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パラサイトプレーン

 

 親亀の上に小亀を乗せて

パラサイトプレーンは、大きな航空機に小さな航空機をくっつけて飛び、空中で切り離すことです。
親子飛行機、寄生型飛行機、空中空母、飛行空母とか
言う。

英国が世界初だと思ってる人がものすごく多いですが、もともとドイツが始めたことで、ツェッペリン飛行船から飛行機を切り離すというのを11年にやっているという。

英国では、16年に、ツェッぺリン飛行船を撃墜するために、飛行艇の上に複葉機を乗せて、空中分離を実験。
そのあと18年に、飛行船と複葉機で実験、この時は再接続(空中合体)も成功したという。25年にも同様の実験。

30年代の初頭に、アメリカでも同じことをやり、飛行船に複葉機5機をくっつけてみた。
いくらヘリウムがあったって、この時代の技術では、飛行船なんてどん臭いものは、どうしても事故で墜落する。図体ばかりデカくて、ただの天候不良でも右往左往するだけです。
アメリカは、ヒンデンブルク号の倍の死者を出す大事故を、ヒンデンブルク号よりも前にやらかしてます。
米海軍は第二次世界大戦中にも飛行船を大量に作りまくって哨戒に使ったんですけど、それは軟式のだいぶ小型です。

ドイツは、なにごとも先取りの最先端なので、飛行船なんて古臭いことは第二次世界大戦初頭に全部やめた。
そして、ロケットやパルスジェットの戦闘機を、大きい飛行機にくっつけて飛ばすということをいろいろ計画はしてたようですが、これは最先端すぎて、ひとつもモノにならなかったわけです。

38年、英国では、飛行艇を親子にして、離水したら子機だけが長距離飛行に出かけ、母機はすぐ引き返すというのをやりました。

特攻としては、御存知のとおり日本海軍の桜花。44年、実戦は45年。
母機がものすごく遅いので分離前に親子もろとも落とされる、空中分離したとしても母機も撃たれてすぐ炎上する、よっぽど近付いてから分離しないと命中しない、近付けばやっぱり落とされる、近付けるんなら普通の爆弾や魚雷を落とせばいいじゃんという話で、「Baka Bomb」と名付けられて天下の笑い者になった。

特攻を美化しまくってるうちの父でさえ、「これは特攻になってないわ」「飛行機乗りの恥」と、こきおろしてます。
靖国神社に模型が吊るしてありますが、カッコイイとは思えない。悲しすぎる。

自殺飛行爆弾なんてものが、「世界唯一の実用化です、日本以外どこの国も作ったことがありません!」って、それ、自慢になるとでも思ってんの?
人様の命をなんだと思っとるんだ? 国力不足でも戦局悪化でもない、バカだったせいで自国民が殺されたことになるではないか! 反省すべきところを反省せずに美化してたら英霊が犬死にだよ。昭和天皇が恥をかくのだぞ?

ドイツ人はもう少し頭が良かったので、母機のほうを無人爆弾にして、子機のほうに乗って生還した。
これは実戦にもだいぶ投入され、軍艦や橋にぶつけました。44年。

戦後の米軍では、大型爆撃機の翼端や胴体下や爆弾倉内にジェット戦闘機をつけるのがいろいろありましたが、全く実用にならなくて実験のみ。48年ごろから、53年ごろまで。

49年ごろから、フランスがラムジェットの戦闘機を実験した時に、輸送機の胴体上に積んで、ラムジェットが使える速度までは母機で加速してやるというのがありました。

60年代の後半、米軍は、高速の無人偵察機を空中分離というのをやりました。
領空侵犯した無人偵察機が、自爆して水没する前に、データカプセルを公海上にパラシュート投下させておくというもの。
マッハ3クラスの偵察機を母機にして死者を出し、母機を爆撃機に変更、実用化したものの一度も回収できず。

77年、スペースシャトルの1番機というのが、エンジンなしの、いわば実物大模型であり、これを飛行機の上にのっけて滑空と着陸を実験したりしました。

 

 なんで、こんなことするのか

大型爆撃機に戦闘機を積んで飛ぶ。
敵の戦闘機が迎撃に来たら、戦闘機を切り離して、爆撃機を守ってもらう。
つまり、
燃料タンクの小さい戦闘機が、大型爆撃機についていって、護衛ができる
その戦闘機は小型だから、もちろん小回りがいい。
パラサイトファイターといいます。

あるいは、大型爆撃機に小型爆撃機を積んで飛ぶ。
爆弾を落とすよりも、「爆弾を積んだ小型爆撃機」を空中発進させたほうが、目標に肉迫するから狙いが正確、対空砲をもらっても小型機だから、高速または小回りがよくて、かわしやすい。かわせなくても、大型爆撃機を失うよりは安上がり。
その小型爆撃機は、
自力では離陸できないほど大量の爆弾や燃料を積んでいても、母機に離陸させてもらえる
あるいは、敵地に行くまでは燃料も爆弾もたっぷり搭載して行きたいが、敵地上空では分離して、お互いに身軽でいたい。

…ということだったんですが。
燃費やプロペラピッチや空中給油と言わず、落下増槽でも、すぐ解決することです、こんなことは。

とにかく離陸は力が必要で、燃料をたくさん食う。
離陸だけ手伝ってもらえれば、あとは勢いにまかせて、そこそこに飛んでいればいいんで、航続距離も積載量も向上する。

降着装置も着陸だけなのでソリでもいいし、再接続するなら足はなくてフックだけでもいいので、簡略化つまり軽量化できるから、これまた、航続距離や積載量や小回りのほうに性能をむけられる。

さらに、実験機や無人機などでは、こうするしかない場合もあります。
速度記録への挑戦は、空気の薄い高高度に行ってからやるんですが、そこに行くまでにロケットエンジンなんか使うと、試験本番中に使える燃料が少ないうえに、大きな燃料タンクを内臓してガタイがデカくなってしまう。
無人偵察機の空中分離も同じような理由。
ラムジェットエンジンの場合、自力では離陸できない。

 

 みち子さん、合体!

飛行中に切り離すのはいいとして、飛行中に再接続(回収。空中合体)は、なかなかできるものではない。
子機はどっかそのへんに降りるか、乗り捨てるか、自殺特攻か、無人機にするしかない。

無人だったらミサイルでもいいし!

戦時中すでに航空ロケット弾はあったのだし、ドイツではV1自体が飛ぶのに、爆撃機からV1を空中発射ということもすでにやってました。

爆撃機がろくに爆弾を積まずに護衛戦闘機を積んでいて、その護衛戦闘機は何を護衛するかって、爆撃機を護衛して、爆撃機は何をするのかっていうと、だから護衛戦闘機を積んでいて、その分、爆弾はあんまり積んでいなくて、「バケツにゃ穴が開いてます」的な。

うちの父は、これをものすごーくバカにしてます。
俺が子どもの頃、合体ロボットのアニメとか見てると、「ああっ、バカ!」「近未来になっても、まーだ、そんなことやっとるか」「ムダムダムダ、接続機構の重量とスペースがムダ」とか、よく言われた…。

しかし、軍事の場合、ムダだとわかるまでは、やってみないとおさまらないわけです。
それ自体は使い物にならなくても、そこから得られた技術が、あとで何かの役に立つかもしれないので、他国がやってるなら、一応試しにやらないわけにもいかない。

 

 →つづき 

 

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