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航空エンジン
グライダーというのはゆるく墜落しているのであって、飛行機は何が飛ぶかってエンジンが飛んでいるわけです。
人間は乗せてもらっているだけであり、プロペラを回してるのはエンジンだから。
飛行機自体の性能は、ほとんどエンジンで決まります。
飛行機を発明しようとしてた頃は、まだ、ほかにもやることはありました。
エンジンさえ軽くて高出力なら飛ぶと思った人たちは、みんな失敗した。ラングレイ教授とか、ものすごく優秀なエンジンを使っても飛べなかった。
ライト兄弟は、まず自転車屋なんか開業してフレームの組み立て技術を身に付けたり、グライダーの設計理論と操縦技術をしっかりやったので、6週間で自作した12馬力の重たいエンジンでも飛んだ。
翼の形だとか、空気抵抗だとか、物理的にツジツマが合っていたからです。
ところが、すぐにカーチスさんのやり方が主流になる。
少しくらい効率悪くても強力なエンジンで豪快に飛べ、重けりゃ出力をもっと上げろ的な、アメ車の発想。
航空力学がある程度は確立して、飛行機の形もだいたい落ち着くと、あとはもう、エンジンこそが勝負の分かれ目になります。
特に戦闘機はそんな感じ。
あちこちでムダやバカをやっていても、エンジンさえ強力なら、それなりに飛んでしまう。限界に余裕があるからです。
逆に言うと、安定して飛んでさえくれれば、機体のこまかい所はあとで改修していける。
というより、それができないようでは発展性がないので、すぐに旧式化する。
これは戦車でも軍艦でも同じことで、どうせ新技術をいろいろ付け足したり、もっと強力な火器や装甲に付け替えたりして、たいてい重くなるから、エンジンに余裕があるかどうかという話に行き着きます。
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ストローク
オットーさん以降のピストンエンジンは、吸気、圧縮、爆発、排気ということをやってるわけですが、この作業それぞれにピストン運動の片道を割り当てているのが4ストロークエンジンです。
2往復で1周期。2往復に1回点火。
飛行機に限らず、乗り物のガソリンエンジンというのは、だいたいコレです。
2ストロークエンジンというのもあります。英国で完成したやり方。
圧縮と吸気、爆発と排気、排気と吸気など、不完全にしたかわりに複数を同時進行でやって、2行程におさめたもの。
1往復で1周期。1往復ごとに点火。
出足が速く、スピードもトルクもたくさん出る。部品が少なくて軽量シンプル。
燃費は悪い。音がうるさい。エンジンオイルが一緒に燃えてどんどん減る。排気ガスが汚い。
昔はバイクによくあったんですが、石原良純さんの悲鳴みたいな音と、紫色の煙が出るのがみっともなくて、俺が子どもの頃はコレに乗ってる奴は全員、喧嘩が弱いか、かなり下っぱの人か、モテない人でした。『湘南爆走族』の影響らしい。
小型化できるという利点があるので、チェーンソー、草刈機、屋台の発電機とかだったら、今でも使われてます。
そのほか、4ストの一部を別の装置でやって2ストにしたやつとか、4ストの周期のあい間に空気だけ出し入れする1往復を足して6ストロークにしたやつとか、2ストと4ストを交互にやるとか、2ストだけど直噴だからエコロジー♪とか、へんなの山ほどありましたが、あんまり世間からは相手にされなかった。
画期的な大発明と思われたヴァンケルエンジンでさえ、世の中ではどうしても少数派にとどまってます。
→つづき
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