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 四明

たとえば眉間と鼻の間、一番低くなってる部分を「ウト」といって、代表的な急所のひとつです。
ここは頭蓋骨と鼻骨の境目だから、水平チョップかバックハンドを入れてやれば、脳への衝撃、特に視神経へのダメージがあって、一時的にめまいを起こさせるということになっている。
それはそれで正しいんですけど。

本当は秘伝ですが、ペラペラしゃべっちゃう人が多くて最近はバレてるから書きますが、ウトへの攻撃っていうのは、ある意味では、直接、目玉を攻撃して失明させる技なんです。

ウト、漢字で書けば「烏兎」ですが、なんで目玉がカラスとウサギかというと、太陽と月の隠喩なんですよね。
太陽の中には烏(たいてい三本足の)、月の中には兎(と、ヒキガエル)が、居るということになっていて、それが、黒点とクレーター陰影模様の、説明付けになっている。

左は陽だから左目が太陽で烏、右は陰だから右目が月で兎。
つまり、
武術で「太陽と月」とか「両方の明かり」とか言ったら、たいてい眼球のことなんだけれども、危険だから、隠した表現になってるわけです。

日本の剣術では、中段の構えをセイガンと言いますが、正眼、青眼、星眼、晴眼、清眼などと書く。
「なになにセイガン」といって種類がたくさんあって、「なになに」っていうのは真、右、左、平、横、片手、切先、二刀、屠龍、臥龍などで、剣先をノド元に向けてプレッシャーをかけたり、手元に向けて動作に対応したりするのもあるんですが、剣先を目玉に向けることもあって、これによって、こちらの刀を点にしか見えないようにして、距離感をわからなくさせるという意味もある。

剣を握る両手のことを、太陽と月にたとえることもあります。

とにかく、日月は2つセットのものという意識です。

日本の武術のことは関係ないだろ、と思うかもしれませんが、急所は東洋医学なんで、日本の武術でも中国を手本にするんです。
日本のサッカーも、中国文化のパクリである三本足カラスをシンボルにしてますが、サッカーどころか日本の神話自体が外来文化だから。

 

 中国でもやっている(というか、こっちが元ネタ)

「世界を作ったのは、人類以前に存在していた巨人族」という思想が、世界中にあります。
これは当然なんです。
我々は子どもの頃に、たしかに巨人に出会っている。
先に存在していて、この世界を作った巨人たち、つまり「赤ちゃんの視点から見た大人」です。

だから、ウルトラマンとか巨大ロボットとか恐竜とか、大きいものに依存する甘えを本能的に持っているのは、子どもさんやニートにとっては当然だし、「親にもぶたれたことがない」者や「軟弱者!」がモビルスーツに乗っているのは当然ですが、どうして女の子にはそういう趣味がないのか。
女の子のほうが現実的なのか、自分も女だから母性があって、人形や犬猫やママゴトなどで世界をみずから創造してしまうのか、なんてことが言われてます。

このへんは幼児教育の人なんかが勉強することで、俺も学生時代に絵本制作で少しやったことがあるんです。

女の子が、男の兄弟がいないか、女としてのつつしみや奥ゆかしさのしつけを受けそこね、「自分は、自分を産んだ母親から分離独立している別の女である」という認識の確定に失敗したまま成人すると、女性バラードの人称が必ず「僕」、もっと重症な場合は「僕たち」になってしまうとか。
中年になっても女性を全部「子」と呼んでいて、子持ちの主婦を説明する時にも「あの子はとても子どもに優しい子で…」などと言ったり、「女の子の敏感肌にも優しい白髪染め」などと言ったり。
心理学的に面白い話がたくさんあるんですけど、いずれ本丸あたりで御紹介します。

それで、そういう先に存在していたデーダラボッチみたいな巨人の、死体がバラバラになって、万物ができるというパターンがあります。
「死体化生型神話」「世界体」などと言われていて、世界中にありますが、インド・ヨーロッパ系の神話に多い。

これの中国版が、盤古という巨人で、その死体もやっぱり、左目が太陽、右目が月になったという。
盤古の死体のことは、『幻想世界の住人たちIII〈中国編〉』にも書かれてます。

中国神話では、盤古ではなく重黎という者が天地創造をおこなう話や、リという巨大獣の目玉で星を作る話もある。
太陽が10個あって、休み休み交代しながら1つずつ天をめぐっていたとか、あるいは、それが全部いっぺんに昇ったことがあって、暑くてかなわないから弓術のうまい人が9つを撃ち落としたという話もある。
神話もまた複数系統あるから、ひとつあったからといってそれが絶対ではないというのはもちろんです。

とにかく日月は目玉だという思想が、中国にもあるということは間違いない。
日月が出ていなければ暗くて見えにくいし、獣の目玉は暗闇で光ることがありますからね。

日本でも、イザナギノミコト(日本列島を作ったからには巨人? 偉大という意味では巨人?)が、体を洗って、左目から太陽神、右目から月神が生まれる話になってます。
あと、御伊勢様の外宮が、体じゅうから穀物を出す女神で、殺されたあと死体は農作物のタネになる話だったりしますね。

そういう背景があるから、武器で四明っていうと輪かなにかが4つある武器じゃないかと思うんです、勝手な想像ですが。
あるいは、禅杖が両頭の武器なので、前後左右に対応できるということを表現したとか、尖っている部分が合計4つあるとか?
四門を固める、四海を平定する、武威が四方にとどろく、というような言い方もありますね。

だから、「四明‘金産’」は、スコップ刃と三日月刃が両方あるんじゃないかと俺は思っているんですが、前述のとおり原作では「月牙‘金産’」に近いようなので、ちょっと不思議ではあるんです。
ただ、なんか丸いものが2つついてるようで、これが裏にもあるなら合計4つ、目玉のようについてるんじゃないかと。

仏教では「六通」のうち、宿命通、天眼通、漏尽通を「三明」と言ってます。
「冴えた見通し」というようなことでいいのならば、二刀でおなじみの「四智圓明」、大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智あたりを、四明と言えなくもない。

 

次回から、一番面倒な話。
スコップ刃を鎌として使うということについて。

 続く→ 

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