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 言葉は変化していく

漢字辞典は、漢のころから作られてます。
『説文解字』や『爾雅』が古いと聞いてますが、『小爾雅』『広雅』『纂文』『纂要』『玉篇』『文字集略』『字書』『字彙』などが作られ、成り立ちや部首や意味や類義語、あるいは索引や分類法が、だんだんに整理されてきた。
また、『切韻』『唐韻』『広韻』『集韻』『礼部韻略』『増韻』など、音韻の研究や、音引き辞書の編纂方法も工夫が重ねられてきた。

そういう大昔の学者さんたちが書いたものが、現代のすべての漢字辞典の元ネタになってるわけです。
というか基本的にここから一歩も出られない(未発見の文献でも出てこない限り。過去は変えられないから)。

なにしろ、『説文解字』ができてから100年以上たっても、となりの国では、まだ邪馬台国をやっていた。

そしたら漢文ってひとくちに言ってるけれども、これは古語でしょう、漢文の古文、昔の中国語。
我々は、あらまほしけれとか、いまそかりとか、もう日常では言わないし、たかだか5年くらいでも、バカすぎて俺のサイトには絶対書きたくないような言葉が、若い人たちの間で新しく生まれては消えていきます。

中国語は、地方ごとに別の言語じゃないかっていうくらいに発音が違ってても、文字さえ見ればとりあえず意味は通る「表意文字」ということだから、あんなバラバラな民族でも統一王朝や中央集権をやっていられた。
だから、漢字の意味は、そんなには変わってないのかもしれませんが、それでも、中国人にだって、今どきの若いもんはとか、古い人間とお思いでしょうがとか、いろいろあるでしょう13億人もいれば。

昔の辞書がそのまま通用するか、っていう問題があるわけです。
逆に言えば、今の中国語辞典そのままでは、古典文学は読めない。
明の時代にどうだったかを調べなければならない。

そこらへんが外国文学を訳す学者さんのすごいところで、前後の文脈の流れとか、筆者の意図とか、作品の雰囲気とか、その時代や地域や民族の風習とかで、適切に、臨機応変に、最もドンピシャの表現を検討なさった上でお書きになってる。
その結果、
‘金産’は鎌だ、とおっしゃってるからには、ああそうですかと、受け入れないわけにもいかないんですが、自分で考えなくなったらオシマイだから。

 

 使い分けということ

日本語も、ヤマト言葉なんて言ったって、東日本や九州の人は口がきけなかったわけじゃなし、外国との交流も大陸方面ばっかりじゃなくて、黒潮で南から入るものだってあるんで、たとえばハナ(尖端、突出、最初)とか、イッソ(少しも〜でない)とか、あきらかにタガログ語やパイワン語など南方系との関連があって、長い年月をかけてだんだんにできあがってきたわけですよね。

漢字も、4千年前にやってた絵記号が、だんだんに整理されていって現在の形になったわけです。
全部で5万字くらいあるから、あんまり使われずにすたれた文字もかなりある。
伏犠や蒼頡が文字を作りましたなんてのは大ウソで、これもまた段階的な複数系統の同時進行なんです。

ある人たちはこう書いてあらわし、別の人たちはこう書いてあらわしていたが、結局、同じものをさしていたとか。

同じ機能の武器でも、北の人たちと南の人たちでは、違う道具を使っていて、そのそれぞれをあらわす漢字が別々にあったが、国家が統一されたり、もっと便利な新型が生まれたりして、今では誰でも同じ道具を使っている、しかし漢字はもう作っちゃったから、同じ道具をあらわす漢字が2つになっちゃったとか。

斧の刃の、柄をハメこむ穴のことを銃と言っていたら、鉄砲が発明されて、形が似てるんで鉄砲のことを銃と言うようになったり。
槍は、リーチが長い武器というニュアンスだったが、今の戦争でリーチが長い武器ってもう槍じゃないから、今では鉄砲のことをなになに槍と書くこともあったり。

