見せびらかすための試作

概念実証機に似たものに、研究機というのもあります。コンセプトモデル。
技術または概念の見本、じつは、しばしば量産の見本だったりすることもあるんですが。

発売予定はないが、弊社はこんなのも作れますよ、需要さえあれば発売するかもしれませんよ、将来こういうのがウケる時代が来ますよ、という提案として作って、見本市に参考出品したり、ショールームに飾ったりする。
予算をちょうだいねではなく、金に糸目をつけずに作ります。
自動車なんかでよくやることです。

ハデハデに塗装されることもよくあります。
輪郭を強調したような塗り分けだったり、赤青黄のいわゆる「創価学会カラー」にしたり。

 先に完成している場合

企業側から製品を提案する場合もあります。自腹で開発して軍に売り込む。
ひところフランスで特に多かったことです。
ライト兄弟も、飛行機が完成したら、やったことは陸軍への売り込みだった。

軍が気に入れば、この機能はなくていいからあの機能をつけてくれとか、その軍隊むけの仕様が決まり、ちょっと改修して納入することになります。
軍が採用してもしなくても、民間仕様は発売する場合もあります。

民間用は、戦時には徴用ということがあるので、国によっては最初からそのつもりです。
豪華客船などは、よくそういうことがあります。

あるいは偽装です。
爆撃機は旅客機や郵便機、戦闘機はスピードレース用のスポーツ機、偵察機は連絡機、航空技術の根幹は競技用グライダー、戦車は農業用トラクター、原爆は原発、ミサイルは人工衛星打上技術、化学兵器は農薬などと、いろいろ名目をつけて開発する。
ナチス党の私設軍隊の名前は「体育&スポーツ部」でした。射撃はスポーツかもしれん。

しかし民間機を転用して制式化ということは、ないこともないですが、少ないです。
民間用の散弾銃ならあるけど、民間用の戦闘機はない。『紅の豚』は、あれは払い下げとか密造です。
輸送機でも軍用のほうが強度などシビア。

性能や特性が敵にバレると困るので、民間とは違う独自のものを使いたいというのもあるし、設計図も科学技術も軍部が持ちたいというのもある。

それに、軍事産業はオカミに管理されているし、今の戦闘機は100億円以上するので、民間だけでは、なかなか作れるものでもありません。
アメリカでさえ、民間機がマッハ1以上で飛ぶことは原則禁止されている。

結局は、軍部とメーカーが共同で、新作を開発することになります。

くやしいですが、戦争は科学技術を進歩させます。人も金も、集中力が違うからです。

 

 産・学・官・軍の連携

新製品開発と技術開発のために、立派な研究所を自前で持っている企業もよくある。
民間企業は利にさといので、実用性とか採算性ということに関しては最も現実的で、大量生産もやり慣れていて、新しいアイデアに満ちてますが、今すぐ儲けにつながらないことには手が回らないので、
研究の金と時間がない
ライバルなので、他の企業とは連係しにくい。

工業大学などにも、流体力学とかエンジンとか新素材とかを研究してる所はあります。
最も頭がいい人々ですが、頭が良すぎて
現実離れしていたり、のんびりしてる。
具体的な品物にするということがなく、抽象的な理屈だけこねくり回してる。
しかし、アカデミックで長期的だから、最も根本的な所から新技術を生み出すことができます。
松本零士先生の弟さんが、自分は科学者ではなく技術者だ、ということをおっしゃっている。採算や使い道を度外視して真理を追求するのが科学者で、生活に役立つものを作って人々を幸せにするのが技術者ということらしいです。

文科省みたいな所にも、航空宇宙関係の技術開発部署があります。
なにもないけれども
権威だけはあるので、企業と企業、産業界と教育界の橋渡しになれる。
企業と大学が連携すると、特許が誰のものになるかとかゴタゴタしたり、教授の出世資金や卒業生の就職などを癒着してるみたいで聞こえが悪いので、オカミが仲介すれば公共性という中立の要素を付けられる。
ただし、政治的すぎて頭が硬く、しばしば軍部の意向にそぐわない。

軍隊の中にも、航空技術廠とか技術研究本部とか実験航空隊などという、研究開発をやってる部署があります。
戦闘の実際を最もわかってる人々ですが(旧日本軍の場合は全然わかってませんでしたが)、だからこそ、新しい発想が出にくかったり、出すぎて無謀だったり、目標設定が高すぎたり。
親方日の丸なので、効率が悪い。
どちらかといえば試作機を扱う部署であって、量産のことにはむいてない。
国営で生産ラインを作ってしまうと、かけがえのない税金を投入したからにはまだ使えるものは捨てられない、とか言ってて廃止できず、旧式化した兵器をいつまでも生産し続けて、現場が迷惑する。

これらが補い合うから、うまくいくわけです。
戦時には、イヤでも挙国一致になります。

たとえば基礎データを得るのに、同じ実験を各自でやっていたらダブっちゃってムダだから、国立の中央機関でやって、その実験結果はみんなで共有する。

全部をまったく統合して国営にしちゃうと、似たような物しか出てこなくなるので、社会主義国であろうとも各団体をそこそこに存在させて、独自色を持たせ、競争させたり、違った視点からいろんなものが生まれるようにする。
陸軍の言うことに素直に従った中島に比べて、三菱は、「わが社の方針」みたいなことを言って、少なからず海軍を手こずらせてた感じですが、いいんですそれで(反対意見を言ってもらえるうちが花)。

軍隊は、いばりちらして色々うるせえから、企業や学校としては、気心の知れた身内だけで邪魔されずに存分に研究開発がしたいとかよく言う。だけど、それじゃ軍用にならなかったりする。
使うのは軍隊。これを使って死にそうになる御客様からの、御要望なので。
戦争に勝てば、平和な社会で好きなだけ研究開発させてやるが、負けたら国がなくなるかもしれん。

 

 →つづき 

 

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