、あいかわらず■(なにへんに、なになに)と書きます。

「和名」は日本名。万葉仮名で表記されてます。

『説文』は前述した『説文解字』、最も古い部類の漢字辞典。

『釈名』は、ものの名前のひびき辞典といったところで、音韻で関連を説明するもの。
著者は劉煕、後漢の時代。
この手のものの常として、ゴロ合わせのコジツケも多い。
現代でも、合気は愛気だとか、居合は遺愛だとか、オヤジギャグみたいなこと言って、「してやったり」「我ながらうまいこと言うねどうも」「座布団一枚」みたいな顔でスピーチをする偉い人が、どこの団体にもいますよね、そのたぐい。

『夫木』は藤原長清の私撰和歌集『夫木和歌抄』。
鎌倉後期に、それ以前の歌で他の本に掲載されなかったものを膨大に集めたもの。
このコンテンツには関係ない。

△は、『和漢三才図会』の編者の意見。

 

というような具合になっているということを把握していただいて、次回、まずスキから。

 続く→ 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送