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 戦場で使われるものは3メートルあまり?

『武器と防具 中国編』、‘金産’の寸法に関してはこう書いてあります。

『戦場で使われるものは3mあまりの長大なものもありますが、僧侶の‘金産’は持つ人の身長くらいのものです。』

じつは少林寺の武器法のひとつに、魯智深大‘金産’っていうのがあります。
『少林十八般兵器』に、名前だけ出てくる。
これが套路の名前だったとしても、前述した
『水滸伝』に出てくる武器になぞらえたものだろうから、これに使う道具も、寸法か重量がはなはだ大きい可能性が高い。

だから、戦場でなくても使うことはあると思うんです、3メートルくらいなら。

俺が注目してる部分は3メートルがデカいってことじゃなくて、どうしてそれが戦場用なのかです。
戦場こそ、実用的で現実的なサイズを使い、平時には、見せ物みたいな派手なやつを使うのが筋でしょう。
戦場では慣れてない一般市民をかり集めて戦わせるから、あたりさわりのない武器を使わせるかもしれないが、道場で日々やってる武術の専門家は、熟練してるから、特殊な武器も使うでしょう。
実際、そういう例があります。
戦場と武道、試合と演武、大会と稽古では、ちょっと違うものなんですよね。

日本の槍も、シロートの足軽が十文字鎌なんか持てば、戦場であちこち引っかかっちゃってロクなこたあないわとか、戦国時代が終わって大名行列の飾りになってから、かえって寸法を長くしたことがありました。
江戸時代の武士が差してる日本刀が2尺3寸5分くらいでも、居合流派は3尺3寸くらいを使って、わざわざ抜きにくいものを抜く技術を磨くんです。

 

 全長は、使う人の背丈に合わせる?

普通サイズのほうが気になります。
スポーツ武術だったら、フェアな条件で試合できるように、道具の長さと重さの規格なんてことを決めてしまうのですが、伝統武術では、立てて眉毛の高さの棍とか、逆手に握って肘から何センチ出るくらいのトンファやサイや十手とか、使う人の個人差に合わせて長さを決めるということがよくある。

武術の世界では、武器の寸法を説明する時に『持つ人の身長くらい』という言い方をしたら、それは、使う人の体に合わせているということを意味するんです。
成人男子の平均身長くらいという意味ならば、それならそう言う。

なぜなら、3メートルの実物が見つかったとしても、それを使っていたのがどんな人だったかということを勘定に入れないと、大きいとも小さいとも言えるものじゃないからです。

とんねるず木梨さんとか、山瀬まみさんとか、我々が勝手に小さいと思い込んでいるがじつはめちゃくちゃ背が高い人、っていうのがいる。
フリードリッヒ1世が背の高い人ばかりの部隊を作ったことがあって、ホントかウソか2.7メートルなんて人までいたとされているから、とりあえず2メートルくらいの人はザラにいたらしい。
小柄な人が極端な長剣を使いこなすのは、物語の絵空事ではなく、ちゃんとした居合道場に行けば日常的に見ることができる。

双頭の武器はなかなか使いにくいものなので、‘金産’系統の武器も、きっと使う人に合わせたカスタマイズ調整があったのだろうとは思うんですが、あったともなかったとも、証拠となる資料をまだ俺は見つけていません。
『武器と防具 中国編』が、どういう意味で、どういう根拠で言っているのかが知りたいんですが、書いてない。

そもそも、本当にそれを実戦に使ったかどうかは、実例を確認しなければ断言できません。
士気高揚の飾りか、敵へのハッタリにしていたかもしれないし、祭器だったかもしれないし、また、武器っていうのはそういうことが多い品物なので。
7尺4寸2分が現存最大の日本刀だと聞いてますが、これは神社への奉納品。

 

 「持つ人の身長くらい」では短すぎる

俺も20年くらい前までは、三日月刃とスコップ刃が両方ついていれば、柄は少し短いほうがいいんじゃないかと思っていました。
両端が重いのだから、それこそ、人の身長くらいが適切なんじゃないかと。

しかし俺が見た写真ではすべて、人の身長よりは長めです。
短いものでも、立てると頭1つ分くらいは長い。

その理由は、一目瞭然です。
前述の、中国の武術雑誌の写真では、こんな具合。

←こっちを敵に向けている場合、このへんを握り、そして、このへんを握ると…
                 ↓            ↓  
                 ↓            ↓ ここでヒジがぶつかるギリギリ!
                 ↓            ↓ 自分の脇の下か、脇腹が斬れちまう!
                 ↓            ↓ これ以上は伸ばせまい
                 ↓            ↓    ↓
                 ↓            ↓    ↓ □□
  □              ↓            ↓     □□  
 □□□□□                             □□   
 □□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□   
 □□□□□                             □□
  □                 ↑    三日月刃がでかい!  □□ 
      こんだけ伸ばして間合をかせいでも、              □□ 
      相手の護手鈎の先がここまで届く                  ↑ 
                        刃の尖端、自分の膝から   
                        5センチと離れていない(弓歩をとるから)

 

そもそも、この武器が使う人の背の高さだったら、立てて持ってる時は常に、三日月刃が顔に当たるではないか。

『武器と防具 中国編』は、どうして寸法を断言できたのか、その根拠が知りたいんですが、書いてない。

 

こういう話になると、もっと根本的な問題もあります。
それは次のページで。

 続く→ 

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