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全く興味ない、という方のための
基本的なところ

 

用語や概念について、駆け足で、さわりだけ。
ほかの部分の相互関連や、こまかい例外も多いですが、だいたいこんな感じになっているという傾向です。

マニアの方は、ここらへんのページは一切読まなくて大丈夫です。あなたのほうが断然詳しい(笑)

ニューヨークタイムズは、飛行機の実現は百万年から一千万年先になるだろうとかなんとか書いたことがあった。
その9日後に、ライト兄弟が初飛行。
ライト兄弟も、飛行機はいつかは実現するだろうが自分たちが生きているうちには無理だろうとか発言していたことがあった。

飛行機というものは、発明されてから100年ちょっとしかたってません。上野公園よりも歴史が浅いということです。それで、こんなに発達したんだから恐ろしい。

 エンジン

本書は、外観で飛行機を識別しようというマニュアルなので、エンジン自体の話はそれほど関係ありません。

しかし、飛行機を語るのにエンジンについて述べないのは、武術の教本に足さばきのことが書いてないくらいにヘンなので、エンジンの話は別項目を立てて御説明します。

 木骨、金骨、木金混合、
 羽布、合板、応力外皮、全金

飛行機が発明されたばかりの頃は、エンジン以外ほとんど金属部分はありませんでした。
木で骨組を作って、キャンバス(帆布。飛行機では羽布と書くことが多い)を張って表面を作ってたわけです。イメージとしては凧です。
外ッツラは、ただ空気の流れをやりすごすだけで、構造は骨組が担当してます。
ねじれに弱く、これでは大型機を作れない。

これが、溶接鋼管など金属製の骨組になったり、木の板(合板)を張ったりするようになります。

このへんの時代は、強度をとるために、各部をワイヤーでつないでました。
じつは、機体内部でもやってた。骨組の接合部から接合部へ、対角線に十字に張ってました。のちに、斜材でやるようになる。
また飛行機というのは発想がとても船に近かったようで、帆船のイメージもあったらしい。
飛行機のしきたりは、だいたい船のものを踏襲してます。キャプテン、クルー、キャビンなどの用語や、民間航空機長の制服は金モール4本(大佐風。大佐じゃないけど)、左舷から乗り降りすること、正面衝突は右によけることなど、みんな船の伝統。
右舷から乗り降りするのは、宇宙戦艦ヤマトくらい。

外側を板で張ると、主翼は応力外皮ということができるようになる。硬い外板で桁をつなぎ、表面に構造を負担してもらうことです。
胴体も同様に、
モノコック(張殻)になる。張子のダルマみたいな構造。
エビとかカニみたいに骨格が外にあると、中はカラッポだから物が積める。
木製モノコックでも縦梁が全通してて、ところどころ肋骨みたいな横枠が突っ張っているんですが、その上を木製リボンで巻き固めてある。
金属でモノコックにすれば、なお結構ですが。

金属板を張るということも早くからありましたが、重量と強度の折り合いで、トタンみたいに波板にしていた。
機体を金属で作るようになっても、それほど重要でない部分は木製だったり、舵だけは羽布張りだったりしました。
しかし、炎上した敵機から飛び火して、自分の舵が火事になる危険があった。

そしてついに、全部を金属で作るようになります。
本書は、この時代の幕開けに書かれたわけです。
ドイツはすでに第一次世界大戦の時に全金を始めていたんですが、世間で一般的になったのは第二次世界大戦です。

ジェット旅客機を見た子どもさんが、あんな大きい金属製の物体がどうして飛べるのか、って素朴な疑問を持ったりするんですが、大きいから飛ぶんです、飛行機というのは大きさのわりに軽い。がらんどう。何十トンとか言っても、大きさに対する重さ(比率)で言えば、ジャンボジェットと紙飛行機はほとんど変わらない。

その後もずっと、一部を木製にしてたのがソ連なんですが。
ソ連の場合、材木だったら無尽蔵にあり、La-5など、木製でも案外いいのを作りました。

これは、戦争に対する職人の考え方の場合もあります。
木工職人は、全部を木だけで作りました、すごいでしょう、ということを自慢したがる。

軍事的には、安く丈夫に早く作れるなら、靴底だけ合皮の革靴とか、部分的にプラスチック部品を使った雛人形とかでも全然かまわない。
どうせ破壊される消耗品とわりきって、あんまり芸術的な工芸品にせず大量生産する。

 

