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 刃は鋼鉄製?

『武器と防具 中国編』、‘金産’の材質に関しては、こう書いてあります。

『両端の刃は鋼鉄で、柄は木で作られます。』

きちんと調べたわけではありませんが、剣はともかく中国刀は鋳造でやってたこともあるという話を、なにかで読んだ記憶があります。
中国のことだから、ひょっとすると‘金産’の刃(特にスコップ刃)は
ハガネで作ってないんじゃないか?と、俺は前々から疑問だったんですが、この本はあっさり、鋼鉄だと断言している。
どうして断定できたのか、その根拠が知りたいんですが、書いてない。 

この著者が、鉄の種類を知らないか、あまり深く考えずに筆の勢いで鋼鉄と書いちゃっただけのものを、俺がネチネチと言葉尻のアゲアシを取っているわけじゃありませんよ。
この本は、巻頭に「中国における製鉄技術の発達」という項目があって、温度、鞴、炭素、冷却、各時代の技術や生産量など、詳しく、しかも要領よく解説なさっていて、可鍛鋳鉄のことまできちんと述べておられるから、この著者は冶金のことを御存知ない方ではないんです。

徴古館のエスカレーターあがってすぐの所、御覧になったことあるでしょう?
田口博士の本(後述します)なんかを見ると、鍛鉄か鋳鉄かっていう時は試料をとって、顕微鏡で組織と結晶粒度、特に炭素含有率、マイクロヴィッカース微少硬度、ついでに砂鉄か鉄鉱石か、その産地、X線マイクロアナライザーで介在物、さらに水槽に入れて複2次元超音波までやっていたりするんですよね。

明の時代に実戦に使われた‘金産’って、見たことがないし、博物館に展示されてるって話も聞かないんですけど、現物があるんでしょうか?
それを化学分析したって話は、なおさら聞いたことがないんです。

‘金産’のもとになった道具が何だったかもわからないうちから、素材の特定は難しいと思っていたんですが。

 

 本当に鋼鉄製か?

後述しますが、‘金産’という言葉のもともとの意味は、「金属を削る工具」というニュアンスがある。
もしそうだとすれば、炭素1.5%くらいの鋼鉄だった可能性は、もちろんあるんです。

しかし、‘金産’と呼ばれている道具自体は、本来、農具だった可能性が高い。
中国では農具くらいなら鋳鉄でやっていました(これはいろんな本で見かけるし、『武器と防具 中国編』にも書いてある)。
中国の得意な硬い鋳物で、ある程度の厚みがあって、30度くらいの刃で、甲冑を着てない人に対してなら、そんなにダメでもないはず。

ここで問題なのは、農具から発展して僧侶によく使われた武器っていうのが、完全に武器になってしまうものか、あるいは、武器として使えないこともないが普段は農具なのか、です。

俺が山岳信仰のほうで見聞きした武器って、たしかに焼きも登録もついてて武術でやるものと、法具とか祭器として使うだけだから斬った張ったをやるつもりは全くないというのもあるんですよね。

つまり、いざという時には護身のために武器として使うこともたまにはあるかもしれないが、僧侶だから、そんなに行く先々で殺しまくることはないので、ただ持っていればよくて、これ見よがしに持ち歩いてさえいれば、あれは少林寺の僧侶で強そうだということが見た目にわかりやすいから、追い剥ぎが手を出してこない、それこそ僧侶的な意味での武器ではないかと思うんですが、そういう場合、鋳造でも全然かまわなかったのでは?

しかも、もともとが工具か農具だったのならば、あんまり敵の武器とぶつけ合うことを想定していないのではないかと思うんです。
悟空の如意棒だって、もともとはモノサシであり、それが武器としても充分使えちゃうところが、だからこそ神仙であり神器であるというところなんですが。

この問題は、また後述します。

 

次回は、原作での武器の作り方。

 続く→ 

 

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