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 シャヴェル

シャヴェルは、スキです。英語。

スキの話だけで、少なくとも、さらにもう2階層ごっちゃになってます。

漢字本来の意味では、「鋤」はクワ、「鍬」はスキ。
日本でも『日本書紀』の中ではそれで統一されているのが、その後、遣唐使イヌガミノミタスキのスキあたりからごっちゃになってきて、8世紀以降、日本では逆にして、「鋤」はスキ、「鍬」はクワということで、現在に至ってます。
しかも、ある種のものは、必ずしも逆になっていない。
さらに、名前と道具が一致していても、使い方が一致していないことがある。
そのうえ、地方や年代によっても、また少し違うことがある。

たとえば櫂に似た形状のものは、品物と使い方はスキだが、クワと呼ばれていたりする。

股鍬、備中鍬などと呼ばれる、先が3本フォークになったクワは、うちの地元ではただ単にスキです。
どうも、散髪のスキ鋏のように、「すく(透く、梳く、漉く、一部だけがひっかかって取り除かれる)」というニュアンスでスキと言っている様子。
また、父に聞いたところでは、深掻鍬(フカカキグワ)という呼び方もあるという。
先日erikoさんから、このタイプを岐阜県ではスキグワと呼んでいるという情報をいただきました。
また、のりさんから賜った御教示によれば、新潟県出身の方が備中、俗称で三本鍬ともおっしゃっているとのこと。

現代人が描いた明治期のスキヤキ発祥の想像図では、クワの上で肉を焼いている絵があったりする。

「油断もスキもない」とは、まさにこういうことであり、歴史や中国文化を考察してる場では、「鋤」と書いただけでは意味が通じないので、、面倒ですが、先に申し上げておきます。
ここで言うスキは、まっすぐに近くて、こっちからむこうへ突き出すやつ、そして、クワはL字かそれ以上に曲がっていて、手前へひっかくやつ、と思ってください。

シャヴェルは、尖端を突き刺して切り割っていくものだから、刃部の中央が一点集中で尖っていなければならない
ホームベース型、アイロン型、あるいはウロコ型かもしれないが円弧だって点で接するわけで。
少なくとも一直線に平らではいけない。
地中の小石にでも当たった場合のために、山形の、逃がす角度がついていなければならない。

これをスペード型という意味で、スペードと呼ぶ人もいますが、それってスペイドのことだとすれば少し別のものなので後述します。

例外があって、雪かきスコップだけは、平たい刃先でも切り割っていけるから、シャヴェルでいいことになってます。

英語では、かなりハッキリした「シャ」の音です。
知り合いの外人に言わせてみたら、オハイオ出身でシャビヨ、ニューオーリンズ出身でシャヴォウに近かった。
あなたが20代だったら、シャバイぜ!のシャです(20代でも言わないか)。

しかし日本では、ショベルと呼ぶ人も多い。
土方のみなさんは腕っぷしのある強い男たちだから、べらんめえの巻舌で「ショ」になまったのかもしれないし、外来語として取り入れる時に手本にした発音に、独語か仏語かなにかの影響があったのかもしれない。
トラック(軌道)のことをトロッコとか、ロープのことをロップとか、土木建設方面ではそういうことがよくあるので。

特に、油圧でやってるような自走の大型機械のシャヴェルが、パワーショベルと呼ばれてます。
すると、大きければシャベル?、じゃあ小さいものはスコップ?と勘違いする人が出てくる。

子どもさんが砂遊びに使う小さいのは、シャヴェルかスコップかって言えば、尖っているんだからシャヴェルなんです。
あれは移植ゴテだから、厳密にはトラゥェルですが、日本で移植ゴテって言うと、いかにもコテ然とした、竹を割ったような形状の、やたら幅の狭いものがほかにあるので。

親や保母さんが、スコップ片付けときなさいよとか、子どもさんに吹き込んでしまうこともある。
今はどうか知りませんが、俺が子どもの頃には、シャベルでホイ、モグラのおじさん道普請〜、とかなんとかいう童謡があって、これをどっちに解釈したかで道が分かれたようです。
そういう幼児体験がイメージを決定してしまい、違和感あるものは認めないから、また次の世代にそう教えていく。

では、シャヴェルはすくう道具ではないのかというと、そうでもない。

「シャヴェルフル」、シャヴェルいっぱいにひとすくい分という、すくった量をあらわす言い方にもなっている。

戦車の備品でも、ツルハシ(鶴嘴)とシャヴェルがセットになっており、地面を切り割るのはツルハシ、それでほぐれた土をすくうのがシャヴェルという、役割分担になってるものなんで。
シャヴェルしかなければシャヴェルで掘りますが、軍隊はツルハシもよく使う。
工兵は、リュックにツルハシをくくりつけて持ち歩いていることがある。

旧日本軍のマニュアルを見ると、ツルハシを十字鍬、シャヴェルを円匙(エンピ)と呼んでいて、やはり併用するよう書いてあります。
ツルハシは、あくまでも突き刺して掘り起こすもので、手前へと使うクワの仲間であり、すくう機能はない。
エンピは(エンシと読むべきものを、慣例的にエンピと読んでいるわけです。軍隊用語)、すくう道具、匙(さじ)です。

※追記
だああ〜〜〜、もうひとつ面倒くせえ話。
このコンテンツで「シャヴェル」と書いているのは、俺が普段から、ポニーテールではなくポニーテイル、バイオリンではなくヴァイオリンなどと書いているからですが、それは、そのほうが原語に近いからです。

ところが、先日、北原保雄さんの『問題な日本語』大修館書店2004を読んだところ、外来語というものは、取り入れられてすでに日本語になっているのであるから、原語を優先せずに、日本語として読みなさい、というような趣旨のお達しが、平成3年に内閣告示で出ているのだという。
だから、メイルはメールなんだとか。

下くちびるを噛んで「ゥヴェッ!」などとやらかすのは間違いで、ぼくドラえもん的な棒読みで「しゃべるぅー」と言うのが正しいのかもしれない。

「ミーのいた、おフランスではァ〜、シェッヴァ〜〜〜〜リエ?、ド?、クレルヴィ〜ルがァ〜、マレッシャァ〜ル?、ラッ?、フォ〜〜〜〜ルテのォ〜」なんて具合に、外国部分だけ妙にリアルな発音になってておさまりが悪いっていうのは、あんまり綺麗な日本語じゃありませんね。
そんなことは、バカしかやらない。

それでいて、シリコンとシリコーンは使い分けなきゃいけないんだとか。ひー、難しいこった。
俺もマルボロはマールボロ、ロレックスはローレックスと必ず書くようにしてるけれども。
「たまぷら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ざ」ってやつですねえ。

しかも、日本語において小さいイは、ティ、フィ、ディ、ウィ、クィ、ツィ、ヴィしか使えないというおふれも出ていて、フロッピィ、ファジィと書いたら間違いなんだとか。

こういうことを徹底していくのは大変なことで、わかっていても筆や変換の勢いで間違えたりもするし、俺みたいに明治大正の人たちに囲まれて育つと、ウヰスキィとか、スミスアンドウエッスンとか、ちょっと垢抜けない表記をしてるくらいのほうが、日本男児の文章としては味があると思ってるんですよねえ。
うちのサイトでは、ネイヴィーとか、グスタヴアドルフとか、すでにあちこちでそう書いてるので、改めるのも大変だから、ここでも、シャベルのことはシャヴェルのままということで御容赦ください。

次回は、スコップ。

 続く→ 

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