←戻る  下甲板

武道でも音楽でも、習い事やる人は日誌をつけるもので、こういう記録取りは俺も慣れている。
今月は帆船の醍醐味のひとつである平張。面倒と思わず、楽しんでやろうと思う。
しかし釘床では白兵戦でつまづきそうだ。

 

 4/1 下甲板の切り出しと、フレームの上塗り
甲板材の寸法をだいたい計って切る。どうせフチは切り捨て。幅10ミリ、1.5ミリ厚の密度の高い木だが、茶色っぽいのと灰色っぽいのがあり、しかも表裏がある。下甲板は波をくらい影になるから暗いと解釈、茶色の裏ばかり選んで使う。
これの釘は7ミリの真鍮釘。外板にも使うが
1672本も付属。
甲板に比較してフレームの色を調整。ポスカラもそうだが、マットは乾くと見栄えが変わる。しかも支持体が吸湿だから、かなり濃くてよかった。

 

 4/2 下甲板張り(中央前方)
船首5枚だけ張って様子を見た。釘は、説明書では1本ずつ打ってる図もあるが、2本ずつと解釈。フレームが邪魔で数センチしか振りかぶれないので、篆刻刀で当て打ち。二刀で小さく面打ち連打、いわゆる紅葉打ちだ。
板が裂けかけたので0.5ミリのドリルで
いちいち釘穴を開けてから。それにしては位置バラバラ。ボンドも併用、キールと接する所だけでなく甲板同士も接着と説明書にあるので、ほんの少し水を足して溶き、面相筆で塗った。

 

 4/3 下甲板張り(中央前方と後方)
船首にもう2枚と、後方キール上に3枚。フレーム先端が作業の邪魔。ビット付近の切り欠きは折れそうで心配したが、木目が素直で簡単だった。この段階でマスト穴を開けるべきだが、実際の造船でも張ってからではないかと思い、説明書どおり。
明日使う長い板は彎曲させることになるので、アイロンのスチームを当てたが効果なし。熱湯につけようとして、この弾力が必要と気付き、中止。というのは、フレームが微妙に平行でないことが判明。甲板を
突っぱらせれば修正できる。

 

 4/4 下甲板張り(中央後方)と、フレームの補正
フレーム間の寸法を厳密に取り直し、4枚張った。いわばフォームの癖をなおす段階、こういう所でキッチリやっておけば後がラクなはず。
ベニヤの芯だから簡単に入りそうでいて、釘の頭がつぶれる。小林カツ代さんは、フライパンに肉がくっついたら無理にはがさず、肉が自分で離れたがるまで待てと言う。
釘の心を尊重するのがコツと見た。刀を振るな、刀の重さで降ろせば斬れるというやつだ。この釘はときどき銅剣みたいにバリがある。ハサミでカット。

 

 4/5 下甲板張り(フレーム内)
今日は長い板を12枚。慣れてきて作業がはかどる。
板幅の累積とフレーム穴の幅が完全には一致せず、しかも左右で異なる。誤差ひとつ0.1ミリでも、10個で1ミリだ。広すぎる右舷の板幅を鉋で減らし、現物合わせ。鉋のアタリが悪い。フレームにぶつかる所は現物合わせで切り欠き。
放物線が逆にクロスする曲面、しかも板の裏側を使ったおかげで、ザラザラした手触りとゴマフの模様がなかなかいい。やはり
木は美しい

 

 4/6 下甲板張り(フレーム外)
下甲板はあと18枚だが、フチ部分だからフレーム間の長さしかなく、どれも5センチ前後のやつ。フレーム断面に乗らないから釘を使わない部分。今日はそのうちの、フレームD〜Gの両端がひっかかる6枚と、ギリギリひっかかる3枚。
残り9枚は
片持ちというか、甲板受しかも片側しか土台がなく、なのに船体カーブで三角に削る所だから強度が要る。キールのスリットのカスで甲板受10か所を大型化。裏打ち補強。船体をひっくり返して乾燥。固まってから張ることにする。

 

