戦争とは?

このあいだフジコヘミングさんのエッセイを読んだら、フランス人は早く降参して賢かった、徹底抗戦していたらパリは廃虚になっていただろう、というようなことが書いてあって、一応なるほどと思ったんです。
たしかにねえ、本当に頭のいい人は戦争しないだろうよ(笑)

フランスはドイツに降伏した後、親ナチ政府を作り、頼まれもしないのに「(自称)改革」を押し進め、ドイツの御機嫌をとりました。
でもフランス海軍はそのままフランスが保有していた。
ドイツは、この少し前にノルウェーを攻めに行って、軍艦をかなり失ってる。

フランスの軍艦がドイツの戦力になってしまうんじゃないかと、島国の英国としては気が気でない。
明け渡すか、自沈するか、アメリカかどこかへ持って行くか、ドイツと戦うか、さもなくばオレと戦ってみるか、などと英国はフランスに要求。

フランスは、せっかく屈辱に耐えてまで殺し合いを回避したのに、ドイツを怒らせるのはイヤだし、なんで英国ごときに指図されなきゃならんのじゃと思って、要求を飲まない。
とにかくフランスの軍艦をドイツには使わせないから心配すんな、ということは約束した。

でも英国は、フランスの軍艦を沈めることに決めた。
アルジェの軍港に停泊していたフランス軍艦を攻撃。

フランス側は、戦艦1隻が沈没、戦艦2隻が中破して座礁、千人以上が死んだ。
英国側は飛行機を5つばかり失っただけ。

戦闘の勝ち負けでいうと英国が勝ったんですが、勝っても意味がないんです。逆効果。

千人も殺されて、これでますますフランスの世論は親独に傾く。
実際はドゴール一派が駆けずり回ったり、レジスタンスが地下活動をしたり、フランスだってドイツと戦い続けたんですけど、それならなおさら、英国とフランスが戦力を削りあって、誰がいちばん得をするのか。

ヴィシーフランスも激怒したが、自由フランスも英国に対して猛抗議した。
軍艦のひとつやふたつどころの話ではなく、フランスという国家や民族まるまる全体が、未来永劫、英国の敵になりかねない。

フランス側は、ほかに戦艦1、大型駆逐艦6、水上機母艦1がその場にいたんですが、みんな逃走に成功してる。
特に、逃げ切った戦艦は、修羅場をくぐった艦として、ますます士気が上がって、このあとフランスの旗艦になった。

中破した2隻も、わざと浅瀬に乗り上げて航行不能になってみせたのであって、応急修理して見事に脱出、そのあと修理して、ふたたび使用可能になった。

しかも、これらの軍艦がどこへ逃げたかというと、フランス南東の軍港!

フランス人だってちゃんと考えがあって、ドイツに軍艦を取られないように、わざわざ本土から離れた植民地の港に引き離しておいた。
だから、むこう岸の北アフリカにいたのに、そこへ英国が殴り込んで来たから、フランスに帰っちゃった。

 

いつもいつも、よけいなことばっかりするのが英国なんだけれども、この戦闘のせいで、フランスの軍艦をますますドイツの手元ちかくに置くことになっちゃったわけで、かえって状況が悪くなってやんの。

これでは、兵器のスペックなんかどうでもいいことです。運用がヘタクソだから。

このときフランス戦艦のうち2隻は、主砲が前にしかなく、それが陸を向いて停泊していた。
それを、あらかじめ機雷まで撒いて港湾封鎖しておいて、背後から急に攻めたのに、すぐに撃沈できなかった。
尻から出てきて、正面に向きなおって反撃したので、英軍はあわてて煙幕をはって逃げ腰になった。
英国は空母を出していたのに、艦上機を3回も飛ばしたのに、追跡にも失敗。

たぶん、この時の雷撃機は旧式も旧式のソードフィッシュだと思うし、機雷は磁気感応タイプだったようですが、これらがものすごく高性能だったとしても、どうでもいいことです。

ここで全部撃沈していたとしても、同じことなんです。

このとき生き残ったフランス軍艦は、のちにドイツが接収しようとしたら拒否して、みんな自沈しました。
英国に言われなくたって、自分たちの誇りだけで、やるべきことはちゃんとやった。

で、自沈したって、これまた意味がないんです。
それをイタリアとドイツが次々に海底から引き揚げてきて、また使った。
戦争末期に、管理しきれなくて、ふたたびフランスに返した戦艦もあった。
返したのに、それを米軍が空爆してまた沈めた。
それをまた引き揚げた。

「第二次世界大戦中に、英国はフランスを攻撃して、千人も殺した」という歴史的事実が残っただけ。
それをやって、なにかいいことありましたかというと、何もないわけです。
いや、やるんですよ、必要があれば千人でも千万人でも殺すのが軍事なんですけど、それやって、それに見合うだけの何か得るものがあるのかという話です。

軍艦だから沈んでもまた使えるんだろうと思われるかもしれませんが、この時代は飛行機も同じなんです。
フィンランドは、ソ連の飛行機を撃墜しては、修理して、自分たちのものにして、ソ連を攻撃するのに使った。
飛行機の攻撃力を強力にしても、落ちにくいよう頑丈にしても、敵の思うツボなんです。

英国は、45年5月3日に、難民を満載したドイツ船2隻を沈めている。あと5日で戦争が終わるって時に、せっかく今まで生き延びてきたユダヤ人8千人が、英国に殺された。
もともとは客船と貨物船だった船で、戦闘爆撃機ホーカータイフーンのロケット弾を受けて、あっという間に沈んだそうです。
このロケット弾の性能がどうだったかなんてことは、どうでもいいんです、砲撃だろうと魚雷だろうと、何の罪もない民間の方々がお気の毒だったことに変わりはないのだし、戦争の勝敗に関係ないばかりか、戦略的政治的な利益も意味もなーんにもないのだから。

 

 →つづき 

 

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