←もどる 

 

 日本の房

房とは何なのかを考えるとき、日本人の感覚が先入観にならないように、まず、日本の房から。

写真上、赤いほうは、十手用として作られたもの。
十手には、柄頭の輪に房を結ぶ場合もありますが、もうひとつの形式として、柄に長い紐を巻いて滑り止めや緩衝クッションにして、その端に房があるというのもあります。
紐はすぐほどける結び方で柄に巻いておき、房を持って十手を投げるという使い方もします。
それと(本当は極意ですが公開されてしまったので言いますが)、この房の中が木ではなく金属の玉になっていて、分銅武器としても使います。

ですから、紐は房糸の中でコブになっており、簡単にはすっぽ抜けません。
観光地の土産で売ってるような置物の十手は、房と紐はたいてい接着剤でつけてあるだけなので、絶対にマネしないでください。

写真下、黒いほうは、ある特殊な武器につけるもの。
これは金属玉ではなく、あるモノが仕込まれており、この房をつけることによって、その武器が使える状況を大幅に広げます。
つまり、その武器の上級者が応用技術として使うもので、房をつけろとお許しが出るまで最短で9年かかります。
日本の場合、こうした例は槍にもあります。
この房は、神聖な道具であることを示すためにつけるというタテマエです。

仏教では「荘厳せよ」「威儀即仏法」という言い方があるのですが、房というのは、軍配団扇とか数珠とか土俵の四方とか、神聖さをあらわすというニュアンスがある。

房が足元にあって、アシゲにしたり、土がかかるなんてことは、ちょっと日本人の感覚からは考えにくい。

これは刀袋の紐につく房です。
左2つが大刀用、右の2つは短刀用。

現代では、日本刀(模造も含む)は、普通、黒い革ケースで持ち歩くのですが、昔は布袋を使っていて、現在でも保存用としては布袋が使われます。

布袋は、無地(または地味な柄)のやつと、錦のやつがあります。
前者は平紐がくくりつけで、房はありません。剣道着や甚兵衛の紐みたいなもの。
後者は羽織紐のように丸紐を乳(ち。接続ループ)に通して使うもので、この紐に房がある。

やはり、神聖さということが前提になると思われます。

 

 日本の房糸は、撚糸

これら日本の房糸は、よった糸です。
1本の糸を輪にして、ねじって1本にしてある。

それを何十本も束ねて、房を作ってるわけです。

 ↓ 幅1〜2ミリくらい

□□  ■■  □□  ■■  □□  ■■  □■ 
  □□  ■■  □□  ■■  □□  ■■  ■ ここつながっていて1本
■■  □□  ■■  □□  ■■  □□  ■■ 

校旗とか、軍服の肩章とか、マフラーの端とかにつくヒレヒレは、たいてい、こういう構造ですよね。
モップもだいたい、これでしょう。

 

 中国の、剣の房

中国武術でも、武器に房をつけることはあります。

この房は剣に使うためのもので、中国製です。
房自体が40センチほどあり、それが25センチくらいの紐で柄につながります。
日本の房の3倍くらい長い。

なぜ、こんな邪魔なものをつけるかというと、いくつか理由があるのですが、最大の目的は目くらましです。
オカルト的な理由で、色はいろいろありますが、よく見かけるのは赤か黄色です。
風鎮(掛け軸の下につける、おもりの房)のように、房の外に玉がつきます。

この房糸は、編糸です。
リリアンのように、編んである。
端は断ち切り。

回回回回 □□□□ ■■■■ 回回回回  ↑
   □□   ■■   回回    回 
    回    □    ■    回 幅
回  □□□  ■■■  回回回   回 お
 回回回  □□□  ■■■  回回回  よ
  □    ■    回        そ
 回回回  □□□  ■■■  回回回  2
回  □□□  ■■■  回回回   回 ミ
    回    □    ■    回 リ
   □□   ■■   回回    回  
回回回回 □□□□ ■■■■ 回回回回  ↓

 

 中国の、長柄の房

槍などの房は、剣とはだいぶ違います。

これも目くらましで、まるで体のまわりを炎が飛び回っているかのように見えるし、またそう見えるように使います。

実用性から言うと、ここは血をとどめる部分です。
血がタレてくると、柄がヌルヌルして使いものにならなくなるので。
だから、色は赤が一般的です。

長柄武器の先端にヒラヒラをつけるというのは、古今東西を問わず、旗とか馬標とか、遠目から見る人に対する何らかの意思表示というニュアンスを含んでいる。
この意味でも、房が下になるのはおかしいと思うわけです。

この房は、付け睫毛のような構造をしていまして、それを腰蓑のように巻き付けて使います。

糸は撚りではなく、髪の毛よりも細い糸が100本ほど摩擦でくっついて、1本の糸になっています。
それが何十本も集まって、房を構成している。

使っているうちにだんだんバラバラになってきて、毛皮のような具合になってきます。
フライトジャケットのフードのふちについている、ボアみたいな感じ。

マチャアキ版の西遊記でも、こうなっていました。

このくらいケバケバしてるもので、短かめであれば、下になってもあんまり違和感はないかもしれない。

房がある側が上とは限らないという可能性も、考えていかなければならないわけです。

 

次回から、別の翻訳の『西遊記』。

 続く→ 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送