しかし、そこまで使い分けない人も多いし、中国にいなかったとは言わせませんよ、4千年もやっていれば。

わが国も現代では、チョー、カワイイ、ヤバイ、ムカツク、キモイくらいで、だいたい用は足りてしまう。
それがいいか悪いかじゃなくて、それが世間の主流派、そういう人たちが中心になって文化を生み出してる時代ってことであり、そんなんじゃいけないのかもしれないけど、いけないことでも、なおりゃしませんよ。

ましてや、学者さんが武術やってるとは限らないし、武術家が文章うまいとも限らないから、‘金産’を、言葉の意味という切り口で調べてみてもしょうがないっていうことはわかってます、わかってるけど一応です一応。

 

 たとえば

このコンテンツでは、石突のことは石突と表記していますが、意味を限定しないために、この字を使ってます。

一文字で石突をあらわす漢字も、あることはあるんです。
金へんに尊、金へんに敦、矛へんに贊、金へんに堂、金へんに票、錣、鐺、など。

これらは、形として尖っているか、刃が折られた場合に石突を刃として使う意識があるか、あるなら、刃と同じくらい長くしたり鋭くしてあるか、その武器の刃は仕込になっているか、鎖分銅などが飛び出す仕掛があるか、長柄の石突なのか刀剣の鞘尻なのか、ただの杖や傘の尖端なのかなどなど、意味が違う。
時代や流派によっても、どの文字を使うかが少し違うことがある。
武術界と骨董業界でも、それぞれ慣例になっているところがある。
構造上の位置をあらわす場合と、その位置につけている金具自体をさす場合があるから、金具がついてなくても言う場合がある。
昔の人がそうしていたからといって、それが正しい使い方でない場合もあるし、正しくなくても、その人の書いたものを引用する時は、そのまま書かないわけにもいかない。
しかも、これらすべて、必ずしも徹底されている基準ではないから、例外が無数にある。

だから、このコンテンツくらいだったらいいんですけど、もっと複雑な話をする時には、たとえば各国の各時代の長槍による対騎兵戦闘の比較を、文献を引用しながら推定するなんてことになったら、
 「石突」
だけではすまなくて、

 「■(なにへんに、なに)、この場合は先があまり尖っていない二股のやつで、そう呼んでいいかどうかなお疑問が残るが、今の時点での仮説として、おそらく■(なにへんに、なに)と呼ばれていたもの、正しくは■(なにへんに、なに)のこと、ただし、この時代は■(なにへんに、なに)と書くのが一般的で、あの流派だけが■(なにへんに、なに)と表記していたが、さっきの本では、この話題の時だけ■(なにへんに、なに)という文字で表記していて、誤植かどうかわからない、■(なにへんに、なに)と同じものかどうか不明、うちのコンテンツでさっきから■(なにへんに、なに)という文字であらわしているのとは別の構造で漢字は同じだが読み方が違う」
…などと、
暗号みたいなダラダラした文章になるかもしれません(現状でもすでに、充分なってますが)。

どんなに面倒でも、そりゃ道具の歴史と定義の話をやってるんだから、書き分けなければならないところは書き分けます。

このコンテンツは読者を限定していないから、武術やってない方も御覧になるので、専門用語を使うならば、その用語からいちいち御説明しなければならない。
しかも、一度説明すりゃあいいってものでもないみたいで。
俺なんかは、推理小説にカタカナの人名があんまりたくさん出てくると、カバー裏の「主な登場人物」っていうのをときどき見返さないと、誰が誰だかわからなくなってしまう。

俺自身にもまだよくわかってない話を、その武器の名前も形もわからないうちから、変換できない難字をダラダラ並べて、偉い人の難しい文章を引用しながら、ただでさえくどい俺の文章で、できるだけ厳密に書いていこうっていうんだから、まどろっこしくて、よくみなさん読んでくださっているなあとホント感謝してます。

 

次回は、「削る」ということについて。

 続く→ 

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