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 金へんに産で、‘金産’

沙悟浄の武器の話をする前に、まず、この武器の話から。
長い柄に、斧を縦につけたような武器、これが
‘金産’です。
文字が変換されないので、以下すべて、こう書かせてもらいます。
また、こまかいことを言えば産の上の部分は文ですが、立の産で勘弁してください。
便宜上です。御注意ください。

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この図は、徳虔老師の『少林十八般兵器』北京体育学院出版社1986に拠ってます。
胴金部分に突起がありますが、これは鍵ではなく、ごく小さい。

刃の付近を大きく描けば、こんな感じ。

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  □□□□□□□□□□        ↓謎の突起
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 □□□□□□□□□□□□□□□□■■□□■■■■■■■■■ 〜 柄
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  □□□□□□□□□□      ↑この部分、柄か刀身か不明
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    ↑この部分、とがっている

後述しますが、‘金産’にもいろいろある。
俺の周囲では、ただ単に‘金産’と言ったら、このタイプをさしてます。

この調子で図を入れるため、改行でくずれないよう、このコンテンツでは1行が長めになりますが、モバイルか何かでモニタが極端に小さい方はお許しください。

くずれて見える方(左右が詰まって見える方)は、ブラウザの環境設定とか初期設定という所から、表示とか標準フォントとか文字コードとかテキストエンコーディングという所を探して、「□」や「 (スペース)」が、全角いっぱいに表示されるような書体を選択して御覧ください。
うちはマックなんで、2ちゃんねるの猫がまともに表示されたためしがなく、おそらく、あなたのパソコンとはいちじるしく見え方が違うと思います。
こういう手間を御客様に強いることは、根本的に大嫌いなんで、申し訳なさすぎて俺のほうがイライラしてるんですけど。ホントにすみません。

 

 ‘金産’は墓掘り用?

なんで、こんなスコップみたいな形かというと、僧侶が野ざらしの死体を埋葬しながら旅の護身に使ったから、などと言われてます(それが本当なのかどうかは、ずっと後のほうのページにて)。

埋葬、これは後で重要になるので、おぼえておいてください。

さっきの謎の突起は、シャヴェルなら納得します。
西洋のシャヴェルにそういう横棒がよくあって、材質は柄と同じ木だったりする。
足をかけるんでしょうか(このことも後述)。

技法は同書にあります。
「少林魯侠‘金産’」という套路が掲載されている。
套路は、日本の武術で言えば形(カタ)です。
突くことは突くけれども、薙刀系の武器に近い振り回し方で、側面を敵に当ててばっかりな印象です。

サバイバル環境下では、普通のシャヴェルの先端を石で磨き、柄と平行方向に突き下ろして、切株の上に置いた細い木を叩き切るというような使い方も推奨されているのですが(西丸震哉氏のマニュアルなどに載っている)、‘金産’は重量があるので、槍のように突き出すよりは、遠心力で側面を当てたほうが使いやすいんでしょうか。

普通のシャヴェルを武器にすることはあるんです。
近代軍隊で塹壕戦で使われますが、やはり突くというよりは、振り下ろして叩き合いだと聞いています。
ナチスドイツがソ連を攻めに行った時も、銃が凍結しちゃって作動せず、かじかんだ手で銃剣を繰り出しても厚着してる人にあんまり効かないので、シャヴェルで大ざっぱに殴り倒すのが一番確実だったという。

 

 ‘金産’は僧侶の武器?

劇中で三蔵法師が弟子3人を他人に紹介するような時、または3人が自己紹介する時は、孫悟空、猪悟能、沙悟浄、別名はそれぞれ、孫行者、猪八戒、沙和尚であると、はっきり言ってます。

悟空はもともと道教系の神仙だから、行者と呼ばれる。
原文では、見た目が小坊主っぽいからという理由で、行者とあだ名をつけたことになってますが、もっと古い『西遊記』の原形(まだ現在のような物語になっていない段階。八戒が出てこない西遊記)では、孫悟空ではなく猴行者という名前になってます。

つまり、3人の弟子がお供するという設定ができあがってから、「悟」で韻をふんで統一感をつけたわけで、それ以前の古い『西遊記』では名前がバラバラだったし、それはそれで世間に定着してるから、「別名」「あだ名」、名前が複数あるということにしたらしい。
「またの名を〜」「別名〜」「一名〜」「添え名は〜」と、名前がたくさんあるのは、神仏の偉大さをあらわすために、どこの宗教でもよくやることではあります。

八戒は、食いしん坊キャラでありながら、じつは面白いことに、仲間に加わる前から宗教上の理由で8種類の食物(五葷三厭)を断ち続けているから八戒で、法名は悟能。

悟浄は、礼儀作法に僧侶の風格があるという理由で、特に和尚と呼ばれる。

劇中でも、すぐカッとなる悟空と怠惰な八戒の間に、悟浄が入って仲裁するシーンが多い。
それは、火・金属性と、木・水属性を、土属性が中和するという、道教の理屈でもあります。
こうしたツジツマも、だんだんに整った設定らしい。

悟空は天界で無礼と破壊の限りを尽くして五行山に封じられた。
八戒は酔って仙女にすけべえして下界に落とされた。
悟浄は、玻璃の杯をうっかり割ってしまったという、悪気のないミスで下界に落とされた。

だから悟浄は、比較的ものわかりのいい地味な好人物として描写されてます。
3人とも玄奘三蔵法師の弟子、つまり仏教に帰依して僧侶ではあるのですが、
‘金産’が僧侶むきの武器であるなら、最も僧侶っぽい悟浄が持つのが一番ふさわしいと言えば、それはそうです。

なお、俺の『西遊記』は、平凡社中国古典文学大系です。
『西遊真詮』を太田辰夫・鳥居久靖両氏が訳したもの。1972年。
これを買ったのは、最も原典に忠実であると思ったからで、学生時代からの座右の書です。
偉大な御仕事に敬意を表します(別の西遊記は後述します)。

 

 続く→ 

 

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