 4/7 下甲板張り(外縁)と、ファイフレールの加工
残りの下甲板を全部張った。固まるまで削れない。
やることがないので、ファイフレールを先に作る。カドRは深いと下品なので少しだけ。かすかにキツい穴を開け、真鍮パーツのビレイピンを差し、摩擦止め。支柱との接着は設置時にやる。支柱はプラで、
パーティングラインとヒケと射出跡がひどい。強度が要る部分でなければ木で作り直したいくらい。わざと荒いヤスリをかけ、ウッドブラウン塗り、喰い付き最悪だがムラの上にドライブラシで木目風にした。

 

 4/8 下甲板の整形
下甲板のフチ、船体からハミ出した部分を削る。線を引いたが、鉛筆でも色鉛筆でも木目で見えにくい。目見当でやる。人の知覚は恐ろしいもので、デッサン目測や絶対音や御飯居合がどうこう以前に、ゆがみや違和感だけはわかる。
力をかけたくないのでブリキバサミで大まかに切断。衝撃を逃がすため、カスは右側。モーターツールの口金が見当たらず、鉋でやる。鈍いので、いいかげんに研いだ。鑿は使うそばから研ぐが、鉋を研ぐのは初めて。絶好調になった。

 

 4/9 下甲板整形の続きと、ハッチ枠の抜き出し
外縁の三角部分は広い方へ向かって削りたいが、木目があるので逆。強度は全く問題なし。船首は鉋が入らないのでキワ刀で削ったが、ここは微妙なラインだ。
石膏像でもラブレターでも聞き酒でも、ずっとそればっかりだと、認知心理学で言うところの「慣れ」で冷静に判断できなくなるので、いったん他の作業。
ハッチ穴をキワ刀とヤスリで揃え、枠材を仮組。問題ないが、なぜかRやテーパーがついている。とにかく平らなほうが上、狭いほうが下と解釈。

 

 4/10 下甲板整形の仕上げと、ハッチ枠の組立
全体のバランスを見て、シンメトリーをとる。外縁を全部ヤスリがけ。船首はしなってキーキー鳴る。鶯張だ。下甲板表面に紙ヤスリをかけてもいいが、段差の影が板目をひきたてるので、そのまま。外板を隙間ナシにして対比したい。ただし甲板とフレームの隙間には0.3ミリくらいの切れっぱしをマイナスドライバーで押し込んだ。このくらい小さいと接着剤は必要ない。葉隠ならゴミを詰めたら張り直しだが…。
ハッチ枠を接着、枠自体のみ。改造の余地を残し、甲板には接着しない。

 

 4/11 下甲板整形の仕上げの続き
どうしても船首が気に入らない。昨日せっかく整えたのをもう2ミリ削ってヤスリもやりなおし、まだピンとこなくて、さらに1ミリ。フレームとの接点が矢摺になるなら直線近くまで削るべきだが、キールとフレームAを筈にして弧が突出するならすでに補強材を面取しすぎている。原寸図を見てもイマイチ明確でない
いわゆる、月に追われて獅子が塞ぐという状況に落ちた。外板を張る時に再調整する。目標が見えない時や迷いがある時は動くべきでない。

 

 4/12 マスト穴と時鐘庇の加工、ハッチ枠と倉庫の塗装
マスト穴15ミリ径は目見当。美術や禅をやらない人でも、少し練習すれば円はフリーハンドでいける。そのくらい、ゆがみというのは目立つのだ。美しくないから。
時鐘がむき出しではヘンかと思って、屋根のようなものを自作、設置。鐘なんて必要ないが、これは軍艦の伝統なのでしょうがない。
ハッチ枠をウッドブラウン塗り。ここはミサイル発射口にするつもりだったが、
ヤードが邪魔か。フレームCとDとキールに囲まれた空間をハルレッドで塗ってみた。

 

 4/13 ハッチ屋根の組立と改造
ハッチ屋根枠を抜き出し、切断、観音開きに改造する。ウッドブラウン塗り。下甲板の余り6センチ8枚で屋根を葺く。釘が余ると判明、これを軸にし、ドリルで開けた穴に摩擦止め。これで雨が防げるか疑問だが、エアロックと解釈。
ここが単なる補給口ならば縄梯子を自作する予定。それで昨日ハッチの奥を塗ったのだが、横隔壁だから倉庫というには狭い。あとで底付きの深い内箱をプラ板で自作し、ハープーンは無理でもシースパローくらいは入れるつもり。

 

 →つづき 

 

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