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 武器事典は2種類ある

 学術的な研究書  ファンタジー資料集
著者 その武器が使われていた当時の人や、その武術をやってる人、または軍事学や考古学や民俗学の学者など。
海軍造兵中将で工学博士とか、社団法人日本甲冑武具研究保存会会長で画家とか、その武術を継承してる宗家とか、この人がおっしゃるならしょうがないという人が書いておられる。

資料の価値というものは、必ずしも権威や肩書ではないが、情報の出所と責任がハッキリする。
どういう経歴の人なのか、まったく書いてない。
武術やってるのか文学なのか歴史学なのか、専攻がわからない。
シロートは、「シロートにとって、どこが知りたい部分か、どこがわかりにくい部分か」がわかっているから、シロートの武器おたくが知ったかぶりで事典を出したっていいのだが、どういう人なのか全然わからないのは、シロートより困る。
対象 専門家、またはそれをめざす人。
研究資料というのは共有財産なので、それがまた別の研究にも使われる。
ロールプレイングゲーム、アニメ、マンガなどの人たち。
どちらかといえば、子ども向け
こういう本をまたまた引用して、さらに通俗的な武器事典を出す人もいる。
期間 事典を出すというのは中間報告ではなく、研究の集大成なので、何百年も続いている流派や、何十年もライフワークにして研究してきた人が出す。
それだけに、最近の考古学的発見がすぐには反影しにくく、結局、大昔の本がいつまでも権威を持ち続ける。
この本を出すために専門書を読み始めて、2年かかったとか5年かったなどと、あとがきに述べていることが多いが、これっぽっちしか勉強していませんという意味ではなく、こんなに長い時間がかかって大変だった、とおっしゃりたいらしい、たった数年で???(俺でさえ、うちのサイトに出してる蔵書リストは、かれこれ20年は読んでるのだが)。
姿勢 網羅することよりも、正確さを絶対視する。
現代に作られた本は、通説をくつがえす発見や、先行文献に載ってないようなことを見つけてきて発表することに熱心で、閲覧困難な古文献や骨董品を検証していたりして興味深い。
武器を復元して使い勝手を確かめたり、実験考古学になっているものもある。
すでに出版されている本の、まとめ。ダイヤグラムグループ編『武器』あたりからの転載が多い。どうもオタクというのは、整然と並べるのが上手な人が多く、コレクションとかコンプリートが好きらしい。
断片的な浅い情報の組み合わせなので、無関係なものを同じものとして扱っていたり、そうでなくてもそう誤解されかねない箇所が多い。
文章 辞書編集法というのはひとつの学問にまでなっているから、「A、BならびにCの、X」「A、B、CのX」では、どこまで並列しててXがかかっているか違うし、「3または5」「3ないし5」では4を含むかどうかが違ってくるのだが、こうしたことは比較的きちんとしている
ただ、年寄りが書いたものは、あまり洗練された文章ではなかったりして、句読点テニヲハ主語述語すらデタラメなことがあり、わかる人にしかわからないことがある。
古語や漢文や旧字旧カナのままということも多い。
ただの断片的な抜き書きの寄せ集めなら、ダイジェストとしての価値がまだあるが、パクリ元の原文を引用しないので、ニュアンスが変わっていることがある。
「〜が多い」「〜も多い」「〜するために作られた」「作られて〜するのに使われた」などを、区別して書いているのかどうか不明。
盗用が後ろめたいのか、変えなくていいところまで積極的に原文と違う言い回しに変えてしまう。もしかすると、言い回しを変えれば著作権法違反にならないと勘違いしているのかも。
鎖鎌は農民の武器、鎖をブン回しながら精神統一もなにもあったもんじゃないなどと断言している本もある。
前提 当たり前なことは、書いてないことがある。
シロートさんに対しては不親切。生兵法を防ぐために、ときに排他的で秘密主義ですらある。
武術をやっていれば中学生でも間違えないような初歩的な間違いがときどきある。
基礎知識がないまま、聞きかじった情報だけを扱っているように見える。
感覚 あえて鉄扇で刀を相手にする人はどんな人かというような、技や修行まで想定しているから、槍は刃があるから棒より有利なんてことは言わない。強い人は素手でも強いのだから。 刃やトゲトゲや重量が多ければ威力も大きいという、ロールプレイングゲームのアイテムくらいの単純な感覚でやっている。
武器の威力ランク一覧表(笑)を作っていたりする。これはこれで、世間の感覚や先入観がわかって大変面白いのだが。
引用 出どころが明記されているうえに、原文のまま引用してくる。
「この武器の使用例は『甲陽軍鑑』に見える」という程度の言い方でも、武田流騎射やってるとか甲府で国文学の教授やってるとか、著者の経歴が書いてあれば、いくらなんでも『甲陽軍鑑』くらいは全編を読んだ上で発言しているのだろうということがわかる。
大卒の方が論文として書いたものなどは、巻末に資料編という章を設け、その元ネタの古文書をそっくり全文掲載してくれていたりする! 誰が実験しても同じ結果でなければ科学とは言えない、どなたでも検証してください、私の解釈に間違いがあれば御教示いただきたいという姿勢。
