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現地の絵本では禅杖
中国の教育・民族問題などを啓蒙活動されている珠玲氏に、お忙しいところ、このコンテンツを監修していただいたところ、
『彩図中国古典名著 西遊記』(江蘇少年児童出版社 1994年初版)ですが、沙悟浄だけはやっぱり人間らしく描かれ、持っている武器は片方に三日月形の鎌、もう片方がスコップ状に、さらに飾りとしてそれぞれに耳輪のようなものを一対づつくっつけて描かれていました。
という情報を頂きました。
この一文だけ加筆しようと思って引用許可をお願いしたら、なんならスキャンした画像を送ろうかと言ってくださるので、御手隙の時で結構ですと言ったのに、御親切にも即日、送って頂きました。
中国側の感覚を知る手がかりとして貴重なので、これも御紹介しときます。
禅杖だが、輪があった
その絵本に出てくるのは、こんな感じ。
柄が白いっていうのは、このあとのページで重要になります。
あまり急角度ではなく、みかん型
先端はスクエア気味 柄は白、かなり長め
必ずしもまっすぐでない □□
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↑ ここに突起はナシ ↑ □□
↑ ↑
輪がついてる 金属部分は金色! 輪がついてる
スコップ刃を大きく描きます。
ここに穴をあけて
□ ↓
□□□□□□□□□□□□□□□ ↓ 左右にかなり大きい輪がついてる
□□□□□□□□□□□□□□□□□□↓ ↓ (三日月刃も同様)
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□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ↑逆輪かなり長め
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↑ここはそれほど飛び出していない
横から見たところ、ただし想像図。
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輪
この問題にも触れておかねばなりませんでした。
三日月刃側だけなら、輪をつけた禅杖は、絵では何度か見たことがあります。
いったん違う武器の話ですが、日本で間違って青龍刀と呼ばれているアレ。
蛮刀、曲刀、呉鉤などとも言い、形状によって柳葉刀とか鬼頭刀とか種類もあるんですが、中国武術ではただ単に「刀」と呼んでます。
そのミネに、いくつも穴をあけ、そこに輪をつけたものがあります。
環刀という言葉は違う武器をもさしますが、俺の仲間内ではこれを環刀と言ってます。
これも中国武術をやってる人にとっては珍しいものではなく、日本国内の武道具店でも市販されてます。
と言いつつ、俺は普通のしか持ってないので、写真に描き足しですみませんが、こんな具合。
現代剣道をやる方なら御存知のとおり、竹刀の弦は、敵の竹刀をひっかけて払ったり巻いたりするのに便利で、真剣ではできないことまでできたりします。
しかしそれは、両手で操作するから、そういう微妙な剣技ができるわけです。
中国の刀は、ミネでひっかけるような使い方は、ないこともないですが、どちらかといえば片手でブンブン振り回すものです。
しかも、居合で竹を試斬するような斬り抜きではなく、ナタのように重量で叩き割る使い方です。
刺身包丁じゃないんだから、輪がついたからといって切れ味が劣るものではないし、人体に深く食い込まなくて、かえっていいかもしれません。
刃を薄くしても、輪の重量が乗る分だけ、いくらか威力が増すということもあるでしょう。
ミネを自分の体に接触させる使い方が多いので、安全ですべりがよくていいかもしれないです。
しかし、節棍でも縄ヒョウでも、輪がチャラチャラついている一番の理由は、音で威嚇するためです。
節棍だったら、結合部の保護だとか言う人もいるのですが、それなら鎖を太くしてもいいし、革か布でくるんだっていいはず(そういう鎖も日本の武術にある)。
錫杖は魔物を払うなどとも言いますが、魔物というのは毒蛇だったり熊だったり、「急に出逢うとびっくりして攻撃してくるので、こっちの存在をあらかじめ知らせて、先に逃げてもらいたい動物」のことだったりします。
また、仏教で音を鳴らすのは、香もそうですが、どんな隙間にもすみずみまで伝わって広がっていくということが、仏の教えや力が及んでいくようであるから尊いとされてます。
沙悟浄の武器または禅杖に話を戻すと、降魔の杖とか、旅の僧侶が護身に使うとか言うからには、錫杖のようにガチャガチャしてるのは、ツジツマ合ってるとは思います。
原作でも、第八十八回、沙悟浄の武器を『降魔の錫杖』『錫杖』と書いてる箇所があります。
輪が両端にあると、上下がどちらかという問題が、さらにややこしくなってきます。
続く→ |