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 沙羅

娑羅とも書き、沙羅樹、娑羅樹などとも書かれてます。
高さ30メートルになる常緑樹。インド原産。フタバガキ科。
葉は長楕円形で大型。花は淡黄色で小さくて芳香あり。
タネから油が取れるので、オリーヴの神話との関連が気になりますが。

双葉柿という名前は、葉っぱが2枚セットなのかもしれないですが、長い羽が2枚セットでプロペラのようになっていてタネを遠くに飛ばすらしくて、これだけで「双」という感じ(だけ)はある。

何年かに一度しか咲かないばかりか、咲く時は申し合わせたかのようにどの木も一斉に咲くことから、非日常的な大事件、たとえば御不幸に結び付けられやすい性格を、もともと持っている木です。

沙羅双樹は、これがモデルでしょう。
名前が沙羅なんだから。

平凡社版のほうでは、梭羅の注に
『インド産の常緑喬木で高さ30メートルにも達する』

とあるから、岩波版と同じく、これを沙悟浄の武器の材料と見ておられるらしい。

一説には、御釈迦様が生まれたのもこの木の下とされていて、沙羅双樹とまったく同じものではまずい感じもするんですが、フタバガキというのは種類が多くて。

たとえば、いくつかの種類は、ラワンという安くて軽くて柔らかい材木になります。
DIYの店で棒術用の棒を買おうとすると、安くて、すぐ折れるから喧嘩に使わないし、骨格ができてないうちは筋肉よりも技の正確さを優先して軽いほうがいいんで、俺も10代前半の一時期わざとこれを使ってました。
すぐ折れる木がいいのなら、これだって葬式杖にふさわしいくらい。

 

 沙羅双樹

この場合は、1株から2幹を生じるから双樹です。
御釈迦様が(人間の肉体としては)亡くなる時に、その場所の四方にあって、御釈迦様の頭上をおおいつくし、悲しみゆえに枯れたとされる。
たまたまタイミングよく、フタバガキが、頭上をおおいつくすほど咲くか散るかしたんじゃないかと思いますねえ。

たしかに葬式のイメージはある。
仏教の世界観の物語に出て来る「葬式の杖(に似たもの)」「埋葬の穴掘り道具(のような形の武器)」の素材としては、ふさわしい木だとは思いますが、証拠が何もない。

月に関する伝説は世界中に山ほどあって傾向バラバラなんで、こじつけようと思えば何かひとつくらいは必ず関連しちゃうものですが、人の霊魂が死後に月世界に行くとか、月は死の女神というような伝承が、インドにもローマにもメキシコにもニューギニアにもあるから、月自体が死のイメージではある。

『西遊記』では、悟空が八卦炉をひっくり返したシーンで、『如来と同契して双林に住まん』という表現が出てくる。
天界で大あばれした悟空を、最終的に捕り押さえて封印したのは、釈迦如来です。
『西遊記』の世界では、御釈迦様だけは無敵で、圧倒的に広大な力を持っており、別格の強さがある。
その御釈迦様でさえ絶対にのがれることができなかった死、その象徴であり、連動して枯れた霊木…、
もし、これほどの物が杖になっていれば、沙羅双樹ですとハッキリ描写されてもよさそうなものだ。

劇中、悟空はたびたび苦戦しては、いろんな神様に助けを借り、いろんな道具を出してもらいますが、沙悟浄の杖が沙羅双樹だったら、もうこれだけで何でもかんでも解決しそうな気がするんですよねえ。

しっかし、俺も30年ちかく参禅してて釈迦伝はさんざん聞かされてるんですけど、生没年さえわからないような紀元前の、それでもちゃんと実在してた人物が、生きてるうちから仏様でもあるから、どこまでが尾ヒレなのか、考古学的に宗教開祖の伝記を言ってるんだか、宗教上の教義として釈迦如来の法力を言ってるんだか。

沙羅双樹というのが、まったく架空の木なのか、まったく実在の木なのか、その中間くらいなのか、境目があんまりわからない。

なにしろ宗教ってやつは、奇蹟を起こしたと言われちゃったら「史実」ですからね。
誰も知らないはずのことをピタリと言い当てた
とか、さわっただけで病人が治ったとか、それが奇蹟かどうかじゃなくて、なんなら偶然やトリックでもいいが、しかし当時の民衆はそれを確かに奇蹟だと認めたということと、だからこそ開祖様と信者になったということが、まぎれもなく歴史的事実なんですよね。

宗教上の伝説だけでもこうなのに、それをまた娯楽小説にして、道教もごっちゃになってるというと、もう、こんなコンテンツやってても意味がないということは、俺もわかっててやってるんですけど、やり始めちゃったんでもう少し続けます。

日本では、沙羅双樹はフタバガキじゃなくて、ナツツバキとみなされてます。
椿は常緑ですが、夏椿という落葉性の品種があって、冬に日射を遮らないんで庭木に好まれている。
花がすぐ散るので、沙羅双樹のイメージがあるみたいで、日本ではこれが「沙羅」と呼ばれてます。
椿はたいてい、花がポトリと落ちるんで、葬式っぽいですけど。

 

さっきから、別の問題も発生しています。
次回はそれについて。

 続く→ 

 

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