巻末に参考文献を山ほど列記しているが、どれがどこから引用した部分か、全然わからない。
ときどき「この武器をこう使った例が、この軍記物に書かれている」という言い方をしているが、その軍記物は参考文献リストになく、笹間先生あたりが著書に引用している部分なので、人様が引用したものを引用した「孫引き(3次使用)」らしい。
孫引きなら孫引きでもいいが、誰の引用を引用したのか書いてないし、〜だそうですという言い方でもないから、その軍記物を実際には読んでいないくせに読んだフリだけしているように見える。
ネット掲示板ならそれでもいいが、事典としては無責任。
構成 知ってることは猛烈に詳しく書き、知らないことは知らないと正直に言うので、事典といってもばらつきがあり、ある武器は寸法や材質までわかるが、ある武器は名前しかわからない、というようなことがある。 スペックの項目の立て方が共通、テンプレートになっていて、1ページや1見開きに武器1つというような、わかりやすい編集で、とても見やすいし、比較しやすい。
内容 やたら深い。手裏剣ならこの本、ヌンチャクならこの本、十手ならこの本が絶対に必携の書というような、その分野の基礎文献がある。 紙面が少ないので、情報量は少ない
危険度 特殊な例外にまで言及し、余談も添え、先入観を排し、結論を急がないので、読む人が誤解しなくてすむ
そのかわり、慎重すぎて長文でまわりくどい。「もっとも」「とはいえ」「ただし」などと、真逆のことも書き添えてあって、結局のところ結論がどうなのかがわかりにくい。
じっくり読まない人や、活字に慣れていない人は、一部分だけを拾ってしまって、かえって誤解しやすいとも言える。
「なになには、これこれである」とズバリ言うので、短絡的で観念的だが、わかりやすい。
初心者が、小難しいことをヌキに、とりあえず、だいたいの認識を得るのに便利。
それがすべて危険であるとも言える。
いわば、読者のかわりに、著者が先に誤解をやらかしてくれている。
範囲 狭い。そのかわり深いのだけれど。
広くてもせいぜい日本だけとか、下手すると戦国時代だけとか、槍だけ、備前長船だけ、薩摩拵だけで一冊なんてこともある。
広い。古今東西の全体をおおまかに知ることができて便利。
どういうわけか、西洋の武器に関しては、とても詳しい場合が多い。ファンタジーとかRPGはもともと西洋の文化だからというだけでなく、外国文献を広くあさった上で書いている。
難易度 難解。インテリの年寄りが書くから漢文調、難しい漢字や聞き慣れない熟語が頻出。
専門用語も当たり前に使う。全体的に文字ばっかし
デスマス調の語り口。現代的で垢抜けており、気軽に読める。子どもさんにも大変わかりやすい
実物写真、または当時の人が描いた絵が多く、しかも、その出どころも明記されている。
ていうか、著者が実物をお持ちで、写真撮り放題だったりする。
新たにおこした図も、博物学としての描き方だったりする。
細部や用法を知ってる人が描くから、構造的に重要な特徴は、たとえ下手でも必ず描いてある。
絵が下手なら下手で、鉄板ニテ伏セタリとか、絵の中に説明を書き入れてある。
ヘタクソ、しかも不正確
シロートが描いているらしく、描写力がないのはしょうがないとしても、謙虚にモチーフを観察して特徴を感じ取るという、一番大切な最初の部分から欠落している。
むやみに線を整理していて、本当はカーブや段になってる部分を、定規でまっすぐに引いてしまう。
太さが変えてある部分が変えてなかったり、金具ではないところへハイライトを入れて金具にしていたり、勝手な思い込みで決めつけた描き方。
マンガ絵の最大の欠点である「観念的」になっている。
絵を元にして絵を描くから、細部がどんどん現実から遠ざかる。
そもそもマンガ絵はディフォルメと省略なのだが、それにしても面倒くさかったのか省略がはなはだしく、細部がどうなっているのか全然わからない。情報量が減っているうえに、劣化してる!
骨董屋や博物館で誰でも見ることができる武器でさえ、大きく間違った描き方なので、これで外国の珍しい武器が載っていても、これもまた正確に描いていないんじゃないか?という疑いがぬぐえない。
入手 普通の本屋にあまり置いてない。図書館にすら置いてない。しばしば絶版。自費出版や非売品だったりもする。 その街で一番大きい本屋に行けば、たいてい、いつでも置いてある。
値段 高〜い! 1万円くらいは当たり前。5万近いこともある。むやみに布の上装丁に箱入りだったりする。
何巻もセットになっている本のうち、ほんの一部分に、ものすごく重要な資料があったりするので、いらない部分まで買わなければならないという意味でも高い。
古書の場合、定価より高い…。
自費出版の場合、送料や振込代、礼状の切手代までかかる。
良心的。せいぜい2千円。
情報は盗用、イラストレーターは三流、経費がかかっていないということ?

 

 続く→ 

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