木製は、だいたいスプルースで骨格を作り、外板はバルサをサンドイッチした合板。
スプルースはアコースティックギターに使われる針葉樹で、バルサは模型工作などに使われる柔らかくて軽い常緑樹です。
接着剤は、英国ではユリア樹脂(尿素とホルムアルデヒド)。ドイツではカゼイン樹脂(いわばチーズ糊)で接着してたので、たびたび空中分解した。

飛行機が大型化(特に胴体が長い場合)や、余圧して高高度を飛ぶとか、音速とかいうと、枠組構造とモノコックの中間、セミモノコックというのになります。
モノコックだけで強度を確保しようとすると、厚く重くなってしまうので、外板にも負担してもらうが、裏に縦方向の桟も通しておくというやり方。

飛行機の胴体には必ず出入口があったり、なにかを貫通させているから、まったくのモノコック(卵の殻のような)ということはありえないので、厳密に言えば飛行機のモノコックは全部セミモノコックなんですが。
飛行機の世界でモノコック(純モノコック)というのは、肋骨(フレーム)ばかりで背骨がない状態、セミモノコックというのは、ストリンガーやロンジロンという縦方向の構造材で強度をかなり作った上に、外板を薄〜く張ってるやつのことです。

ほとんどの金属飛行機の外板は、本当にペラッペラです。じつは自動車もそうなんですが、ペーパークラフトのように立体的に組み立ててあるから、まあなんとかベコベコせずにすんでいるだけ。
金属飛行機のボディに厚みがあるのは、断熱材を挟んでいるからで、外板自体は、機銃をもらえば簡単に穴があきます。

金属製というのは、たいていジュラルミンです。アルミ合金の一種。各種あります。薄くても丈夫だから、木よりも軽く作れるうえに、雨ざらしにしても傷みにくい。
舵など薄い所はマグネシウム合金、足まわりはモリブデン鋼、エンジンにはステンレス鋼やチタン、特攻専用機のカウルにはブリキ、地上攻撃機は一部を鋼にすることもありますが、全部を鉄で作ったら重くて飛べない。
というか、ジュラルミンの発明が、飛行機を金属化させました。

ただし、アルミは金属疲労があります。鉄は、ある程度以下の曲げ幅であれば何回でも変形に耐えるから、その範囲で設計すれば壊れないけれども、アルミ系は繰り返せば裂ける。
それと、アルミは燃える(熱を食らうと強度が一気に落ちる)ので、軍艦では嫌われてます。飛行機の場合は、破壊されれば燃えても燃えなくてもどうせ落ちるから同じ。

アルミが足りなくて、戦時中にふたたび木で作って、なかなかうまくいかなかったり、鉄で作って、もっとうまくいかなかったりもしました。

米英もです。米英はそれほどアルミに困らなかったんですが、足りなくなるかもしれないと思って一応準備、あるいは、家具や酒樽などの木工職人がヒマとかで、戦時中に木製飛行機を作りました。
モスキートという木製機の大成功作もありましたが、これでさえ、きちんと着陸しないとパイロットの足が砕ける危険があった。

ソ連は、木製の練習機を実戦に使ったこともありました。
速度がゆるいこともあって、ほとんどレーダーにかからないからです。
溶接鋼管、モノコック、ジュラルミン、全金など、飛行機の構造の主なところは、ほとんど全部ドイツの発明です。

音速だと、空気がぶつかったりこすれたりする熱の問題があって、チタン合金もよく使いましたが、高価だし、普通の空気中で溶接すると変質してしまう欠点があって、加工が面倒で。
タービンなんかは今でもチタンですが。
チタンは最初はまともな鉱脈が東側諸国にしかなく、アメリカは困ってたようです。チタン製の潜水艦も、ソ連のほうが生産技術は優秀だった。

最近は、ガラス繊維や炭素繊維を入れたプラスチックとか、金属よりも軽くて丈夫な新素材の複合が使われた飛行機が多くなってきてます。
この分野は日本が世界一、というかシェア独占です。大型ジェット旅客機なんか機体の大部分は日本の会社が下請けしてる。

なお、飛行機は振動やたわみゆがみがあるので、ボルトやネジのたぐいは全部、ひっかかりをつけたり、焼き締めたりして、簡単にはゆるんだり抜けたりしないように処置してあります。

昔は、1機に数万個というリベット留めにせざるをえないから、余計な空気抵抗になり、それを防ぐためには沈頭鋲という特殊工程を要した。
最近は接着剤が発達したので、飛行機は両面テープみたいな粘着シートを挟ませて組み立てられることも多いです。

 

 →つづき 

 

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