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 先入観になる

世徳堂本のイラストも、榎本健一さんの映画も、ドリフターズの人形劇も、そりゃあもう権威や人気や知名度があるから、それらが「沙悟浄の武器はこれです」と言って「月牙‘金産’」を使っていたら、世間でのイメージが決定づけられてしまうんじゃないかと思うんですよね。

それ以降、挿絵を描く人や、映画の小道具を作る人が、少なからず影響を受け、そういうものなんだと思って、そう信じ込んでしまい、疑ってみるということをしない。
それで、それを見て育った人がまた、次の作品をそうしてしまい、それを見た人がまた次の作品を作り…、そして多数派になっていく。

それで合ってりゃいいですよ多数派でも。
しかしヒーローのイメージっていうのは、たいてい史実と違うでしょう。

徳川吉宗って言われたら、松平健さんをイメージしてしまう。
でも吉宗公の肖像画も、現在の徳川家の御子孫も、どっちかっていうと細おもてで、耳がでっかいお顔立ちですよね。

テレビや映画だったら、何千万人っていう鑑賞者がいるでしょう?
小説の『西遊記』を読む人のほうが少ない。
しかも、一字一句、こまかいことにツッコミ入れる人は、変人の部類に入る(笑)

 

 キャラができあがる

水戸黄門の印籠とカッカッカ、座頭市の逆手居合、柳生十兵衛の茶筅髷と肩にかついだ構え、銭形平次の銅銭の取り出し方、鞍馬天狗の宗十郎頭巾と着流し、丹下左膳のシェイとかシャジェンとか…。
どれもこれも、新しく始めたものなんです、
その時は
じつは史実にないものだったりする場合も多いのだが、直木賞を取るような大御所の時代小説の作家、あるいは大東野、勝新、サニー千葉、橋蔵、嵐寛、阪妻、大河内というような名優が(あるいはその周囲のスタッフが)考えて、今までにないオリジナル設定、自由な解釈、斬新な人物像として、勝手に作り出した。

ところが、それが有名になって、それでイメージが固まってしまうと、それ以降、その役を別の人が演じるとしても、必ずそうなっていなければファンが認めない。

宮本武蔵なら吉川版、新選組なら司馬版、大岡越前は大岡政談、忠臣蔵や金さんは歌舞伎、忍者物は立川文庫、そのまんま引きずってるから、それがまるで歴史的事実であるかのように定着しちゃっていて、ネコもシャクシも右へならえになる。
まともな伝統武術やってる人でさえ、なかなか、この呪縛からは逃れにくい。

ウソだらけでも、そのイメージがかっこいいからファンはファンをやってるので、もし史実どおりに正しくやっても、別の解釈をした新しいフィクションでやっても、あたしの土方様はこんなんじゃなーい!などとファンが納得しないから売れないし、売れないものには予算がつかないから、そもそも作られもしない。

中には、ものすごく勉強してるファンもいらっしゃるのだが、物語も商品だから、すぐイメージに流されて飛びつくような頭の悪いファンや、単純なファンのほうが、あまり考えずにホイホイ金を使ってくれるし、それがファンの大多数であるから、作り手側としても、売れるほうを選ばないわけにいかない。

売れなくてもいいから独特のものを作るんだっ!と情熱に燃えて、なんなら自腹ででも作る人もいらっしゃるが、やっぱり旧来のイメージから脱却できないことが多くて、二番煎じ、名作のレプリカにしかなれないことが多い。

というのは、無意識に、そうと知らずにマネしてることも多い。
株屋を経験なさってて食通で脚本家でもあった池波先生が、おそらく掛繋取引か小麦粉か場面転換か何かのことから発案して、「つなぎ」なんていう造語を生み出すと、盗作の寄せ集めで自分の作品を作ってる同人誌感覚の三流作家は、史実と勘違いしてしまい、「江戸時代には、連絡をつけることをつなぎと言っていたらしい」と思い込み、それ以降に作られる時代劇では町同心も農民もみんな「つなぎ」と発言したりする。

 

 油断がならない

刑事、探偵、戦争、ヤクザ、西部開拓、カンフー、SF、ホラー、何のジャンルでも、くわしい人に言わせると、やっぱり過去の名作が手本になるか、手本にしないでアンチになるにしても(わざと違うことをやろうとして)意識はしてるか影響っていうのはあるんですよね。

マンガやアニメって、ここ20年ちゃんと見てないから、よくは知りませんが、ちらっと見かけるものだけでも、武器や甲冑はもう、めちゃくちゃなことになっている。
こんな重心バランスでどうやって振り回すんだ?とか、この外骨格には筋肉の逃げ場がないから腕が曲がらない!とか、この甲冑では転んだら自力では起きられない!とか、こんなにギザギザでは自分の体がすりむける!とか。
でも、武術をやったことがない人にたちとっては、それがたまらなくカッコイイんだし、消費者のほとんどは、苦しい稽古や恐い試合なんかやらないからこそ、仮想の物で夢を叶えているので、これはこれで需要と供給が丸くおさまってる。

このコンテンツを始めてから、いろんな方からお聞きして興味深かったんですけど、今の若い人たちの間では、『西遊記』って、原作のイメージが全然ピンとこないんだそうです。
『西遊記』を元にした(似ても似つかない)マンガやアニメというのが山ほどあるらしくて、八戒さえもイケメンだったりするんだとか。

あと、ドラゴンボールって、マンガもアニメも見たことないですが、誰でも知ってて人気のある作品なんでしょう?
あれを少年期に見てた人にとっては、『西遊記』原作よりも、あっちのほうが、悟空のイメージなのかもしれない。

先入観が一個人ですまず、国民や民族に広く「共通認識」になっちゃったものって、もう、前提だから、なかなか脱却できるものじゃないですよ。内容が間違ってたって、もう、どうしようもない。

また、最近では香取君がやったのがブームになったようで(それは俺も2回ほど見ましたが、あんまりひどい駄作で、しかも、このコンテンツに使える部分が何もなかった)。

そういえば、宇宙戦艦ヤマトも、元ネタは『西遊記』と『新撰組』なんだそうです。

 

そうだ、アニメはひとつ観ました。それを次回。

 続く→ 

 

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